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月色の砂漠  作者: チク


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癒し


 次の日、目が醒めると、環境維持ロボはベッドの傍らにいた。

「お腹、空いた?」

 ロボットよりも先に自分が腹ごしらえしないと。キョウは簡単に朝食を済ませた。

 一息ついて、ロボットの水晶に手を当てる。そこに魔力を注入した。

 水晶は水色に光った。


 ドアを開けると、ロボットはルウの地の外れの方へと進みだす。

「またか」

 キョウはやれやれと思いながら、ロボットを持ち上げる。

 以前のロボットは壊れてなかったと、クスナから聞いていたのだが。

 ファウのことが心配ではあった。

 だが、キョウが何かできることがあるわけでもない。

 環境維持ロボをルウの地中央へ運ぶのがいいのかも知れないが、中央の方は今混乱しているだろうし、そのまま家に置いておくことにした。

 キョウの家がたまたまルウの地外れの方にあるから、ロボットがちょっとした誤作動を起こしているだけだろう。



 午後、キョウは狩り用の罠の仕掛を作っていた。

 本当はいてもたってもいられなかったが、何もしてないよりは手を動かしてた方が気が紛れた。


 その時、ドアがノックされた。ドアの外にはクスナが立っていた。

「どうも。癒しを求めに来ました」

 冗談めいた口調ではあるが、クスナはひどく疲れた顔をしていた。

「おや、先客がいましたね。――きみも癒しを求めて来たんですか?」

 クスナは環境維持ロボにそうつぶやいた。


「どうぞ」

 キョウはクスナを招き入れた。

 いつもうすら笑って余裕ありそうな印象のクスナが、ずいぶんと疲れてるように見えた。

 クスナを椅子に座らせ、キョウは飲み物を出した。


「面目ないですが、ファウの手がかりはまだ見つかりません」

「そう。――まあ、お茶でも」

 キョウは落胆した。

 それよりも、今はクスナの疲れ具合が気になっていた。


「最高位って実在したんですね」

 クスナはお茶を飲んで、ほうっと一息ついた。


 そうだったんだ、とキョウも思った。

 実のところ、キョウは最高位の者に会ったことはない。

「長老たちと中央の泉へ行って来ました」

 最高位と謁見するのは長老の役割となっていた。

 今回、最高位を名乗る者にファウが誘拐され、レファイ家代表として魔力の強いクスナが同行することになったのだが……


 クスナの説明は続く。

「そこで初めて最高位に会ったんです。ですが水脈を感じたら具合が悪くなってしまって……」

 キョウは頷いた。

 キョウ自身も子どもの頃似たような経験があるのだ。

「水脈のあるところが、魔脈とかがあるそうで、私も何度かそうなったことがある」

「あ、そうだったんですね」

 クスナはどこかほっとしたようだ。


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