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見難い火傷の子  作者: 清風
177/185

シュメールのモルグ街で聞こえた脈動

挿絵(By みてみん)

見難い火傷の子177


シュメールのモルグ街で聞こえた脈動


――青銅の時代。

深淵ダンジョン第十六エリア、第四紀完新世エリア。


この地では、生物すべてが八倍サイズで存在する。


焼却前夜。

空は銅の色をしている。


防疫クラブの灯りは、塔ほどの高さから降り注ぎ、

死のエリアを青白く舐める。

下級官吏は粘土板を確認する。


「区域コード:N-72。

生命反応……検出ゼロ。

異議の粘土板……未処理一件。だが、優先度は最下位。」


シュメールの管理局――

巨大なジッグラトの中枢は、静かに脈打っている。


モルグ街の底


アコードはしゃがみ込む。


積み上げられた死体袋は、象の胴ほどもある。

死体袋に刻まれた印。シュメール法典に基づく書込。


「違反確認」「消滅処理」「焼却許可済」


だが――


泥の奥で、

かすかな震え。


それは音ではない。


拒絶されながらも消えきれない意志の振動。


顧問(王)の視線


王は言う。


「焼却は秩序を守る。

だが秩序は、生を守るためのものだ。」


下級官吏は戸惑う。


「しかし規定では――」


「規定は墓標ではない。」


王の指が一つの粘土板に触れる。


未処理。

キュー内。


完全消去されていない。


泥の中の指


死体袋が、わずかに動く。

ジッグラトの脈動が、わずかに乱れる。


焼却炉の炎はまだ点いていない。

アコードの喉が、かすかに鳴り、囁く。


「まだ……温かい。」


その震えは、かつて自分が否定された夜の鼓動と似ていた。


防疫クラブの一人が息を呑む。


「生存判定、再確認を。」


管理局の奥で、

歯車がひとつ逆回転する。


胎動


それは復活ではない。

まだ。


だが――


“ゼロではない”という揺らぎ。


シュメール法典の中で、

一粒のノイズが、波紋になる。


王は背を向けながら言う。


「死にきれぬものを、死者とは呼ばぬ。」

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