髪と魂
「キョウ!」
「ファ……?」
キョウの瞳がまっすぐファウを見ていた。
「ファウ?」
「無事だった。よかった」
キョウは微笑む。
「こっちのセリフ!」
ファウはキョウに抱き着いた。
「……もういなくならないって約束して」
「うん」
キョウは腕を回しファウを抱きしめたいところだったが、腕が鉛のように重かった。
「……眠い」
キョウはそのままファウに抱きしめられたまま、眠った。
またすぐ眠ったキョウに、ファウは慌てた。
すぐ、クスナを呼んだ。
キョウの変貌に、クスナも驚きを隠せなかった。
だが、すぐ安心したようにこう言った。
「大丈夫、眠ってるだけです」
確かにさっきまでの様子とは違い、キョウの胸が規則正しく上下していた。
その様子にファウは安堵するのだった。
安堵するファウに対し、クスナは絶望もしていた。
髪の毛の色もそうだし、キョウにはあるはずの魔力が無くなっていた。
――この時のクスナはそれを告げることが出来なかった。
* * *
それから、最高位たちから意外な知らせが届いた。
レンは死んだという。病死だった。
リゾはあいかわらず行方知れずのまま。
一番隊と二番隊の襲撃に、ファウの誘拐。
事件ではあるのだが、肝心のリゾが行方不明のためか、リゾの名前を騙った愉快犯ということになった。大きな怪我をした者がいないというのも大きいらしく、最高位たちはその件はそう結論づけてしまったようだ。
最高位が二人いなくなったという事実に、長老はほくほくしていた。
次の最高位候補は自分じゃないかと躍起になっていたのだ。
ファウは心底、どうでもいいと思った。




