教採一次試験
小学校教員受験者、約千百名が一同に水流丸高校に集まる。この年の募集予定人数は例年通りの百名前後であった。
倍率十一倍、ここにいる十一人に一人しか正規の教諭として採用されない狭き門である。
そのうち、この日の一次試験を合格するのは約二百人前後とされる。つまり一次試験で上位二百人に入らない限り、ずっと二次試験には進めない。そして、管理職のお偉いさんは決まってこう言う。
「一次さえ合格できれば、臨採の講師は勤務評価点がプラスされるから、どうにでもなる。でも、一次はどうすることもできない。下手な事をやれば、大分の二の舞になるからな…。まあ、せいぜい気張れよ!」
それができていれば、僕はもうすでに正規の教員になってますから…。○○校長、△△教頭。それと前任校でお世話になり、今は県教育委員会の人事課にいらっしゃる◎◎指導主事。ここには具体的な名前は書けないが、長い事臨採をやっているとコネはそれなりにできる。
ただし、向こうが僕を覚えているかどうかは、また別の話だが…。
しかし、その一次試験に受からないのだ。すでに僕は六回も採用試験に落ちている。今回、七回目の教採は何としても受かりたい。同じ会場には秋人もいる。
間違っても、秋人が一次試験にうかって、僕が落ちるようなことは絶対にあってはいけない。これ以上、美弥を待たせることもできない。今年こそ、教採に受かってプロポーズするんだ。
その意気込みがよかったのか、いつになく手応えはあった。まあ、毎年試験が終わるたびに「今年は今までで一番よかった」と感じるので、たいした根拠もないのだが…。
鹿児島県の教採は記述式のため、自己採点も思うようにできない。結局、一次の結果発表まで「一次は受かったもの」として、二次対策をするしかない。
二次試験は水泳とピアノの実技、集団・個人面接及び適性検査である。これから、結果発表までの約二〇日間は二次対策に追われることになる。
二次対策は全て夏休みの学校ですることができる。面接対策は○○校長のご指導を受ける。ピアノは音楽専科の☆☆先生に教えてもらう。水泳は夏休みの誰もいないプールで泳げば何とかなるだろう…。
まあ、ただ待っていてもどうしようもないので、やるだけのことをやって一次の結果を待つしかないのだ。




