表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/16

第3章

 トミーは小さな頃からずっと、<のっぽ>と仇名されており、今も友達から親しみをこめてそう呼ばれることがあった。

「のっぽのトミー、あたしと踊ってくださらない?」

 十四歳の頃のローラは、青白い顔の、痩せっぽちの女の子だった。野外でバーベキュー・パーティがあったあと、篝火を囲んで村の全員が踊るという年に一度のお祭りがあるのだが、彼女には相手が誰もいなかった。いじめっ子のビリーがもっともらしく「結核菌が移る」と言いふらしたため、男の子はみな怯えていた。「あいつと踊ると明日にはサナトリウムいきさ」などと言って。

 正直なところ、トミーにも相手が誰もいなかった――彼のガールフレンドのアリシアは、彼に焼きもちをやかせようとして、別の相手と踊っていた。それにトミーの場合、あまりにも背が高すぎて、なかなか他に相手になってくれそうな女の子を見つけにくかった。その点、ローラは女の子の中で一番背が高く、身長差がそれほどでもなかったのだ。

「うん、いいよ」トミーは一瞬迷ってから答え、ローラの手をとって軽快なヴァイオリンのリズムに合わせて踊った。

 そして、恋に落ちた。

 トミーの心にはその頃からローラしかなく、ローラの心に自分はただの友人にしか映っていないと知っていながらも――彼女のことを愛し続けてきた。ふたりの関係はトミーがロカルノン芸術アカデミーに通うようになってからも文通という形で続き、夏や冬の休暇には喜びの再会がいつも待っていた。それなのに……。

(一体、何故こんなことになってしまったのだろう?)

 事の起こりはほんの四か月ほど前の、クリスマスのことだった。トミーは町に休暇できていたある貴婦人の肖像画を完成させ、町までそれを届けにいった。その夫人は夫を政府の高官に持つ、芸術というものに実に深い理解のある人で、トミーにもっと才能を伸ばすようにと助言した。そのための費用を、喜んでいくらでも援助しよう、とも。ただそのかわり……。

「時々、あたくしのお相手をして欲しいのよ」

 トミーは最初、その<お相手>の意味がよくわからなかった。ポーカーの相手とか、チェスの相手というような、そんな漠然としたイメージしか思い浮かばなかった。彼は寒い中を馬車でやってきたため、体が芯まで冷えきっていた。暖炉のそばのビロード張りのソファに夫人に勧められるまま座ったまではよかったが、そのあとがまずかった。

「本当は、わかっていらっしゃるんでしょう?ねえ……」

 濃い化粧に派手なドレスを着たサッカレイ夫人に言い寄られたトミーは、まるきり旧約聖書は創世記のヨセフのようであった。トミーは彼女が<お相手>を勤めたあとで後金の二十五ドルをくれるつもりなのだろうとようやく悟ったが、その時にはもう夫人に上着を半分脱がされかけていた。

(女の人に恥をかかせるわけにはいかないけど……しかし、流石にこれは……)

 彼がそう思っていた時、ドアをノックする音が聞こえた。女中がサッカレイ夫人に来客のあることを告げると、トミーは心底ほっとした。上に重しのようにずっしりと乗っかってきていた夫人の体重がなくなるのと同時に、衣服の乱れを直してサスペンダーをかけ、チョッキを着た。下のほうからは「まあ、これはフォスター夫人!お懐かしゅうございますわ!」などという社交辞令の数々が聞こえる。トミーは女中に頼んで彼のコートやマフラーなどを玄関ホールから持ってきてもらい、すぐに裏口からでていくことにした。

「いつものことでごぜえますよ」

 トミーが後金の二十五ドルはいらないとサッカレイ夫人に伝えてほしいと女中に言うと、浅黒い肌の小柄な老女中は何度も首を振りながら戸を閉めていた。


 帰り道、雑貨店に用のあったローラと待ち合わせていたトミーは、彼女の様子がおかしいことに気づいていた。彼が何かを聞いても「べつに」とか「ふうん、そう」とか、気のない返事しかして寄こさないのだ。トミーはローラがよく、自然の風景に心を奪われて無言になることに慣れていたが、今日の彼女の沈黙はその種の類のものではないと感じていた。

(……まさかとは思うけど、サッカレイ夫人との間に何かあったとでも思われているのだろうか?)

 心に少しばかりやましいところのある彼は、その後も上っ調子な会話ばかり続け、普段どちらかといえば無口なほうであるにも関わらず、この日に限ってよく喋って、ますますローラの疑念を深めたのだった。

 防風林のエゾ松に囲まれたローズ抵の前でトミーが馬車を止めると、ローラは彼の手を借りることもなく、さっさと馬車を下りた。そして不倶戴天の敵でも睨みつけるかのように鋭い眼差しで振り返り、

「あたしたちの友情も今日これまでのようね、トミー・フラナガン。もう二度とあたしの前に顔を見せないでちょうだい」

 そう言ってローラは雪の中をずんずん歩いていき、彼が呼びとめるのも無視してローズ抵の美しい樫の樹のドアの向こうへと去っていった。

 トミーはローラのことを追いかけて、「今の、どういうこと?」と彼女に聞こうかとも思ったが、あまりのことに呆然としてしまい、そんな余裕もなかった。そして暫くの間木偶の坊のようにぼんやりと突っ立ったその後で、馬がブルルッと首を振ったのを合図とするかのように御者台に乗った。

(……ローラは一体、何を怒っているんだろう?)

 トミーにはその訳がさっぱりわからなかったが、家に帰ってふと玄関ホールにかかっている鏡を見て、その理由がわかった。

(キスマークだ!)

 トミーは左の耳たぶの下にある赤い口紅のあとをごしごしと手の平でこすり、それから自分がやけに香水くさいことにも気づいた。

(誤解だ!こんなのは誤解なんだ、ローラ……)

 彼は心の中で叫び立てたが、ローラはトミーがいくら弁解しようとしても、聞く耳を持たなかった。それに、ローラが怒っていたのはサッカレイ夫人のことだけではなかった。もしローラの怒っているのがサッカレイ夫人の口紅の跡のことだけだったとしたら――ローラも聞く耳を持って彼のことを許しただろう。だがローラは、トミーがロカルノン美術アカデミーへ通うため、ロカルノンの街へいってしまってからというもの、トミーに関する嫌な話を、それこそ嫌というほどまわりの人間に聞かされていた。

「トミーは向こうできっと、恋人を持っていることよ、気の毒なローラ・リー。ああいう芸術肌の人って、何人も女の人をモデルにしたりするでしょう?ましてや都会には、あなたよりも美しい女性がたくさんいるわけだしね?」

 村の婦人の集う裁縫の会で、ローラは何度似たようなことをアリシア・クロフォードや彼女のとり巻きのミリアム・ウェスト、ジェシー・スミスなんかに当てこすられたか知れなかった。そしてその度にローラは一体何度、まち針を針さしにではなく彼女たちの手の甲やむっちりした二の腕なんかに突き刺してやりたくなったことだろう。

「ごめんなさいね、手元が狂ったわ。あなたたちがあんまりくだらないおしゃべりばかりするものだから」

 もし最後にとどめとばかり、そう言ってやることができたとしたら、どんなに胸がすくことか!

 ローラは、もともとは教会のバザーなどの用向きで行われるこの裁縫の会が、実際は婦人たちの愚痴やおしゃべり、噂話の場に過ぎないことをよく知っていた。宣教師団に対する寄付ですって!とんでもない!おお、神よ!彼らに寄付するために編まれた靴下や枕やパッチワークの掛け布団が完成するまでの間に――一体いくつの呪わしい言葉が縫われていることか――ご存じでしょうね!きっと!

 もちろんローラは、手紙に書かれたトミーの言葉のほうを信じたし、ロチェスター村ではあなたが恋人を何人も持っていると言われています……などというようなことを手紙でほのめかして、彼に本当のことを確かめようとも思わなかった(それはローラのプライドが許さぬことでもあった)。

 けれどもトミーが芸術の道を諦めてロチェスターに帰ってくることになり、農夫になると心を決めてからも、彼には恋の噂がいくつもあった。フラナガン家の後を継ぐ彼と結婚したいと思う年ごろの女性はいくらもいたし、ローラは誰に何を聞かれても「彼とはただのいい友達よ」としか答えなかった。そしてトミーはローラの崇拝者であると<一応は>見なされていたものの、彼は誰かが肖像画を描いてほしいと言えば、喜んで出かけていったのである!

 しかしローラは<友達として>彼のそうした行為を許容するように努めた。だけど!何も自分の大嫌いなドナ・マクドナルドの肖像画まで、描いてやることはないではないか!

「ああ、ドナ?最初はお姉さんのアナベルが結婚の記念にって言ってたんだけど……そのうち彼女も自分のを描いてほしいと言ってね。まさかお姉さんのことは描いたのに、ドナのことは描きたくないと言うわけにもいかなくてさ」

 その時、トミーは気づいたかどうか知らないが、ローラは下唇をぎりっと噛んでいた。

(トミーのお人好し!馬鹿!浮気者!)

 ローラは心の中でそう叫んだ――もちろん彼は自分の恋人でもなんでもない<ただの友達>だ。でも、キャンバスに向かっている自分がいつもどんなふうで、彼の青灰色の瞳に見つめられた娘がどんな気持ちになるものか、きっとトミーにはまるでわかっていないのだ。おそらくドナの姉のアナベルなど、もしトミーがちょっとした合図を送ろうものなら、ふとっちょのミルズとの婚約など、さっさと解消してしまったことだろう!

 そして今度は町に休暇できたサッカレイ夫人だ――トミーは左耳の下に赤い口紅の跡があるのを見た時、思わずローラはマトンをはめた両手で口許を覆っていた。

(きっとこれは……そうよ。きっと、サッカレイ夫人が絵を描いてくれたお礼にって、トミーにキスしたのよ。きっとそれだけなのよ)

 ローラはしつこいくらい自分にそう言い聞かせようとしたが、トミーの様子が変であった。いやにくだらないことを、細かいところまで聞いてみたり、いつもはあまり褒めたことのない服のことや髪型のことなんかを気にしてみたり――ローラは馬車が葉のすっかり落ちたイチョウ並木のところまでやってくると、何故だかもうこんなことは続けられないと感じた。

 もちろん、トミーのことは友達としてとても好きだった。でも、彼が何かと言い訳を作っては色々な女性のことをモデルにするということが耐えられなかった。もし、もしも――自分が彼の恋人だったとしたら、とっくに胸が張り裂けていたことだろう!

「それで、今度は戦争へいくんですって?ちょっと頭がおかしいんじゃないかしら。遠く海を渡った大陸までいってドンパチやろうってわけなのね。いいわよもう、トミーなんか……トミーなんか……」

 ローラがぶつぶつ言いながら台所のストーブの前でじゃがいもと玉葱、とうもろこしの入ったスープを作っていると、

「一体、誰が戦争へいくんだい?」

 かつて(あるいは今も)自分の支配と監督下にあったキッチンへと、エリザベスが顔をのぞかせた。

「いい匂いだね。オーブンでマフィンが焼けてるようだけど……あんたはもうこの家の立派な主婦だよ」

 あたしがいなくても十分まかせられる、エリザベスがそう言おうとしていると、ローラが「いけないっ!」と突然叫んでマフィンをオーブンからとりだした。幸い、マフィンはこんがり狐色に焼けて、ちょうどよいところであった。けれどももしエリザベス伯母の気づくのがもう少し遅かったとしたら……黒い炭のようなものが食卓に並んでいたかもしれない。

「もしかしてあんたが言ってたのはケネスのことかい?あの子は変に頭のいい子だからね、海を渡った遠くの世界で起きてる戦争のことにまで興味があるのさ。この間、おっかさんがうちにきた時、ハンカチで涙を拭きながら話してたよ。なんでも、出征する前にドナ・マクドナルドと結婚するらしいじゃないか」

「……ドナと?」

 畑の植えつけが終わって、家に帰ってきたエドワード伯父とフレデリック伯父、それに雇い人のマーシー少年が戸口に次々と顔を見せはじめた。

「やあ、今日もうまそうだ」

 マーシー・マコーマックはぺろりと舌の先で唇の端をなめ、途端にエリザベス伯母からじろりと睨まれた。みながそれぞれ手を洗い、泥で汚れた長靴を脱ぎ、身だしなみを軽く整えて食卓に着くと、エリザベスが神に感謝の祈りを捧げてのち、食事は始められた。

「一体、誰が戦争へいくんだって?」エドワード伯父は籠の中からパンをひとつとると、それをスープにひたしながら言った。

「ケネス・ミラーだよ。本人は、次にここへ帰ってくる時にはミラー少尉だ、なんて言ってるらしいけどね……たぶんケネスは戦争ってものを、新聞の紙の上の出来ごとだと思ってるんじゃないかね。可哀想なのはあの子の母親だよ。あそこには息子がケネスひとりだからね。上の姉はふたりとも、嫁いでしまってるし」

「へえ。ケネスは一体、少尉になるためには何人ひとを殺すことになるのかわかって言ってるのかね?」

 毎日ロカルノン・ジャーナルを隅から隅まで読んでいる博識なフレディ伯父がにやっと笑った。彼は小さな頃からエリザベスにがみがみ叱られるたびに、この笑いを浮かべては姉を不愉快がらせたものだった。

「今の若い者は何もわかっとりゃせんよ」兄のエドが首を振りふり溜息を着く。「そして戦地へいって現実を知り、ホームシックにかかりながら後悔するのさ。ママの焼いてくれた美味しいクッキーのことなんかを思いだしながらね」

 家族の会話はふと、そこで途切れた。いつもならローラが明るく場を盛り上げるところであったが、ローラは気もそぞろに食事をし、トミーのことを思って感情が千々に乱れていた。

(トミーは馬鹿だわ――信じられない大馬鹿よ。きっとケネスにうわべばかり立派なことを吹きこまれたに違いないわ。あのふたりは昔から仲がよかったから……それでケネスがドナと結婚するから自分もと考えたのかしら?まさかとは思うけど……)

 雇い人のマーシー少年はエリザベスに注意されない程度にがつがつは物を食べなかったが、彼にとって毎日新聞のトップで報道される遠い国の戦争のことなどはどうでもよいことであった。一日中作物の植えつけの仕事で、腰がみしみし言うし、足はほとんど棒のようだった。食事が終わったら屋根裏の雇い人の部屋へいき、吸いこまれるようにベッドへ横になるなり、三秒後にはいびきをかいているだろう。それにしてもローラ姉さんの作る料理はいつ食ってもうまいや。それに彼女はいつも、エリザベスには内緒で、彼にドーナツやクッキーなんかを屋根裏部屋でこっそり食べるようにとくれるのだ。


 ローラは後片付けが終わると、二階の自分の部屋へ上がっていった。その日はマーシー少年に夜食のおやつをあげるのも忘れていた。もっとも少年はとても疲れていたので、ローラの部屋に聞こえてくるくらいの大いびきをかいて、この時すでに眠ってしまっていたが。

 エリザベスは編み物をしながら、エドワードやフレデリックと今年の穀物の収穫量のことなどを話しあっていたが――今年は雪どけが遅く、冬がいつまでもぐずぐずと居座るような天候が長く続いたため、植えつけの仕事が例年より少しばかり遅れていた――ローラが二階へ上がっていくなり、少しばかり小声になって、可愛い姪のことを話し合いはじめた。

「トミーがうちへ来なくなってから、随分になるね」姉には理解できないであろう詩情というものを解しているフレディは、実に残念そうに溜息を着いた。「あの子はいい子だよ。父親を手伝ってよく働くし、わしらと同じように根っこのほうに善良な農民の血が流れてる。ビリーやヘンリーや西の森のあの、ユージンとかいうのとは訳が違う。わしゃあてっきり、あの娘の目がそのうち覚めて、トミー・フラナガンとうまいこといくだろうと思っとったのに」

「わしもだ」と、双子ではないが、双子のようによく似た性格の、兄のエドが同調する。「わしらももう歳だからな――あの娘の行く末についてよくよく考えてやらねばなるまいて。幸いあの娘は同年代の娘っ子に比べれば、分別ってものが備わっとるようだがな。何分恋は魔物じゃて。いつ変な虫がくっついて、おかしなのと結婚すると言いだすかもわからんじゃろう。その時にはあの娘のことだ――結婚すると決めたからには必ずそうするだろうよ」

「やれやれ」よくまあ飽きもせず、毎日食後に同じ話ができるものだとエリザベスは感心してしまう。

 年のほうは自分が五つも上だが、外見上の老けこみ具合は彼らのほうが上回っているかのようであった。エリザベスの髪は七十になってもいまだ若い娘の時と同じように黒々としていたし――人に言わせれば気味の悪いくらい――また別のある口さがない人に言わせれば、あれは鬘なのではないかというくらい――体こそびっこを引いてはいたものの、彼女の頭はしっかりとしており、同じ話を繰り返し何度も言うほど、老いぼれてもいなかった。

 それに引きかえ、エドワードとフレデリックの、なんと老いぼれて見えることだろう!今のエリザベスにはローラのことよりもむしろ、弟たちのことのほうが気がかりなくらいであった。彼らはおそらく、とても不安なのだろう。自分たちも大分老いぼれてきたし、一年年を経るごとに、農業という仕事が身にこたえるようになってきた。もしローラがトミーと結婚して、ローズ抵にきてくれたら、それこそ大助かりというものだった。それに、トミーなら小さい頃から知っていて気心も知れているし……まあもちろんジョサイア・フラナガンはローラこそがフラナガン家の嫁として松林荘にくるべきだと主張するだろうが――あの頑固親父め!――もとはといえばあいつの土地はうちの親父が雇い人のあいつの親父にくれてやった土地ではないか……云々。

 エリザベスはふたりの弟が白髪頭をすり寄せんばかりにしてソファの上でいつもの会話をしているのを聞きながら、突然笑いだしたくなった。<幸福>――自分は今、まったくもって幸福だと感じた。それは病いに伏してからエリザベスが初めて感じたことであった。昔の自分であればこんな時、むっつりとしながらもっともらしいことばかり言ったに違いないが――今はただ、あんなに可愛い姪を残してくれたエミリーに、感謝するばかりであった。

(エミリー、どうやらわたしはもう少し、こっちの世界へいるべきらしいよ。何よりもまず、あんたの可愛い娘をうまく縁組させなくてはね……なに、心配はいらないさ。松林荘のトミー・フラナガンとおそらくは結婚することに落ち着くだろうからね。ちゃんと、神さまのほうでうまいこと計らってくださるに違いないよ)

 エリザベスが窓辺の揺り椅子でくすくす笑いを洩らしているのを聞きつけると、ふたりの弟は不気味がって、それぞれ疲れた体を引きずるように、おのおのの寝室へと引き上げていった。もちろんエリザベスとて、生まれてから一度も笑ったことがないわけではなかったが――それでもそのくすくす笑いは、ふたりの弟にとって、十分奇異に思われることであった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◇オリジナル小説サイト『天使の図書館』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ