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秋人、二次試験受ける

 八月二五日、秋人が教員採用試験の二次試験を終えて戻ってきた。その日、僕は秋人にいろいろ質問した。来年こそは絶対に教員採用試験の一次試験を合格して、二次試験もその勢いで突破することを堅く誓った。


 もちろん、秋人から二次試験のことをあれこれ聞くのは屈辱以外何物でもない。何で、これまで何も苦労していないのに、一発で要領よく合格するのか? そんなに青年海外協力隊や海外の日本人学校の経験が偉いとでも…?


 いや、分かっているんだ。僕が忙しさにかまけて、きちんと勉強しなかったのがいけないことぐらい…。その証拠に、常勤講師をやっていてもきっちり一次試験を合格して、二次試験を受けている人もたくさんいるじゃないか…。


 それにしても、秋人の心の広さときたら…。一次試験の結果が出てからと言うものの、僕は秋人と挨拶すらろくにしなかったし、


「この一発屋目め、ちょっとは俺のことも考えろよ!」

「一次試験は要領よく受かっても、二次は知ってる先生のお力添えがモノを言うんだぞ!」


などとののしってばかりいた。こんなことしても、惨めになるのは穂高自身だというのに…。僕は本当に嫌な人間だ。それなのに、秋人はどんな質問でも丁寧に教えてくれた。実にしっかりした双子の弟である。


 僕は秋人に協力隊以外のことであれこれ質問するのは、最近では珍しいことである。水泳の実技では何も問題なく二五メートル泳げたことや、ピアノの実技ではもみじを弾く時に少し間違ったことなどを語る。また、面接で聞かれたことなども教えてくれた。


 秋人には、青年海外協力隊や海外の日本人学校での経験で培った事などを中心に質問されたようである。まあ、そこが秋人の売りであるので、そこを聞かれなかったら、自分からアピールしたと言っていた。やはり、海外に行くと人間が大きくなるようだ。


 秋人に対しても、こんな感じだから、彼女の美弥とも未だに仲直りできていない。一方的に切れた美弥もどうかとは思うが、その原因は明らかに穂高にあるので少しでも早く謝らないといけないのに…。


 あれから美弥に電話しても全く出てくれないし、メールも返ってこない。大学時代からの付き合いなのに、こんなくだらないことで僕らは終わってしまうのか?


 これからの人生で美弥のいない人生など考えられない。美弥を失うぐらいなら、くだらないこだわりを捨てた方がマシだ。たとえ、周りから女性に甘えていると言われてもいい。美弥と結婚してから、二人で教採合格を目指せばいいんだ。

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