第5話 もう、間違えない
「そんなひどいっアネモネ、私達友達じゃなかったの……!?」
「どこが酷いのか分かりませんが、友達だったと思います。でも私にもやらなければならないことがありますし、ダリアさん、あなたもそうでしょう? それでは私は急いでいますので」
「ア、アネモネっ今日はお買い物行く約束だったじゃない!」
「そうでしたか? 私は欲しいものがないので失礼します」
そういえば買い物に行く約束をしていたかもしれない。買う物はなんだったか……授業で使うノートだったか、万年筆だったか忘れたけれど、お揃いで買いましょうと言われていた気がする。当然高い物は私が支払い……いや、すべて私が支払っていた。良く考えればおかしな話、どうして私がダリアに何か買ってあげなければいけないのか分からない。お揃い? 人と同じものを持つのは貴族界ではあまり良しとされないのに、どうして私はそんなことをしていたんだろう……。自分の愚考に頭が痛い。
「世間知らず過ぎたわ」
早くに亡くなったお母様。仕事に明け暮れたお父様……仲の良い令嬢はいなかった、それもいけなかったのだと思う。だから学園に通い始めて「お友達」になったダリアに傾倒……良いように使われていたんだ。
「もう、間違えない」
私は帰りの馬車の中で決意する。あんな未来絶対に回避するんだ。
「アネモネ……ナルク君とデニス家についてまだ調査一日目だがとんでもない報告が上がってきた」
「やっぱりですか」
学園から帰るとすぐにお父様に呼ばれた。執務室で待っていたお父様の顔色は悪く、そしてたった一日しか調べていないという割に調書はとても分厚い。
「ワシは今までナルク君やデニス家の何を見ていたのだろう……情けない限りだ。それと……」
「私の調書もあるのでしょう? 申し訳ございません、お父様。私も公爵家の者としておかしな振る舞いばかりしていました……今、取り返すべく改めている所です」
「……うむ。そうだな」
今まではダリアに合わせていた、そんなんじゃ駄目なんだ。そしてナルク様……もうあんな男、呼び捨て手で十分だわ!
「それにしてもナルク君との婚約解消か……相手がゴネそうだ。デニス家への融資の分も考えると難しそうだ。このまま結婚して我が家で鍛え直した方が早いのではないか?」
「絶対に嫌です。今でも何人の令嬢と関係を持っているか分からない男ですよ? そんな奴を夫になんて絶対に嫌です!」
「うーむむむ……」
これだけは譲れない。ナルクに我がウィンフィールドの名を名乗らせる気はまったくないし、出来る事なら我が家に一歩も入れたくない。




