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月色の砂漠  作者: チク


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結界の穴


 そこでクスナはまた考える。

 あのロボットは特に呪文など唱えていない。

 あの水晶の力で姿を消す?

 何度か自分もあのロボットに魔力を注入したことがある。だったら自分も似たような芸当ができるはず……?

 しかし、できない。


 それとも、この場所に意味がある?


 クスナはかがんでみた。

 ロボットの目線になれば何か見えるかとも思ったが、特に変わったものはない。

 何気に地面に両手をついてみる。手探りで何かあるだろうか?


――ん?

 四つん這いの姿勢になって、前に手を伸ばしてみると、何かひんやりしているような……?

 さらに手を伸ばしてみる。

 すると、肩がつっかえた。


 手で探ってみると、小さな輪っかみたいなものがある。

 ちょうど、環境維持ロボが通れるくらいの大きさだ。


 四つん這いになった姿勢ではムリ。

 クスナは四つん這いから、横向きの寝た姿勢になる。

 左肩を地面につけ、身をよじるような動きで体を進めてみた。



 クスナの体は草原の上にいた。

 そこはオアシスだった。


 驚きつつも、クスナはオアシスの中を歩いてみた。


 そんなクスナに、楽しげに笑う女の子の声が聞こえてきた。

 声のした方に行ってみる。


「!!」

 可憐な少女が手に持っていたもの、それは紛れもなくキョウの髪の毛だった。

「それは……!」


 だが、その後の言葉が出てこなかった。

 女の子はにたにた笑い、クスナを見ていなければ、その言葉も聞いていない。


 キョウの金色の髪を握りしめ、にたにた笑っている。

 気がふれてしまっているのか、もうまともとは思えない。


「クスナ・ク・ガイル」

 名前を呼ばれ、振り返ると赤い髪の大男が立っていた。

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