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ショートストーリー 財テクの勧誘

作者: 夢前孝行

財テクの勧誘




最近景気が悪くなり、

デフレスパイラルから一歩も抜け出せない日本経済である。

以前からもあったのだが最近、

この不況で目に余るほど財テクの勧誘の電話がよくある。


先日も電話で株を買えとか、

小豆相場がどうだとか、

お金を増やすおいしい話があるからとかとかかってくる。

ぼくはそんなおいしい話なら人に言わず、

自分でお金を増やせばいいですよ、親切に教えてもらわなくとも結構です、

と断るが、あいてもさる者『私達会社のモットーは皆さんにお金を増やして、

喜んでもらうのがうれしくて、

このようにお金が儲かる話をさせてもらっています。すべて、

お客さんに喜んでもらいたいためなんです』と、

うまいことを言ってなかなか電話を切らない。

長く引っ張れば引っ張るほど電話の主は成績が上がるそうな。

契約でもしようものなら大変なことになる。


ぼくはある日考えた。そして、例の電話がかかってくるのを待った。


二、三日して例の勧誘の電話がきた。

電話の主はぼくがてぐすね引いて待っているのも知らず、

儲かる話をしだす。

ある程度訊いたところでぼくは『お金は腐るほどあるんです。

トイレットペーパー代わりに千円札でお尻を拭き、

一万円札で鼻をかんでいます。それでもお金が増えて増えて仕方ないんです。

もう、これ以上お金は要らないんです。

黒いゴミ袋の中に一万円札をシュレッターで裁断して捨てるときもあるんです。

お金が増える話を聞くと、頭が痛くなるし、蕁麻疹もできるんですよ。

その上、一万札の束に押し潰され、

うなされる時もあるんです。

できれば市直営のごみ焼却炉にこっそりいって燃やしてしまいたいのです。

古い家に行くと応接間に夏目漱石の写真が飾ってあるのを見ただけで気分が悪くなるんですよ』

と言ってやった。

電話の主『結構ですな』と言って電話を切った。

こんな話、真に受けるとは思わないが、

しばらくはこの手でいこう決めた。


             (15年ほど前に書いたショートストーリーです)


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