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からくり競艇人物外伝

からくり競艇人物外伝第2話:篠田篤編

掲載日:2026/02/03

大分支部の元ナンバー2で現在トップレーサーの篠田篤の昔話を書いてみました

本編もよろしくお願いします

外伝:『不敗の影、不滅のともしび

――大分・別府の静かなる反旗

別府の夜は、硫黄の香りと共に更けていく。

からくり野球、大分支部の専用ピットには、深夜まで金属音が響いていた。

「……まだ、ここが甘い」

篠田篤は、愛機の蒸気タービンの出力系統を微調整しながら、独りごちた。

昼間のG1レース。勝ったのは大峰幸太郎だった。観客は大峰の「日」属性の眩いマブイに熱狂し、その影で準優勝に終わった篠田を振り返る者は少ない。

大峰は太陽だ。その光が強ければ強いほど、隣に立つ篠田の影は濃くなる。

「俺はいつまで、あの人の背中を眺めているんだろうな」

そんな時、ピットの重い扉が開いた。

「篤、まだやっとったんか。お前さんは真面目すぎるばい」

聞き慣れた佐賀弁。大峰幸太郎だ。彼はタオルで汗を拭きながら、篠田の機体の横に立った。

「大峰さん……。勝者はさっさと祝杯を挙げに行けばいいでしょう」

「ハハッ、弟子たちがうるそうて逃げてきたよ。……篤、お前のプロペラ(羽根)、少し見せてみ」

大峰は篠田のからくりに手を置いた。瞬間、彼の「日」のマブイが流れ込み、機体がわずかに震える。

「……鋭すぎるな。お前の『嵐』は、今は自分を切り刻んどる。もっと外を、仲間を見ろ。お前の風は、誰かを守るために吹く時、本当の力を出す」

その数日後、衝撃のニュースが走った。

『大峰幸太郎、佐賀支部へ移籍』

大分から、絶対的な太陽が消える。

支部内は動揺に包まれた。若手の深田あみや米沢かなは、不安げな表情で立ち尽くしている。

太陽を失った大分は、このまま沈んでしまうのか――。

移籍当日。大峰は私物を持たず、ただ一つ、古びた**「マブイ伝導率極振りの試作プロペラ」**を篠田に手渡した。

「これは俺の忘れ物だ。いつか俺を倒して、これをゴミ箱に捨てに来い。……大分を、頼んだぞ」

大峰が去った後の静まり返ったピット。

篠田は、不安そうに自分を見つめる後輩たちの前に立った。

彼の背中には、大峰から託された重圧と、それ以上の覚悟が宿っていた。

「……あみ、かな。顔を上げろ」

篠田が初めて、リーダーとしてマブイを解放した。

それは大峰のような眩しい光ではない。低く、重く、しかし力強く周囲を包み込む**「嵐」の予兆**だった。

「俺は大峰さんの代わりにはなれない。だが、お前たちが泥をすする時は、俺がその隣でそれ以上の泥をすする。大峰さんが作ったこの場所を、俺たちの手でもっと強くするぞ」

篠田のマブイが、初めて「誰かのため」に渦を巻いた。

大分の「影のNo.2」が、不敗の覚悟を宿した「嵐のリーダー」へと変わった瞬間だった。

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