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こんにちは、かめです。  作者: T.S.シャルロッタ
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ドギマギするかめ

 気持ちに気付いたからと言って、特に何かできるわけではなかった。かめはただひたすら、平常心を保ち、以前と変わらないように接することしかできなかった。ただ、まわりはもう気付いていた。かめは好意が視線に出るのだ。みんなは、かめに声をかけようとするたび、ひどいときには話している最中も福光のほうに視線がいっていることに気付いていたのだ。おかげで、何度も「ふーくーみー……」まで叫ばれて、慌てて友達の口を押えるはめになった。


 しかし、そんなかめも、何もしなかったわけではない。こうらに閉じこもって待っているだけではいけない、と思い、積極的に福光に、福光のよろこびそうな給食メニューをあげにいったし、おしゃべりできるときは完全に聞き役にてっした。


 かめはいろいろ考えていた。考え事の主な内容は、告白しようかどうかについてだった。男子と言うのは、告白して振ったら誰かに告げ口するものではないのか、とすごく心配に思っていたのだ。実際かめは、小学生のころすごく好きだった男の子に告白して、その男の子はかめを振っただけでなく、噂を広めてしまったのである。それ以来かめは、男の子を好きになったことがなかった。


 そんなことを熱心に考えていると、福光がこちらへ近づいてきた。別に、かめに用事があったわけではないのだ。かめが思考していたのは、自習の時間だったため、福光は自習に必要なプリントをファイルにはさんでいたのを思いだし、取りに来たというだけの話だった。忘れていたが、かめはみんなのファイルがしまってあるロッカーのすぐ横の列の席だった。前の席とかめの席のすき間はそこまでせまくなかったが、福光はかめの席の前で止まり、腕を伸ばしてファイルを取った。そして、運の悪いことに、福光はかめの机を勝手に使い、ファイルを広げてプリントを取った後、ファイルをロッカーに戻して去って行ったのである。


 言うまでもなく、かめの顔は真っ赤だった。福光がそんなことをしている間、かめは福光の腹のあたりをずっと見つめながら、この場をやりすごそうとしていたのであった。


 福光という男はなんとも残酷な男である。

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