巨木の賢者
ごめんなさい。遅れました。
(なんなんだ?)
怪しい声が響き渡り、
一瞬心が奪われたかのような、
錯覚に陥った。
それだけ不思議な力を
持つ声だった。
「なにもんだ!」
俺は気になり声がした
方向へ疑問を放った。
「ワレハソナタラガタオシタ
ガリンゴヲスベルモノナリ。」
「なに?」
「隠れてないで私たちの前に
姿を顕したらどうですか?」
フィーヤさんも声をかけた。
「ソレハデキナイ。
ワレハコノチヨリウゴケヌノダ。」
カタコトのように聞こえるが、
心の奥底まで響き渡る声だ。
「さっきっからこの調子なの。」
桜が不服そうに告げてきた。
「なるほどな。」
なにが「なるほど」なのか分からんが。
「何処にいる?
俺たちがそっちへ行く。」
「っ!おにいちゃん、大丈夫なの?」
「ああ、多分な。」
互いに動かないんじゃ、
誰も何も出来んからな。
「ワレハコノリンドウノ
サキニイル。」
「ふ~ん。」
「とりあえず、行ってみませんか?」
「そうだな。ここにいても仕方ない。
二人ともそれでいいか?」
「うん、いいけど。
少し休ませて。」
「分かった。」
数分の休みを経て、
林道を進んで行った。
「なんだ?」
少し先に周りとは明らかに違う
巨木を見つけた。
異様な雰囲気を纏った
化け物のように思えた。
駆け寄り近づくと、
木の中程に眼や口のように見える
大きめの窪みがあった。
「あんたがガリンゴの親玉なのか?」
「イカニモ。ヨクキテクレタ。」
なんと、その口のように見えた
窪みが動き、声を発した。
これには皆驚いたようで、
唖然として固まっている。
俺は不安と期待を綯い交ぜにした
瞳を木の化け物に向けた。




