剣
クスナの話では、ファウを誘拐したのが本当に最高位の者かどうか確かめるべく、長老たちと中央の泉の島へ行ってきたという。
島の神殿に一人の最高位のケイという男がいたそうだ。
リゾはいなかったが、リゾという男は最高位で間違いないのだという。しかし現在行方知れずという説明を受けたそうだ。
そこまで説明して、クスナは溜息をついた。
「リゾの目的は何ですかね?」
ファウを誘拐してどこか遠くに行ってしまったのだろうか?
一番隊と二番隊の合同訓練中というのも引っ掛かってる。ファウ一人を誘拐したいのであれば、そんな兵隊が集まる訓練中を狙うよりもっといいタイミングもあったような気がする。
誘拐の目的がよくわからないからなのか、ますます不安になる。
ふと、キョウはクスナの手に自分の手を重ねた。
「……?」
「じっとして」
キョウは目を閉じ、魔法を注入する。
「………」
クスナも目を閉じ、キョウの手から魔力が吹き込まれるのを感じた。
クスナは、自分の中に清々しいそよ風のようなものが吹き抜けるかのような感覚を覚えた。
時間にしてほんの数秒ほどのことだった。
クスナは、淀んだ霧が晴れたようなすっきりした気分になった。
「ラクになりました」
「魔脈で体の波動が乱れるとかで……? 誰かに波動を整えられると少しはラクになるって……」
原理に関してはキョウは詳しくない。だが過去の経験でそれでラクになるのは知っていた。
「前に私に魔法のエキスを注入してほしいと言ってたでしょ? 今、出来てよかった」
――魔法のエキスじゃなくて、別のエキスって言ったんですけどね。
という言葉をクスナは飲み込んだ。
またセクハラだと、ファウに文句を言われかねない。
「さて、あなたのおかげでだいぶ癒されました」
そう言ってクスナは立ち上がる。
「泉で具合が悪くなって長老に睨まれましてね、どうにもあの場に居づらくなってしまったんです」
「レファイ家に戻って、また手がかりを探ってみます」
若干、疲れが和らぎクスナは帰って行った。
この時、クスナはキョウを一人残して帰ったことを、悔やむことになる。
クスナが帰ってから一時間ほどしてから、またキョウの家のドアがノックされた。
キョウがドアを開ける。
そこに環境維持ロボがいた。
そのアームには剣が握られ、剣を引きずるように前進してきたようだ。地面には引きずった跡がついていた。
「!!」
他ならぬファウの剣だった。




