行道尚書が皇帝へ上げる報告文
見難い火傷の子615
行道尚書が皇帝へ上げる報告文
深淵ダンジョン第十七エリア、第四紀完新世層
鉄の時代
この地では、人を除く多くの生きものが八倍の大きさで生きている。
奉上
皇帝陛下 御前
臣、行道尚書某、謹んで奏上仕る。
このたび、臣が家門の者、玉玲が賊徒の襲撃を受け、危難に陥りしところ、
道中これを救援せし一団あり。
右の者ども、通称《爆炎》と称するSS級冒険者クランに属し、
その中核戦闘班たる爆炎パーティを中心とする者どもにて候。
当初、臣はこれを、武勇に優れた少人数の冒険者一行と見なし候えども、
実見ののち、その認識を改めざるを得ず候。
彼らは単に剣技・弓術・魔法・忍術・治癒に秀でたるのみならず、
極めて高き統率のもと、補給、警戒、設営、搬送、情報収集、
来客応対に至るまで、一体として運用される組織体に候。
まず、玉玲救援の折においては、少人数をもって賊徒を迅速に制圧し、
門前に迫りし残党をも掃討せり。
その戦いぶりは、個々の武勇もさることながら、互いの連携に寸分の乱れなく、
常の冒険者の域を超えたるものに見受けられ候。
さらに、臣が家に客として迎え入れ、内々に観察する機会を得たるところ、
彼らの全容はなお一層、尋常ならざるものと判明仕り候。
中核戦闘班のほか、執事・運用工兵を務むるノクス隊、
戦闘と護衛を兼ねるメイド小隊たるルナ隊、調理・保存・補給を担うコレット隊、
上空監視を担うオートメガネウラ隊、
重量搬送および工兵支援を担うオートアースロプレウラ隊、
ならびに潜入・追跡・対人観測に長ずる空忍ワイバーン群を擁し、
これらが命令一下、混乱なく噛み合いて機能するを確認仕り候。
殊に注目すべきは、彼らが戦闘のみに偏せず、生活維持、兵站、警戒、
情報運用を自前にて完結しうる点に候。
これは単なる冒険者集団にあらず、必要に応じて独立して長期行動しうる、
高機動の組織戦力と申すべきものに候。
また、彼らの語るところによれば、帝都へ向かう目的は、
軌道敷設許可の件につき、陛下へ願い出るためとのことに候。
この件、臣は軽々に断ずるを避け候えども、少なくとも彼らが空論を弄する者にあらず、
人員、物資、統率、継続運用のいずれにおいても、
相応の実行力を備えたることは疑いなきものと存じ候。
ゆえに、もしその構想を御前にて述べる機会を賜るならば、
単なる奇説として退けるべき相手にはあらず候。
もっとも、同時に申し上ぐべきは、その独立性の高さに候。
彼らは外部補給や外部警備に大きく依存せず、
自前の戦力・兵站・情報網をもって行動しうるがゆえ、
これを軽んずるは危うく、また一地方勢力の尺度のみをもって測るべきにもあらず候。
友として遇すれば頼もしきことこの上なきも、もし敵対するに至らば、
その脅威また小さからざるべしと愚考仕り候。
なお、今回の襲撃につきては、単なる街道賊の狼藉として片づけ難き節あり。
彼らが帝都へ向かう途上にて、かかる襲撃を受けしことは、偶発にあらず、
何者かが移動または目的を察知していた可能性を疑わせ候。
臣はすでに捕縛せし賊徒を分離拘束し、内外の関係を洗わせており、
追って判明せしことあらば、改めて奏上仕る所存に候。
以上をもって、臣が実見せし《爆炎》の一団につき、率直なる所見を申し上げ候。
これを一言にて申さば、彼らは「強き冒険者」にはとどまらず、
生活・兵站・警戒・情報を一体として備えたる、独立運用可能の組織体に候。
ゆえに、玉玲救援の恩義を離れてなお、帝国として一度は正面より見定むべき相手と存じ奉り候。
恐惶謹言
行道尚書某
謹上




