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第6.5話 セリシール、魔王討伐前
魔王討伐を果たす数ヶ月前、セリシールは1人雪山の洞窟で暖を取っていた。
焚き火の炎は枯木をパチパチと弾き、不安定に揺らめいている。
「寒いなぁ、お腹すいたなぁ、疲れたなぁ……」
4人パーティで王都を出発したセリシールだったが、メンバーの暴走や力の格差により旅の途中で解散。
セリシールは1人で魔王討伐の道を歩むこととなった。
それからというもの、セリシールの独り言は徐々に増えていくようになった。
「グランバル王国では嫌なこともあったけど、聖国の猊下は優しかったし、ジンクさんも……」
まさかあんなことしてくれるなんてなぁ……と少し前の出来事を思い出し、セリシールはくすくす笑う。
「魔王を倒したらどうしようかな、すぐジンクさんに会いたいな。なんて言ってくれるかな?」
お疲れ?よくやった?ジンクさん感情薄いからなぁと、うんうん考える。
「でもーー」
膝を抱え、膝に額をつける。
瞼が重く、焚き火の音が遠ざかっていった。
「おかえりって言ってくれたら嬉しいな」
たった1つの願望を呟くと、セリシールは眠りに落ちてしまった。
魔王を倒せなかったときのことは、あえて考えなかった。




