冒険者高校の紙作りクラブ
見難い火傷の子174
冒険者高校の紙作りクラブ
――青銅の時代。
深淵ダンジョン第十六エリア、第四紀完新世エリア。
この地では、生物すべてが八倍サイズで存在する。
冒険者高校の授業は過酷だ。
なにせ、記録媒体が粘土板。
教師は黒板に文字を書き、生徒はそれを写す。
だがそれは“筆記”ではなく“彫刻”。
文字を掘り起こす作業だった。
現代のノートとは違う。
削り、刻み、乾かす。
時間も労力も、桁違いだ。
通学もまた労働。
水と粘土粉を運び、板を自作するところから始まる。
背宇土の学生鞄は、もはや建材袋に近い。
転入生プリウス(元貴族学校)は当然のように粘土板を持参する。
「重いよ。それが無にか?」
それが常識だった。
しかし――
冒険者学校組のスバルが差し出したのは、
薄く、軽く、折れるもの。
紙。
冒険者高校・紙作りクラブが生み出した新素材。
エジプト文明のパピルスとは異なる、
紛れもない“紙”。
風化し、消え、歴史から姿を消した技術。
証拠が残らねば、後世の学者は「無かった」と言う。
だが、真実はその時代を生きた者だけが知る。
紙の登場は文化を変えた。
粘土板新聞は姿を消し、
シュメール王国のメディアは紙へ移行する。
情報は軽くなり、速くなり、広がった。
もしこの紙が後世に残っていれば――
紙の発明者はシュメールだったかもしれない。
最後は、残った者勝ち。
※空想小説であり、史実とは関係ありません。




