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観覧車の結末は…

「あせらなくてもいいから…。落ち着いて…」


 美弥の一言でようやく落ち着きを取り戻した僕は、かまないように一つ一つの言葉を丁寧に伝えようとする。でも、緊張のあまりにうまく口が動かないので、再び深呼吸を二、三回した。落ち着け…、落ち着け…、多良木穂高!


「き、き、今日は、安物だけど…つ、つ、次はちゃんと、したの買うから…。き、今日はこれを…う、受け取ってください。け、け、結婚してください!」


 かみ過ぎだろう…。何で、もっとかっこよく言えなかったのか…。トホホ…。でも、とりあえず言うべきことは言ったぞ。さて、美弥はどう言う返事をするのか…。言うのも緊張するけど、それ以上に返事を聞くことに緊張を強いられる。


「う、うれしい…。ゆ、夢みたい…。ありがとう…」


 僕は美弥の返事に安心して、一気に全身の力がぬけてしまった。ゆったりと体を観覧車の背もたれに体を預ける。美弥も緊張しているのか、やはりかんでいる。やはり、似た者同士だな…。


 美弥と穂高はお互いの感情があふれて、また言葉を失った。穂高が恐る恐る差し出したケースを美弥は震える手で受け取る。


「こ、こんな私でよければ、こ、これからもずっと、一緒にいてください…」


「き、九年も待たせて、ごめんな…」


 少しずつ落ち着いて来たのか、ようやく口が少しだけ滑らかになってきた。どちらも喉が渇いているのか、必死になって唾液で喉をうるおす。そして、なんとかして滑らかに話そうとする。


「ううん、いいの…。早速だけど、指輪をつけてもいいかな?」


「うん」


 美弥はそう言うと、穂高からもらった指輪ケースを開ける。それから、まだ震えの止まらない手で、左手の薬指に指輪をつけた。


「きれいねえ…。穂高、ありがとう…」


 僕は美弥のあふれんばかりの笑顔を見て、思い切って指輪を買って本当によかったと思った。美弥を見て、何度も頷いた。


「このまま、指輪つけて帰ったら、絶対に親に突っ込まれるな…。とりあえず、お互いの両親に挨拶を終わらせるまでは、家とか職場とかで付けるのは止めとこう…」


「そうだな…。次は挨拶に行かないといかんな…」


 そんなことを語っているうちに、あっと言う間に二〇分が経った。観覧車はすでに一周していた。


 それから、僕は美弥を家まで送り届けてから、幸せ一杯の気分で家へと戻った。こんなに幸せな気分になれたのは初めてかもしれない。

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