黒き災厄
俺は少しずつ後退していった。
街まで後少しとなった頃。
相手が動き出した。
音も立てず静かに、かつ油断なく歩んでくる。
「くそっ。」
今ここで走り出したらすぐに追いつかれる。
かといってこのままなら確実に距離が縮まる。
「どうすりゃいいんだ・・・。」
ヒュルルル ドーン!!
突然目の前の化け物が爆発音を立てた。
考えるまでもなく仲間の支援だと気づいた。
爆風が勢いよく舞ったが、
奴には傷跡一つついていなかった。
しかし相手が一瞬気を取られ、隙ができた。
俺は、黒い狼を抱き抱えたまま、
脱兎のごとく城塞内へ駆け込んだ。
ガラガラガラ バタン!
それをみた兵士が急いで城門を閉めた。
「ふぅ。ありがとう、助かった。」
「ううん。おにいたん大丈夫?」
「ああ。」
「あんたら落ち着くのは早いぜ。」
一息付いた俺たちにそんな声がかかった。
グルルル ダンッ! ダンッ!
「嘘だろ・・・。」
城門の方から大きな狼の唸り声と
突進して体当たりをかます音がする。
「あいつ、門を壊す気か?!」
「あんたらは念のために避難しな。
門が壊されるとは思えんが万が一の事がある。
俺はあんたらよりは弱いだろうが、
若いもんを死なせるわけにはいかんからな。」
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
「分かった。」
俺たちは突撃音を尻目に避難した。
街の集会所のような施設へ向かい
しばらく身を寄せていた。
長いような短いような時間がたち、音が止んだ。
俺たちは心の底からホッとした。
俺の腕の中で黒い狼が眠っていた。
後で聞いたところ、あの黒い化け物は
数度突撃して、破れないと知ったら
あっさりと帰って行ったらしい。
もう二度とこんな目には遭いたくない、
懲り懲りだと身に染みて思った。




