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第五話.サタザ村3

「このたびは村を救ってくださりありがとうございました。」

 長老と呼ばれる男性はテーブルに促すとそう言う。


 テーブルには豪華な食事がふんだんに用意されていた。料理の種類はわからないが、何か鶏肉を丸焼きにしたものとか、鍋のようなもの、あとは果物の盛り合わせや、なんか白い肉まん?みたいな見た目のものとか、まあとにかく色々と用意されているのだ。



「勇者様がた、どうぞどうぞ、お食べくださいませ」

 というわけでこれらの豪勢な食事は優亜たちを歓迎するために用意されているのである。


 実はあの森を抜けたところでこの村の人々に遭遇したのだ。


 彼らはこの世界の原住民らしい。小さな村にひっそりと暮らしている。最近は彼らの村近くに現れたあのイノシシのせいで何人もの死者が出て壊滅の危機だったそうだ。そんなわけで優亜たちはこうして歓迎されているわけである。


「ふむ。苦しゅうない。ぼくは王子だ。この礼は忘れんだろう」

 とか言ってバカ王子が料理に手を付ける。


「うまいな。これ! この肉、なんだい?」

「ヒヒガエルの丸焼きでございます」


「……。それはなかなかダディな食べ物だね」

 と言うかお前何もやってないだろ。


「本当だ。おいし~~。ってかお腹すいてたんだよね。生き返るー最高。

 と涙を流しながら沙菜は料理を頬張る。


「おおげさだな」

「じゃあ優亜も食べなよ」

 と、無理やり口に料理を突っ込まれる。


「ん。うまい!!」

 たしかにこれは絶品だ。


「ほほほ。サタザ村の料理は周辺の国家でも有名なのですよ」

 と村長は白いひげをなでながら楽しそうに笑う。


「ところで村長さん、いろいろ聞きたいことがあるのですが」


「どうぞどうぞ。村を救ってくれた恩人だ。わたしらでわかることなら何でも答えましょう」

 というわけで優亜は村長にこの世界のことをいろいろと質問する。


 ちなみに優亜がそうやっていろいろ考えているとき他の二人が何をしていたかと言うと。


「ええ! レザー様、もともとの世界では王子様だったんですか?」

「ああ、そうさ。だがかしこまらなくてもいいよ。ぼくは王子であると同時、美しい女性の前では従者だからさ」


「え? そ、そんな美しいなんて」

「ほお。自らがどれほどまでに価値のある宝石であるかを理解していないのかい? ならば僕が輝かせて見せよう。ほら、めをつぶって」


 だからなにをやってるんだっ!


「優亜。おなか、おなかいっぱいすぎて動けない。た、助けて」

 ……。


 というありさまである。


 てなわけで仲間たちの協力は一切得られず優亜だけで色々と聞きこむことにしたのである。その結果、ある程度この世界の概要が分かってきた。


 まず、この世界『モルガナ』は地続きの四つの大陸からなる世界だそうだ。そのうち最も北に位置する、ビュリアナ大陸に魔王と名乗る存在が現れ、世界に魔物が跋扈するようになったらしい。


 とはいえそれ以外にも色々と不穏因子がある。この世界には人間以外に原住民が住んでいる。エルフだの天使だの、そんなのだ。しかもこの世界においてヒエラルキー的には人間が一番下。比較的下位の種族であるエルフなんかにも人間は瞬殺されてしまうらしい。そしてこれらは基本的に、それほど人間に対して友好的に振る舞ってはいない。


 いや、友好的に振る舞ってはいないというか基本的に人間は彼らにとって奴隷扱いされているそうだ。


 一部の文明が発達した国家は、エルフなどと誓約を結ぶことで発展を許されているそうだが、このような小さな村単位になれば、一人のエルフが気まぐれに村を滅ぼしに来たら、それで終わるというのが現状だそうだ。


 エルフだの天使だのは、いわゆる神道で言う神に該当する存在なのではないだろうか? もちろんヤハウェやあの神のクラスではないものの、下位の八百万の神々同等。


 元々地球でも、上位存在が普通に地上に存在していた時代もあった。しかしヤハウェが地球に対して上位存在の不可侵を唱えたこともあり、基本的に地上に神たちが現れるということは滅多になくなった。そのルールが取っ払われた世界だとしたら、神たちが人間と同じ次元で暮らしているのもあながちありえない話ではない


 仮に神だとして戦えるのだろうか。優亜はフランチェスカや仲間たちの協力があったとはいえ、地上にて一度サタンを退けたこともある。


 サタンは上位存在の中でもそれなりに上の部類の存在。と考えればこの世界においてエルフなどの比較的下位の上位存在には太刀打ちできそうなものだが、実はことはそう単純ではないのだ。


 魔封具というものがある。キリスト教のエクソシストが作ったものだから、概念的には悪魔を、となるのだが、神、上位存在を封じ込める霊装だ。これが何で作られているかというと主にペリドットと言う宝石によって作られている。

 つまりペリドットには上位存在の力を抑える効果があるということだ。そのペリドットだが、主成分はかんらん石と言う鉱物である。


 そして、地球の大部分が占めるマントルの主成分は、かんらん石であると言われる。

 つまり地球それそのものが巨大な魔封具なのである。


 地球上にある限り上位存在はその力が大きく低下するのだ。



 したがって……おそらく今のままでは、勝てない。優亜でも、だ。


 ちなみにこの世界の現住の人間たちにもステータスやレベルの概念はあるらしい。そう言うわけでこの世界における一般的なステータスの度合いを聞いた。まず人間は、およそ地球にいたころと変わらない程度。大体レベルは30。当然レベルのステータス向上があるから一般の地球人よりは強いが、レベル10アップと魔力100ボーナスを受けている以上、沙菜でもこの世界のたいていの人間は太刀打ちできないだろう。


 村一番のつわものと言う青年のステータスを聞いたが、以下のようだった。


 レベル:32

 HP:216

 MP:0/0

 力:49

 魔力:0

 速さ:37

 対魔:25

 対物:45

 運のよさ:15

 カリスマ:16


 ちなみにレベルアップ時に上がるステータスポイントは人によって違うらしく、大体の人間は1、超才能のある人間でも5だそうだ。そう言うわけでレベルが1上がると10ポイント上がる地球人は破格と言っていい。


 魔法が使える人間も限られていて、魔法が使える人間の方が総じてレベルアップポイントが高いらしい。発展した国家では軍隊などを形成しているようで、その人間たちは魔法も使え、相当レベルアップポイントも高いらしい。


 正確なステータスは村長も知らないそうだが、その騎士隊長のレベルが90前後だったそう。


 だがそんなのがごろごろいてもエルフには勝てないそうだ。


 というか騎士隊レベルでも魔物一体の討伐も一人では行えないらしい。大体は一個隊での討伐作戦となる。


 また魔王についての力も未知数で、エルフやその他の生命体とは基本的に特に敵対行動をとっていないらしい。が、もともとあった世界最大の大国が魔王たった一人によって一晩で滅ぼされたというから、エルフなんかよりは上位の存在と考えていいだろう。


 机上の空論だが現状の世界の強さを並べると、おそらく以下のような感じだ。


 この世界の神>上位の神たち>魔王>下位のエルフ>騎士団>魔物>騎士一人


 優亜のレベルは魔物を倒せたということから考えて、


 魔王>下位のエルフ>騎士団>優亜>魔物>騎士一人>レザー>沙菜≧村人


 騎士隊員についてはレベルアップ補正が5、レベル80で、ステータスが400上昇すると考えての位置づけだ。


 神のボーナスで優亜たち地球人だけがレベルアップで10ポイントを稼げるというところを加味すれば、優亜は今後レベルを重ねていけばエルフの段階には到達しうるかもしれないが……いかんせん厳しい。


 そもそも魔物だって、今回の相手は倒せたが魔物にも強い魔物と齢魔物がいるだろうし、そうなると本当にどうなるかわからない。


 フランチェスカやひまりあたりとは早急に合流しなければ厳しい。二人がこの世界で死ぬということはさすがに考えられないが、彼女たちでも単独でこの世界の攻略は不可能。

 いや、全員か?


 あの100人、全員を確認したわけではなかった。優亜が宗教方面以外の世界観に疎いというのもある。だが、アシュリーのように格闘家として世界最強の存在もあったのだ。ということはあそこにいた全員がそれぞれ王族や特殊な才能を持った人間なのだろう。


 ちらと優亜は沙菜を見る。


「おなか、苦しいよぉ」

「いや、ないか……」


 とにかくフランチェスカとひまりとの合流は急務。


 そのためには情報や物流が集まる中心地に行ったほうが探しやすいだろう。

 

 つまり先ほどの話にも出てきた文明の発達する国だ。


「村長。この周辺で都市に行くために一番近いルートを教えてください」

 

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