双子のさし飲み(1)
十月最後の金曜日、いつもよりも早めに仕事を切り上げる。この日は秋人の教員採用試験合格祝いをする約束をしていた。
たまには秋人と二人で飲むのも悪くないと思ったのである。何より、彼の本音が知りたかった。まずは生ビールで乾杯する。この時期にしては少し早いが、この日はもつ鍋をつつく。
十月も終盤に差し掛かると南国・鹿児島でもさすがに肌寒くなる。本州の人はよく勘違いしているが、九州にも冬がある。そして、雪も降る。ただ、他の地方よりも冬の訪れが遅く、春が来るのが早いだけだ。
いつだったか、鹿児島で十一センチも雪が積もった時に、新潟から来ていた同期が『ここは南国・鹿児島じゃないのか…』と言っていた。
ただ、宮崎だけは九州山脈と黒潮の関係でほとんど雪が降らない。九州で最も九州らしい気候なのは宮崎と言っても過言ではない。
おっと、話題が完全に横道にそれてしまった。今日は秋人と二人で教員採用試験の合格祝いをする日だった。
「秋人はさすがだな…。教員になるって決めてから、一発で教採合格するんだからな…。本当におめでとう! 大学も現役で早稲田に入ったし、本当に器用だよな…」
僕は開口一番で秋人を褒めちぎった。何より心より思っていることである。大学時代も今も、秋人は僕の先を歩き続ける。そうなったのはいつからだろうか…?
「いやぁ、ありがとう! 今日は珍しく穂高のおごりだから、たくさん飲むぞ!」
「珍しく…は余計だぞ! まあ、今日は二人で飲もう!」
「ところで穂高、俺は穂高こそ、うらやましいと思うな…。だって、もう結婚相手がいるし、来年の今頃は結婚式だろう? いいよな…。それにずっと、鹿児島にいるから顔が利くし…。ここの店だって、知り合いの店だろ?」
秋人がそんなことを思っていたなんて知らなかった…。確かに来年の今頃は結婚しているだろう。それに今日の店だって、学生時代のバイト先で知り合った先輩がやっている居酒屋である。
しかし、それは地元から離れずにいたら、自然と培われる人脈ではないだろうか? 近くにいる仲間を大切したいからこそ、穂高は鹿児島から離れること無く、これまでずっとやって来たのだ。




