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第四話.サタザ村2

 地面を蹴り跳躍、イノシシの頭上を遥かに飛び越す。


「降りろ、スサノオ!」

 そうつぶやく、その瞬間、優亜の右手に剣が握られる。


「こっちでも術式そのものは消えていない。おれは闘える!」

 地面に着地した優亜はそのまま右手に抱えた剣をイノシシに向かって振るう。その瞬間空間に亀裂が入り、紅蓮の業火が現れイノシシに向かって襲い掛かる。


「カグチ。さらに、タケミカヅチ」

 イノシシは体を焦がしながらもすぐに体を翻すとまた優亜に向かう。しかし、その瞬間、優亜の体が掻き消える。


 いや、イノシシの後方にすでに表れていた。


「そのまま、イノシシに向かって剣を振るう」

 血肉がえぐれとび、鮮血が舞い散るが、しかし、イノシシは行動をやめない。


「つ。効かないか」

 が、イノシシを遥かに凌駕するスピードで優亜は旋回する。


「これならどうだ」

 飛び上がった優亜はイノシシの額に剣先を突きつける。その瞬間、空が光る。


 雷鳴が刀に向かって落ちる。


「ぐきゃあああああああああああああああああああああああああっ!」

 叫び声を轟かせながらイノシシは地面へと下る。


「こんなもんか」

 どおんっと遅れて地面が揺れる音が響く。すると、イノシシの体が光にまみれて消えていく。


『レベルが上がりました。レベル10→25』

 と、脳内に声が響き渡る。


「一気に上がったな、レベル……」

「優亜、な、何今の!!」

「なに、って」


「魔法使えるの!? やっぱりここは異世界なんだ!」

「いや、つうか、これは地球にいたころから使えたというか」

 頬をかきながら優亜は答える。


「おまえ……。思い出した。日本にいる、タマヨリと言う術者のこと」

「あー。まあ高1の時はいろいろ暴れてたからなぁ」


 前述のとおり、優亜は最強の術者として仲間たちといろいろ暴れまわった過去があるので、世界の要人たちの中で優亜の名前を知らないような奴はまあそんないない。


「優亜は魔法使いだったってこと?」

「まあ……」

 名称自体は多岐にわたるが結論から言えば、そのとおりである。優亜はいわゆる、魔法使いだ。


 自身でそう呼称することはそうないのだが、わかりやすく言うと『魔術師』という考え方が一番近いか。


「というか沙菜も使えると思うぞ。基本的に『魔法』は上位存在との契約によって使えるようになる。概念上、あの神と俺たち全員は契約している状態だと思うから、あの神の名のもとに超常現象を使役できるはず。このステータスって概念もあの神が作り出したイメージだろうし。ただ、それ以外に今まで契約していた力も酷使できるらしいから、安心した」


 優亜の信仰は『神道』。八百万の神々との契約の上、超常的な力を行使できる。通常、巫覡は自身の神社に祭る神一身と契約関係にあるが、優亜はいろいろと飛びぬけていて、八百万の神々すべてと契約関係にある。


 神道には自身を人柱にみたて、神の力を自らの体内に宿す、神卸と言う術式がある。通常は自身の神社でまつる神一身の力を引き出すすべだが、優亜は八百万すべての能力を使役できるのである。


 通常神を体内に宿すには莫大な霊力。この世界と法則で言うところのMPか? を消費するのだが、ステータスを見てもわかるように優亜は無限の霊力の持ち主などと言われた逸材。およそ無限に神の能力を体内に宿し続けられるのだ。


 神々にもランクがあり、日本が信仰する八百万の神々の中でも多岐にわたる。ヤハウェがS級だとすると、アマテラスやスサノオでA級、小さな神社でまつっているくらいの神様だと、B級やC級というところか?


 ちなみにキリスト教で言うところの悪魔はヤハウェ以外のすべての神を指す。サタンも神道的には神の一身で、ただし人に害成す存在であるから荒御霊。位はスサノオと同等というところだろう。


 そしてこの世界の神はS級。軽く見積もって、だ。そしてS級の神なら、宇宙と言う概念も創造できる。


 この世界があの神が作った世界なのか、あるいはここがいわゆる高天原、神々の世界なのかはわからない。

 だが、少なくても世界を作り法則を自由に生み出す力を持っている存在であるということだけは確かなのだ。


「あのさ、魔法、本当にわたしも使えるの?」


「ああ。あの神様のおかげで魔力のステータスが上がっただろ。これがいわゆる神通力のことだと思う。まあ、魔術を行使する源ってところか? それが上がった以上、沙菜も魔法が使えるってこと」

 そう言うと沙菜は目をキラキラさせる。


「やったあああああああああああっ!」

 といきなり沙菜はガッツポーズを決める。


「ついにきた。ずっと憧れてたんだ。異世界!!」

「だけど沙菜は闘ったりするなよ」


「え? なんで?」

「危ないからだよ。それにあのイノシシ、相当強かった。だいたい魔力100が熟練の術者ってあの神が言ってたろ。今の沙菜はそのレベルだろう。だけど、熟練の術者ってレベルだとこの世界、無理だろ……」


「それは僕も感じた」

 レザーがこくりとうなずく。


「僕も皇太子だ。聖術の術者としてならある程度の実力者。たとえば相手が魔術師なら、最高段位者と戦ってもおそらく勝てるだろう実力はある。だが、あのイノシシには手も足も出なかった」


 そう。言ったようにレザーは王族。


 魔術は神との契約によって成り立つと言ったが、実は神秘を扱うにはもう一つの方法がある。それは、信仰だ。その宗教を信じている人間の数の分、信仰の量だけ、それを行使する司教は強くなるのだ。


 たとえばこの体系で最も有名なのがキリスト教。ヤハウェを信仰するアブラハム系の宗教はヤハウェから直接力を得て超常を行使するというよりは、信仰それそのものを力として行使する。

 神の存在によらない仏教などもその一派だ。

 そして信仰を力にするという意味ではあらゆる宗教がその恩恵にある。


 また、シーク・レザーの国も、既存の宗教体系にのっとっているとはいえ王国である以上、独自の文化は存在しているはずだ。つまり、国民数分能力が上乗せされると考えていい。


 例外的に日本やイギリスなど、もはや形骸化した王だと、それほどまで力は上がらないが。しかしレザーの国はアラビア地方に位置する封建的国家。相当能力は高いはずだ。


「でもでもさ、レベル上がれば強くなるんでしょ! ならわたしだって」

「大丈夫だよ。おれが闘うから」


「なんで。わたしも戦いたい。異世界無双したい、優亜ばっかりずるいっ! ずるいずるい!」

 とか言ってバタバタと暴れだす。


「アルテミス、ぼくたちはあなたが傷つくことが耐えられないのです。美しいあなたが傷つく恐れがあるそう考えただけでこの身が引き裂かれる思いだ。だから絶対にあなたを守る。戦うのは僕だけでいい」

 そう言って沙菜を抱きしめる。


「きゃっ」


「おい、バカ王子。なにやってんだよ」


「なんだい。この子は優亜くんの女かい?」


 優亜がそう言うとぱっとレザーは沙菜から手を離す。


「いや違うけど……っていうかアンタ手早すぎだろ」

 そう言うと、沙菜がにやりと微笑む。


「もしかして優亜妬いてるの?」

「妬く? なんでだよ!」


「他の男の人に言い寄られるのを見て」


「っていうか、バカ王子に言い寄られていい気になってんなよ。この男は女とあればだれでもくどくってんで有名なんだ」

「おいおい。やめてくれよ、僕の恋路を邪魔するのは」


 ほっといてイノシシに食べさせればよかっただろうか…。


「ごめんね、優亜」

 とか言って沙菜は優亜の手を握りしめてくる。


「大丈夫だよ。わたしもう、優亜しか見ない」


 しまった……っ!


 冷静に考えればここは二人の仲をうまく取り持ち、沙菜を引き取ってもらうのが得策なのか。皇太子殿下なら、沙菜の願いもかなうし。と言うか優亜より上玉だし。


 とはいえ、レザーの国は外人との結婚を認めていないと言ってたからそれも難しいか。むむむ。


「とにかく……このイノシシの来た方向」

 と、そんなことはどうでもいいのだ。


 優亜はイノシシがやってきた方向を指さす。イノシシの大きさのせいで木々が薙ぎ払われ、遠くまで見渡せるようになったのだ。どうやら数キロ先で森が終わっているようだ。


「とりあえず森を抜けよう」

「そうだな。ぼくも賛成だ」


「わたしは優亜についていくからどこでもいいよ」


 と言うわけで一行は森の外を目指す。


名前:ユーア・タマヨリ

歳:17歳

職業:巫覡

レベル:25

HP:1082

MP:6956

力:11

魔力:608

速さ:21

対魔:221

対物:31

運のよさ:29

カリスマ:122


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