表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

プロローグ2

感想等いただけると嬉しいです。

アルスナット王国。



初代国王の統治から千年も続く歴史を持ち、セラミアという国家と二分する形で広大な大陸に存在していた。



最初の百年程は異界から現れるという“魔物“の存在に危険に晒されることもあったが、それも後に“勇者“と呼ばれる剣士と、“勇者“が率いる者達の手で大本である空間の穴が塞がれた。

それからの七百年は国を統治する王家の者が短命という問題を抱えつつ隣国とも友好関係を築き、平和を謳歌していた。



だが、その平和も国王の暗殺事件をきっかけに一気に崩れていく。

もともと病気や事故などにより、呪われているのでは? っと言われるほど王家の血筋の者は短命であり、暗殺された王も過去には存在していた。

今回の暗殺事件も防ぐことは出来なかったが、犯人もまたすぐに見つかった。



シクル・クラムハイツ将軍。



国王直属の聖騎士団を除く王国の全騎士や兵卒を指揮し、率いる猛将であったが、短命な王家の人間や平和に溺れ弱体化していく騎士団の現状を憂い、会議の場においては出席した者達に直に不満や問題点をたたき付けたこともあり、王家や政治に関わる者達に睨まれていた。

故に今回の暗殺事件も見つかったというより、彼以外いないという結論が下された。

クラムハイツ将軍は関与を否定するも、しばらくして証拠を見つけたという貴族も現れたため、騎士団がクラムハイツ将軍を捕縛。国の外れにある監獄に幽閉することが決定した。



これで終わるならアルスナット王国はこれからも敵の居ない平和を過ごすことができただろうが……。





・――・――・――・――





「しっ……!」



一気に間合いを詰めたレオーネが雷光を纏った拳を繰り出す。

小柄な体格と高い運動能力は甲冑を纏い、動きが鈍い騎士の懐に飛び込める速力を生み出し、身体に見合わぬ膂力と電撃は堅い鎧を一撃で撃ち抜くパワーを持つ。



「ッ……!」



大気を灼きながら迫る拳をライディールは剣の腹で受けるが、凄まじい衝撃に歯を食い縛る。



「ふうっ! はあっ!」



レオーネの動きは止まらない。腰の回転も加えてのフックを一撃、更に二撃で相手の剣を跳ね上げ防御を崩し腹に拳を打ち込む。



「ぐっ……!」



「はあ!!」



「ッ……!」



身体をくの字に折り曲げ、大きく体勢を崩したライディールに、レオーネは小さく跳躍し、両手を合わせて上半身を反らす。そして勢いつけて両手を相手の後頭部頭に振り下ろし、ライディールを地面にたたき付けた。



「くっ……!」



「むっ……!」



強烈な衝撃を受けながらも即座に立ち上がるライディールにレオーネも追撃を諦めてバックステップ。



「はっ……!」



続けて回転しながら後ろに跳び、ライディールに向けて青い雷球を放つ。



「ッ……!」



高速で迫る雷球をライディールは横に身をずらして躱すが――――。



(もう一撃……!)



視界に新たな雷球を見たことでもう一度横に身を躱す。



(遅い……!?)



だが、その回避は一撃目よりも遅いスピードで飛んでくる雷球によりタイミングを狂わされ――――。



「ッ……!? がっ……!」



気が付いた時には一瞬で回避先に回り込んできたレオーネの振るう拳を胸で受ける羽目になった。



「ぐっ……!」



胸当て越しでも容赦なく伝わる衝撃に呻くライディールに構わず、レオーネがもう片方の手で相手の首をひっ掴んで地面に引き倒し――――。



「死ねっ!」



「ぐっ……ああああああっ!!」



首を掴んだまま放電。青い雷光がライディールの身体を走り回り、凄まじい激痛が襲い掛かる。



「ッ……!」



ある程度電撃を放ったところでレオーネが、ライディールの身体を引きずるように放り投げる。普段ならここまですれば大概の者は黒焦げとなっているのだが――――。



「ッ〜〜! まだだ!」



それでもライディールは立ち上がる。



(大した抵抗力ですね……! ここまでやって死なないなら……!)



立ち上がるライディールを見てレオーネは腕から雷を放電させつつ再度突撃する。



(また同じ攻撃……!)



突き出される拳を、フェイントも警戒しながら今度は正面から止めようせず、剣の腹で受け流そうとする。

だが、レオーネは安易な策は決して用いないタイプだった。

先までの攻撃が駄目なら――――。



「飛べぇ!」



より強力な攻撃を繰り出すことで突破口を開くタイプ。



「ぐっ……!」



拳が剣と接触すると空いていた手を突き出した腕に添え、放電状態から更に強力な電撃を放射。零距離から打ち込まれた電撃は剣を弾き飛ばすことこそできなかったものの、剣を持った腕ごと跳ね上げ――――。



「ふっ! せやっ!」



「っあ……!」



再びがら空きになった胴に右、左と拳のコンビネーションを叩き付け――――。



「はぁぁ……! でりゃ!!」



「ッ……!」



右腕を振り上げ放電。強力な電撃がライディールを捉え、身体を灼きながら空中に打ち上げた。



「ぐっ……はっ……!」



「止め!」



(追……撃……! まずい……!)



空から重力に引かれ落ちていくライディールに、先程飛ばした雷球を幾つも纏わり付かせたレオーネが腕を振り、雷球を放射。目映い光を放ってライディールが落ちてくる場所に向かっていく。



「ぐああああああああっ!!」



地面に叩きつけられた瞬間、特大の電撃が再度ライディールを襲い、身体を跳ね飛ばし地面に打ち付けた。



「遅いんですよ。致命的に」



倒れたライディールに、髪の乱れを直しながらレオーネが何の感慨も無く告げる。



「はぁ……はぁ……」



「おや? まだ立てるんですか?」



「……投降するつもりは……無いのか……?」



「……はぁ?」



息を整え剣を杖代わりに立ち上がりながらライディールは問うが、この状況下でなぜそんな事を聞いてくるのか解らないレオーネは首を傾げた。



「もうすぐ援軍も来るし、この場に居るのは僕だけじゃない。君だってずっと闘っていられるわけじゃないだろう?

だから――――」



「くだらない」



ライディールの言葉をレオーネは鼻で笑って遮った。



「援軍が来るのは貴方達だけじゃないですし、こんな状況になっても動かないそいつらが何かの役に立つんですか?」



そう言ってレオーネはライディールの向こうに居並ぶ騎士達に視線を遣る。



「ッ……!?」



武器を構え居並ぶ騎士達は確かに威圧感があるが、見た目小柄な少女に睨まれただけで狼狽える。



「くだらないこと言ってないで本気を出したらどうですか? それとも……聖騎士様ともあろう人がそれで全力とか言うつもりではないでしょうね?」



「もし……そうだと言ったら?」



「くだらないこと言ってないでさっさと死ね」



侮蔑……それを隠そうとしないでレオーネが告げる。



「そうか……分かった……」



その言葉を聞いてライディールは剣を杖代わりに立ち上がった。



「本当は……女の子相手にこんな事はしたくないけれど……」



「またくだらないことを……。中途半端なフェミニスト理論は嫌われますよ?」



「あぁ……その通りだ……。僕はそんな簡単な理想も満足に貫けない未熟者だ。

だから――――」



ライディールが剣を前に突き出す。



「本気でいく……! せめて自分の理想ぐらい貫き通せるようになるまで……それぐらい強くなれるようになるまで……死ぬわけにはいかない!」



突き出した剣に彫られた象形文字が淡い緑色の光を放つ。

そして――――。



「そのために……精霊よ……力を借りる……!!」



風が吹き荒ぶ。溢れた風は濁り、沈澱した戦場の空気を押し流した。



「そう……そうでないと……!」



吹き付ける風にレオーネが口端を吊り上げて笑い、その身体を青い雷光が包む。



「そうでないと闘いにならない! もう……こんなくだらない戦場に用は無い! ようやく闘えるんですから!!」



笑みを張り付けたままレオーネが走り出す。



「ッ……!!」



それを見たライディールもまた突き出していた剣を下段に構え直し、突進してくる少女を迎え撃つために走り出した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ