信頼性共和国
見難い火傷の子139
信頼性共和国
深淵ダンジョン
第十二エリア
白亜紀エリア
恐竜の時代
※深淵ダンジョン第十二エリア。
貝、魚、両生類、爬虫類、竜脚類、獣脚類、剣竜類、鳥類、哺乳類、海棲爬虫類、無脊椎動物、翼竜、昆虫。
そのすべてが“8倍”の世界。
ティラノ(サウルス)国の隣に、かつてタルボ(タルボサウルス)王国があった。
今は、公共秩序国――信頼性共和国と呼ばれている。
旧タルボ王国の国王は、気分で法律を変えた。
自分の都合が法律だった。
法の構造はなく、ただ王の感情だけがあった。
国民の不満は臨界点を超え、革命が起きた。
タルボ王家は一族郎党、ギロチンにかけられた。
その後に作られた新政権。
それが、信頼性共和国である。
――この国には、法が存在する。
条文は整っている。
理念も、美しい言葉で書かれている。
だが住民は、自分が何を違反したのかを知らされない。
理念憲章
本国は、
すべての民が自由かつ安全に発言できる
公共の広場を守ることを目的とする。
行動規範法
・不適切な表現を禁ず
・公共の混乱を招く行為を禁ず
・誤解を生む言動を禁ず
・信頼性を損なう存在を排す
執行機関
・自動審問局
・秩序監査機構
・無名の審判者
そこに、人はいない。
顔も、名前も、責任もない。
あるのは、判断だけだ。
「自由な発言を守るために、発言を奪う」
国民は告げられる。
あなたは自由な会話を妨げる可能性があるため、
発言権を停止します。
事由は「安全」。
法治国家である。
だが違反内容は非公開。
裁判はない。
証拠も示されない。
弁明の場は与えられるが、結果は変わらない。
異議申し立ては、受理された。
しかし、判断は変更されない。
義務は課される。
権利は剥奪される。
税は取られる。
登録は解除できない。
退出すれば「逃亡者」と記録される。
国民は気づき始めていた。
この国が守っているのは、自由ではない。
「信頼性」という名の沈黙だ。
だから、人々は逃げた。
国家の矛盾に気づいた者から、静かに姿を消していった。




