あとすこしで完全に異変に気付くかめ
女子から好きな人絶対いるよねー、と言われても「ばっきゃろー、いてたまるかよ、そんなもん」と笑っていたかめも、ばかではなかった。その日は全校集会だかなんかで、とりあえず身長順に椅子を並べて座っていなければならなかった。かめと後ろに座っている美香は、好きな人の話題になった。美香は、他の女子と同じく言った。
「結ちゃんは、福光が好きだもんねー」
「なっ、なんでそうなる? ちょっと待ってよお……」
といいながら、かめは通路をはさんで斜め右後ろに座る福光をちらりと確認した。どこか適当な場所を向いている。
「あれ? じゃあなんで顔赤いの?」
「いや! 絶対赤くない!」
美香はかなり痛いところを突いた。なぜなら実際かめは顔が熱くなるのを感じていたからだ。
「っていうか、この会話、絶対福光に聞こえてるって」
かめは声をおさえて言った。その時であった。
「なんでお前そんな顔赤いの?」
そう、福光の不意打ちによって、かめは撃沈した。かめの顔はさらに燃えるように熱くなったし、胸の鼓動もかなり速かった。美香はくすくす笑いが止まらない様子で、かめは顔が赤いまま振り返り、福光にあいまいに笑いかけ、前を向いて顔を隠した。その後、美香に言った。
「絶対あれ本人に聞こえてたじゃん!」
一切関係がない風をよそおっているのかよそおっていないような顔をした福光は、何事もなかったかようにして、そのまま座っていた。