忠告
「直りそうか?」
夕方。夕飯を済ませたファウは、クスナにそう尋ねた。
レファイ家の庭で、クスナは環境維持ロボを見ていた。
「心配してるんですか? お優しいですね」
答えながら、クスナはロボットの外カバーを外し、中を見てみる。
「別に優しくなんか……」
キョウが直したがっていたものを、ファウも直って欲しいと思っていた。
「どこも壊れてなさそうなんですけどね」
クスナは水晶の部分に手をかざし、自分の魔力を注いでみる。
魔力は、回路の中を流れ、ロボットは正常に動いてるように見える。
ルウの地を出ようとしたのは、たまたま方向を間違えただけなのでは?
「人間と同じで恋患いですかね」
と、クスナはうそぶく。
「ロボットが恋? そんなバカな」
ファウは笑った。
クスナはじっとファウの顔を見る。
「ファウ、あなたはキョウがいると不機嫌になりますね」
「別に普通だ」
「素直になったほうがいいですよ」
でなければと、クスナは愉快そうに笑う。
「あんな態度を続けていれば、あの男の心は離れてしまいます。ロボットに優しくできるならキョウにも優しくできるでしょう?」
なんだか、ファウの中でその言葉はずっしりと響いた。
「それに、私がその気になれば、あの男に媚薬でも飲ませて虜にするのなんて簡単なんですから」
「……なっ!?」
ファウは怒りとも羞恥ともつかない顔をする。
クスナは、くくっと笑い出した。
「それとも、本当にキョウが嫌いであんな態度なんですか?」
「別に嫌いなんかじゃ……」
ファウはそっぽを向く。
「そのロボット、もう直ってるんでしょ。だったらもういい」
ファウはぷいっと家の中に入ってしまった。
「本当にもういいんですかね?」
クスナはロボットを見た。
外カバーを戻し、表面をぽんぽんと叩いてみる。
「帰れるか?」
正常な状態なら、ロボットは神殿の辺りに向かうはずだが。
ロボットにはめ込まれた水晶は水色に光り、神殿の方へと動き出した。
やっぱり壊れてなかった、と判断しクスナも家の中へと入った。