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美弥、切れる!

「ああ…。また、ダメだったのね…。これでもう七回目よ…」


「……」


 お盆休みに鹿児島中央駅のスタバで美弥と会った。美弥はキャラメルラテ、僕はアイスコーヒーを頼んでから、空いている席に着いた。時期が時期なだけに店内は混んでいる。


 美弥は僕からの報告を聞く前から何となく分かっていたのか、結果を伝えてもあまり驚かなかった。まあ、落ちると自分から言い出しにくいから、それで分かるのだろう。


「これで結婚はまたお預けになるのね…。このままじゃ、私、待ちくたびれて、おばあちゃんになるんじゃないけ?」


 ああ、また始まったよ…。美弥はしばらくこらえていたせいか、これまでたまっていたものを吐き出すように熱く結婚について語りだした。こうなったら、しばらく止まらない…。


「そんな風に言わんでよ…。悪気があって落ちた訳じゃないし…」


「穂高は、いつも、そうやってごまかす…。ちょっと考えてみてよ。もし、穂高がもう既に正規の教員で、私がずっと臨採で毎年のように『正規の教員になるまで結婚は待ってくれ』と言われたらどう思う?」


 これはうかつに答えると危ない…。確かにその場合はきっと「そんなことは気にしなくていいから、結婚しよう」と言うだろう。ただし、それは男性が正職員の場合に限る。


 逆の場合は周りの目がかなり厳しいものになるだろう。だが、そのことをそのまま言えば、間違いなく美弥を怒らせることになる。


「どうして、答えてくれないの…?」


「だって、そんなこと、今まで考えたこともなかったから…。ちょっとぐらい、考える時間をちょうだいよ」


「はい、はい、わかりました。要するに穂高は私の立場とか、何も考えていないと言うことね。もう、いいよ…。これまで、待ち続けた私が馬鹿だった…」


「違う…。違うんだ…」


「何が違うって言うの?」


「正直に言うよ…。僕がどう思っているか…」


 僕は思ったことを正直に話すことにした。美弥のために、教採合格して正規の教員になってから…なんて言ったが、本当は自分のプライドが許さないだけなんだ。


 相手が正規の教員なのに、自分が臨採だから…。ただ、現実を受け入れられないだけ…。やっぱり、嫌なんだろうな…。自分がまだ期限付きの常勤講師なのに、妻が正規採用の教諭と言うのが…。


「やっぱり、そうだったんだ…。で、これから考えを改める気はないの?」


 ここで僕が頷いていれば良かったのに、僕は何も言えなかった。やっぱり、受け入れられない…。それを見て、美弥は切れた。急に彼女は立ち上がり、そのまま鹿児島中央駅の人ごみの中へ消えて行った。僕も慌てて追いかけたが、もう既に遅かった…。

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