陽気な四ノ宮
昼休み適当に授業を受けて、気がつけば放課後になっていた。
いつもは、とても退屈で長く感じる授業が今日はあっという間に終わってしまった。
周りの生徒達は、ようやく解放されたー
と思わせるように、体を伸ばすものや
友達などとお喋りしている人もいる。
昼休み四宮の慰めを受けてからは、俺は朝の出来事をほぼ忘れかけていた。
時々、思い出して凹むこともあるが、かなり気持ちが楽になった。
昼に四ノ宮が気を使ってきてくれなければ俺は、ずっとうじうじしていただろう。
こうゆう時に、優しくて、気の利く幼馴染がいてくれて本当に助かったと思った。
こればっかりは四ノ宮には頭が上がらない。
凄く助かった。
「さて、帰りますかね」
周りに聞こえないようにつぶやく
一応友達はいるが今日は気を使って話しかけてこないのだろう。
いつもうざ絡みをしてくる佐々木も今日は俺がいつもと違う事に気がつきそっとしておいてくれた。 本当に周りに恵まれてるな
机の横にかけてあるカバンを持ち、帰るために教室のドアを開けようとした時、後ろから肩を叩かれた。
誰かと思い後ろを振り返ると、ムスッとしている四ノ宮が立っていた。
「おやおや、仙道君や〜 何か忘れていないかねぇ〜」
少し苛立ちを感じさせる言い方で四ノ宮は俺の方を睨む
「忘れてなんかないぞ! 下で待ってようとしたんだが」
頭をボリボリとかきやる気のなさそうに答える
「う〜ん 本当かな〜!? 仙道はすぐに忘れちゃうからね〜」
「おい!もう行くぞー」
四ノ宮に阻まれて教室の入り口にずっといるのも他の生徒にも迷惑になるしな
俺は拗ねている四ノ宮に背中を向けて教室から出た。
「ちょっと! 待ってよ!」
四宮が俺の後を追うように小走りで走ってくると、俺の横に並ぶように歩き出した。
「さて、行きましょうか!」
「さっきまでのテンションとは大違いだな」
俺は少し苦笑いをしながら四ノ宮に行った。
「女の子は気分屋なの!」
「うわぁ〜 女ってめんどくせぇ〜」
「それを女の私の前で言うなや!」
四ノ宮に肩を軽く叩かれた。
そんな会話をしていると下駄箱に着いた俺たちは、靴を履き替え門をでた。
少し学校から離れたところで俺は四ノ宮に質問する。
「どこ行く予定? カラオケ?」
「う〜ん、とりあえずそのつもりなんだけど〜」
四ノ宮は歩きながら顎に手をやり、なにやら考えるそぶりをしている。
「お前カラオケ大好きだもんな」
俺がそう答えると、俺の発言とは全く違う言葉が返ってきた。
「ねぇ〜 あんたが今日やられた裏路地に行きたいんだけど」
「え?」
思わず俺の口から溢れる。
「悪い、早くあの事は忘れたいんだ。」
「だったらなおさらだよ! 」
四ノ宮が食いつくように言う。
「また、仙道と同じような被害者が出るとマズイと思うんだ! だから私が言って叱ったあげる!」
四宮は長い髪をなびかせて俺の方を見る。
こいつも困った人を見るとほっとけないタイプだったな
クラスではそんな性格なのでみんなから信頼されている。
俺は四ノ宮に何度も助けてもらった。
俺は中学の時そんな性格の四ノ宮が大嫌いだった。
幼馴染だけの関係なのに当時不良だった俺は四宮にボコボコにされたのだ。
しかし、これは俺を救ってくれたと言っても過言ではない。
俺は中学の時、ノーマルからエスパーになったのだった。
突然力を持った俺は、混乱して力に物を言わせていた。
クラスメイトを傷つけてしまった。
ブレーキの効かない俺に四ノ宮は俺を止めてくれたのだった。
「おう、そうか...」
「大丈夫だって! なんとかするから!」
四ノ宮は、俺が不安がっている事に気がついたのか、俺の背中を叩きながら笑顔で俺に言う。
「俺の能力が全く効かなかったんだぞ!大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫、私の能力の前ではみんな手が出ないよ!」
呑気な奴だ。しかし、こいつはエスパーでかなり強い能力者だ。 四ノ宮なら大丈夫だろう、少しそう思う俺がいた。
「行ってもいいが、必ずそいつ(加藤)がいるとも限らないぞ」
極力行きたくない俺は、何だかんだ言い訳をつけてあの裏路地に行くことをためらう。
「今日いなくても後日私が張り込んでこらしめてやるから場所だけは知りたいんだ!」
何とも恐ろしいことを言っているが、こうなった四宮を止める事はかなり難しい。
俺はしぶしぶ四ノ宮に裏路地の場所を教え、向かうのだった。