隊長
次の日、キョウは環境維持ロボを持って、泉へと歩いていた。
ルウの地は砂漠の真ん中にあるオアシス地形だ。
街のあちこちに小さな泉があり、それも女神ルウの加護だとされている。
家から一番近い泉に行ってみる。
この時間帯なら、水の恵みに感謝し、泉での祈祷を捧げている誰かがいるはずだ。
その泉はレファイ家の管轄で、もしかしたら会えるんじゃないかとキョウは少し期待してもいた。
泉の水は澄んでいた。
そのそばには、女神像がある。
クスナ・ク・ガイルが泉の前で祈祷していた。外からやってきた魔導師であり、現在レファイ家に雇われている。
その護衛についてたのはファウ・レファイ。ルウ族二番隊隊長であり、凄腕の女剣士である。
クスナがちょうど祈祷を終えた頃。
そこに環境維持ロボを持ったキョウがやってきた。
「こんにちは」
クスナは、キョウを見てにこりと微笑む。
「これはこれは、六番隊隊長殿」
キョウは面喰った。立場としては隊長ではあるが、あまりそう呼ばれることはない。
六番隊とは、その地域の住人が自衛のために作ったようなもので、ルウ族内では認めてない者もいるくらいなのだ。
ファウはじっとキョウを見た。
「私に会いに来てくれたんですか。嬉しいですね」とクスナ。
「壊れた環境ロボがあったから持ってきた。泉の前には祈祷してる人もいるだろうから、お願いしようと思って」
キョウは持ってきた環境維持ロボを地面に置く。
「それはそれは、どれ……」
クスナは膝を屈め、ロボットを観察する。
「別にどこも壊れてなさそうですが」
「ルウの地の外に出ようとしてた」
環境維持ロボは、基本的にルウの地からは出ないことになっている。ルウの地から出れば砂漠の砂に消えるだけだ。
「そうでしたか。それは詳しく見てみないとわからないですね」
「実は昨日、燃料切れかと思って魔力を注入してみたんだけど?」
キョウにしてみれば、ロボットの状態をなるべく正確に伝えたかったのだが……
クスナはにやりと笑う。
「これにあなたのエキスが入ってるのですか。今度、私にもあなたの違うエキスを注入して欲しいものです」
クスナはすうっと立ち上がり、キョウの手を握る。
「あいかわらず、きれいな髪ですね」
「あ……ありがとう。導師の髪もきれいですよ」
クスナはキョウの髪に触れようとしたので、キョウはクスナから離れた。
キョウの髪は美しい金色。腰までの長さがある。
かく言うクスナの髪は銀色で背中まであった。髪の毛を褒められクスナは嬉しいらしく、どこか嘘くさい笑顔になった。




