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ねこの手、貸します。 冬  作者: 白月 仄
にゃん二章 クリスマスシーズン!
9/12

にのに

 ──十二月の三週目。

 平日は普段と変わらず、俺は大学に行って講義を受け、宿題が出たときは宿題のレポートや論文の内容を如何するかに頭を悩ませてながら、大学を後にする。

 それが何時ものこと。

 そんな週半ばのある日のこと。

 今日は宿題も課されておらず、下宿先に帰ろうした矢先。因みに、ちゃんと大学に友人はいるが、平日は友人たちとは滅多に連まない。何しろ、基本、平日は帰るとねこカフェのバイトがあるので。

「──ねえねえ、彼氏君♪」

 声を掛けてきたのは俺の彼女。

 大学に入って直ぐの春に告白されて付き合うようになった。

 さて、ここで彼女の事について少し語らせてもらうと、彼女は俺の幼馴染みだ。小中高そして、現在の大学まで同じ。

 俺としては彼女の事は春に告白されて付き合うようになる前までは、“ずっと親友”だと思ってた。

 なにしろ、高校の時に仲間うちで恋バナになった時、彼女が「好きな人はいるよ。」と言った時に俺と目が合ったが彼女の表情かおに変化はなかったし、“好きな相手にどういう風に告白したらいいか”の相談もされたりしてたから、俺は気付くこと無く親友として接し続けた。

 それが、まさかまさかの大学が始まって直ぐの午後。大学のキャンバス内にある“縁結びの御利益がある伝説の樹”の下に半ば無理矢理引っ張れて行き、その場で告白されたのだ。

 最初は冗談かと思った。なにせ、場所がよくある“恋がかなう伝説の樹の下”なのだ。況してや、俺は彼女のことを恋愛の対象として認識していなかった。

 だから、笑い飛ばそうした、「なに、冗談かましてるんだ」って。だが、出来なかった。

 なにしろ、彼女の眼は()()だった! 故に、即答はせず、一晩熟考した末に決意して、彼女の告白を受け容れ“親友”から“恋人”になったのだ。

 さて、話を現在に戻すと、

「ん、なんだ?」

 彼女の方へと向き直る。

「今度の日曜日の夕方から夜、予定、空いてるかな?」

 ──日曜の夕方から夜か……。

 俺は予定があったか思い返し、答える。

「ああ、空いてるよ。」

「……よかった♪ じゃあさ、『マイムランド』行こ♪」

 『マイムランド』──ここ清美きよみ市にある清美グランドパーク内にある年中無休の室内遊泳施設。

「…………あー、『マイムランド』なら、“土曜日の午後に行く予定”だろ?」

 そう、彼女と今週の土曜の午後に『マイムランド』でデートの予定なのだ。もしかして、デートの日時の変更だろうか?

「……実はね、じゃーん♪ なんと、今度の日曜の夜の『マイムランドのプライベートエリア』の予約の抽選に当たったのよ!」

「──マジか!?」

 『マイムランドのプライベートエリア』──利用するには前以ての予約が必須かつ、他の客が入ってこないエリアという文字通りの『プライベートエリア』。当然、利用料金はそれなりに。

 さらに、今月は“クリスマス特別サービス仕様”で、予約は厳正な抽選で、当然、利用料金も特別サービスに見合ったプレミアムなんだとか。

 彼女が手にするケータイの画像には確かに『マイムランド』のホームページが表示されており、“おめでとうございます! 抽選に当選しました!!”の文字がテカテカと輝いていた。

「んじゃ、土曜日のデート予定を日曜日の夕方からに変更だな。」

「違うよ。」

「はい?」

「土曜の午後にも行って楽しんで、翌日の日曜の夜にも、二人っきりでしっぽりと愉しも♪」


 彼女とのデート予定が追加され、“金、大丈夫だったかな?”と考えながら、『下宿先』に帰り着いた俺。

 鞄を自分の部屋に放り込み、手洗いうがい等を済ませ、ねこカフェの店員の証であるエプロンを身に纏って『お店』に出る。

 春は客がまばらだった『ねこカフェ』。

 季節が進む度に客は増え、更に店員も増え、更に客も増え……と、実は春頃は“楽なバイトだな”と思っていたが、いまや大忙しだ。

 客の大半は学校帰りの高校生たち。

「いらっしゃいませ」

 メイドさんを彷彿させるような水色の『ねこカフェ』の制服に身を包んだ歌音ちゃんが新たな客を迎える。

 因みに、歌音ちゃんはまだ中三。当人は「お手伝い」と言っているが、『ねこカフェ』の閉店時間まで“手伝って”いてイイのだろうか? 閑話休題。

 さて、店内を見渡すと、カフェカウンターの内側にはマスターがコーヒーを淹れている。このマスター、今年の夏に逝去された近所にあったコーヒーショップのマスターと瓜二つで、なんでも当人は“「自分は『付喪神』ですので……」”と言っていた。

 次に俺と同じく店員のエプロンを身に着けている日立さん。先月から住み込みの店員──マスター見習いとして雇われた。

 歌音ちゃんと同じ水色のメイドさん風の『お店』の制服に身を包んだカレンちゃん。俺と同じく下宿人兼アルバイトだが、俺より年下なのに働き者で『街の何でも屋』の方もすげー頑張ってる。

 そして、『ねこカフェ』で働く店員の最後は店長の音恋さん。平日は『街の何でも屋』の方の依頼は少なく、よく“客が猫たちと戯れる『にゃんこルーム』に入り浸っている”。いいのか、それで……?

 俺はマスターが淹れたコーヒーと客が注文したケーキをトイレに載せて、それを持って客の待つテーブル席へ。

「お待たせしました」

 トイレからテーブルの上へ注文の品を並べ、客に一礼して下がる。

 しっかし、『ここ』ねこカフェなのに、普通のカフェとして利用する客もそれなりにいる。夏にマスターが入ってからは前述した閉店してしまったコーヒーショップの客も来るようになって、それが顕著になった。

「──店員さーん!」

「はい、ご注文でしょうか……って!?」

 客からの呼び声に応対に向かうと、そこには、

「……なんで、いるんだ?」

「その言い方は、ナシだと思うな、彼氏君。」

「……いや、そうは言っても……」

 大学からの帰り道の途中で住んでるマンションの方へと帰っていったはずの彼女だった。

「……『ここ』に来るなら、一緒でもよかったんじゃ……?」

「そこは、ほら、アレよ。私、彼氏君の彼女だし、彼女同伴で帰宅とか、店長さんたちに色々と誤解されちゃうとか……」

「いやいや、そういうの多分無いし……」

 店長たちが勘繰るとかはまず無い。半年以上共同生活していれば同居人の大まかな為人ひととなりは知れるので、これは自信を持って言い切れる。それに、彼女のことは夏に音恋さんたちに紹介して顔合わせもした上、彼女はちょくちょく『ねこカフェ』にも来てるので音恋さんたちとは顔なじみだ。音恋さんたちが今さら誤解するようなことはまずないと改めて言い切れる。大切なことではないが二度言ったぞ。

「……そ、それで、お客さん、ご注文は?」

 ふと、周囲の好奇の視線が気になって態度を店員として正す。

「……あ、……えーと、じゃあ……──」

 彼女の方も、好奇の視線に気付いて態度を改めた。

 しかし、周囲の青春真っ只中な女子高校生たちは俺たちをチラチラと見てきては色々と妄想して仲間内で囁き合っているのだった。



「──それじゃ、詩音さん、俺は彼女のことを家まで送ってきますので。」

「おう。青年、気を付けてな。」

「はい!」

 『ねこカフェ』の営業時間が終わり、今日のバイトもこれにて終了し、皆で晩ご飯を食べた後。

 彼女はコーヒー一杯とケーキを二ピースだけで閉店時間まで居座り、何故か『ねこカフェ』の清掃を手伝って、ちゃっかり晩ご飯を相伴したのだった。

「詩音さん、皆さん、ご馳走さまでした。」

 彼女は詩音さんと皆に会釈。

 彼女が顔を上げたの確認して俺は玄関のドアを開け、俺たちは夜の帳に覆われ更には雪が降り出した外へ。


 彼女の住んでいる賃貸マンションまでは『お店』から徒歩で二十分ほど。

 道沿いに建ち並ぶ家屋から漏れ出た明かりと街灯が雪降る夜道を照らす。

 しんしんと降る雪は人工の光を反射し夜闇に煌めく。

「──クシュンッ!」

「ほれ。」

 今日の朝から夕方までは小春日和で雪が降るとは想定していなかった彼女の防寒は薄く首元の肌が露出しており、彼女はくしゃみをした。そんな彼女に俺は自分の首に捲いていたマフラーを彼女の首に捲く。

「あ、ありがとう」

 愛おしそうに俺が捲いたマフラーをモフる彼女。

 その仕草に可愛らしいやら嬉しいやら気恥ずかしいやらで顔が熱くなる俺。

 しばらく無言で雪降る中を並び歩く。

 実に心地の良い無言の間。

 改めて、“無言でも気不味くならない”、これがリア充というヤツなのだと実感する。

 そんな事を思いつつ、俺は彼女を自宅マンションまで送り届けるのだった。



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