誘拐
少女の水色の瞳は金色の髪の青年を見つめている。
青年の名前はキョウ・テセティア。
ルウの地外れの方に住んでいて、六番隊隊長。
隊長という立場でありながらも、子どもたちに優しい。
キョウは少女にも優しかった。
少女は何度もキョウに魔法を注入され、幸せな気分になった。
「レン様?」
名前を呼ばれ、少女は目を開けた。
「なあに? リゾ?」
リゾと呼ばれた男はずっと少女を見守っていた。
「眠ってましたか?」
「ううん、あの人を見ていたの」
「キョウ・テセティアですか?」
「ええ」
「きれいな髪。暖かい魂。触れていると幸せになれるの」
「………」
少女――レンを見つめるリゾはどこか苦し気な表情をしていた。
そんな表情は意にも介さずレンは言う。
「あの人の、髪が欲しい。――ねえ? あの人がわたしに髪をくれたらどんなに幸せかな」
* * *
その日、キョウ含む六番隊はルウの地の外へ狩りに出かけていた。
上手くいけば、渡り鳥の群れが通りかかる。
それを狩り食糧にするのだ。
狩りの結果は上々だった。
「ファウが誘拐された?」
帰って来たキョウは意外な知らせに驚いた。
ファウといえば、今日は一番隊と二番隊で合同の訓練をしていたはずだった。
狩りの結果は上々で、そんな矢先に、こんな知らせ。
「すみません。今、レファイ家はごたごたしていて。とりあえずはあなたに伝えた方がいいと思って来ました。もう帰ります」
それだけ言うと、クスナはさっさと帰ってしまった。
キョウはいてもたってもいられなかった。
その日の夜はご馳走だったのだが、ほとんど食が進まなかった。