いちのさん
カレンちゃんと歌音ちゃんが迎えに来た希ちゃんたちと一緒に学校に行き、大学生さんも大学に行ったあと、『お店』のみんなで朝食の後片付けをし、『お店』の開店準備にと取り掛かります。
店長の音恋さんは相も変わらず『ねこカフェ』のにゃんこルームの開店準備は1人で行い、メェ~君とマスターさんはカフェのフロアとカウンターを綺麗に、副店長の詩音さんとアタシは『お店』の方の応接セットや受付兼レジカウンターを綺麗にしたりと、着々と開店準備をすすめます。
──コロンカラン~♪
「おはようございます、今日の分のケーキをお届けにきました」
『お店』の開店にはまだ若干早い時刻。
ドアベルを鳴らして『お店』の中へと入ってきたのは清美市の東地区にてケーキ専門店『Melodia』を構えるオーナーパティシエの月池 よくるさん。
よくるさんのお店と『ウチ』のねこカフェは提携していて、ねこカフェのメニューとテイクアウト販売で『Melodia』のケーキを取り扱っている為、毎朝、『Melodia』の店員さんが、ねこカフェで提供する分のケーキを配達しれくているのです。
「おはようございます、よくるさん。いつも、お世話になります」
「おはよう、メアリちゃん。いえいえ、こちらこそ、『にゃんてSHOP』さんと提携して売り上げ倍増・お客さんも増えて、平日でも街の皆さんに私たちが作ったケーキを気軽に食べてもらえるようになって、万々歳なんですよ」
「へぇー、そいつはよかった。おはよう、よくるさん」
「ええ。おはよう、詩音君。ホント、音恋ちゃんから提携の話を受けたときは驚いたわ。それに、正直言っちゃうと、ここまで反響がでるなんて思ってなかったの」
「ふっふっふ……、私の先見の明をもう少し評価してもいいじゃないかな、よくるちゃん。あ、おはよう。いつもケーキありがとうね♪ おかけで『ウチのねこカフェ』も大繁盛しちゃってるわ」
「おはよう、音恋ちゃん。えー、でも、音恋ちゃんの先見の明で巧く行ったのってハーフハーフの丁半博打だったじゃないかしら?」
「それは過去の話よ、よくるちゃん。今年に入ってからの私の先見の明は──ねこカフェのオープン・新たに店員の雇用・よくるちゃんのお店と提携、と──冴えまくっていて悉くが巧く行ってるわ。」
気付けば、音恋さん──店長もにゃんこルームの開店準備が整え終えたようで、アタシと詩音さん──副店長がいる『お店』の受付カウンター前に来ています。
「音恋さん──じゃなかった、店長、カフェフロアの開店準備、大方完了しました」
「そう、了解」
「あら、鳴君、おはよう」
「あ! よくるさん、おはようございます」
開店準備が整ったことの報告とともにメェ~君までもが『お店』の受付カウンター前にやってきます。
そして、受付カウンター前にやってきたメェ~君に、
「はい、鳴君、今日の分のケーキよ」
「はい、確かに、受け取りました」
よくるさんは手に持った『Melodia』のケーキが入ったクーラーボックスを渡します。
ケーキの入ったクーラーボックスをよくるさんから受け取ったメェ~君はカフェフロアへと取って返し、カフェのカウンター内で食器や器具等の手入れをしているマスターさんの手を借りてクーラーボックス内からケーキを業務用冷蔵庫や冷蔵機能の付いた陳列ケースの中へと移していきます。
「ところで、音恋ちゃん。ちょっとお願いしたいことがあるのだけど、いいかしら?」
「ん、何?」
「このポスター広告を音恋ちゃんの『お店』に貼ってもらってもえるとありがたいのだけど……」
そう言って、よくるさんが取り出したのは、美味しそうなクリスマスケーキの写真の上に“『Melodia』のクリスマスケーキ、予約受付中”の文字がデカデカと書かれたポスター広告。
その“ケーキの予約”を宣伝するポスターを店長は矯めつ眇めつ眺めてから、よくるさんから受け取り改めて隅から隅までポスターを眺め、
「いいわよ。それで、このポスターを『お店』に貼るだけでいいの?」
よくるさんの言葉に続きがあることを察して促します。
「ありがとう、音恋ちゃん。うん、それでね、申し訳ないのだけれど、『こちら』でもクリスマスケーキの予約と受け渡しを請けおってもらえないかなって」
なんとなく、よくるさんが取り出したクリスマスケーキ予約のポスター広告を見たところで、アタシにも予想が付いたよくるさんの“お願いしたいこと”。
そんな、よくるさんの“お願いごと”を店長は、
「そうね……、コレくらいでどうかしら?」
両手の指を使って数字を提示します。って!?
「ええー!? 音恋ちゃん、依頼料取るの!?」
「おいおい、音恋、よくるさんとこと『ウチ』は提携してるんだから、そんなガメツいこと言うなよ……」
「『そうだぜ、猫女。親しき仲にも礼儀あり、つっても、流石にソレは無いぜ』」
いつの間にやら、『お店』の方に出て来ていたペンギンが会話に加わり、それに気付いたよくるさんは、
「あら、ギーペさん、おはよう。いつも綺麗な羽艶ね」
「『おうよ、おはようさん、よくる』」
ペンギンの事を『ギーペさん』と呼んで挨拶を交わします。
っていうか、『ギーペさん』とかペンギンを“さん”付けで呼ぶ人はアタシが知る中でよくるさんだけ。
いったい、ペンギンの何処をどう見れば“さん”付けで呼ぶに価するのだろうか?
「『かー、分かって無ーな小娘は。オレ様のぷりちーさだけでも“さん”付けして呼ぶには十二分なんだよ』」
……うわっ……、なにそのドヤ顔……。
ペンギンのドヤ顔に辟易していると、
「あらあら、メアリちゃんとギーペさんはとても仲良しなのね」
「ちょっと、よくるさん、アタシがペンギンと──」
「『そうだぜ、よくる、オレ様と小娘が──』」
「仲良しとか──」
「『仲良しとか──』」
「──ありませんから!」
「『──ねぇーから!』」
「ほら、息がピッタリで仲良しじゃない。それに、ギーペさんが人の考えている事が分かっちゃうのって、波長が合う──所謂、馬が合うからって以前に仰ってたじゃないですか」
へえ~、そうなんだ。って!?
えー!? アタシとペンギンが馬が合うとか、マジ無いんですけど……。
「『……おい、小娘、何だ、その反応は?』」
……あー、そうだった。ペンギンにはアタシの考えている事が読めちゃうんだった……。
そんな、ジト目で見詰めて文句を垂れてくるペンギンにアタシは辟易(2回目)。
「『チッ。オレ様とて、小娘と波長が合うとか、辟易ものだ』」
「まあまあ、ギーペも嬢ちゃんも、そう顰め合うなよ。仲良くいこうぜ」
「そうよ、きびちゃん、いくらギーペがムカつくからって真面に相手してたらバカを見るだけだから、テキトーに受け流すのが一番よ」
「『あんだとー、猫女!』」
「はいはい、脱線は一旦ストップして話を戻すぞ」
副店長と店長の取りなしでアタシとペンギンの諍いが終息しかけたところで、なし崩し的に今度は店長とペンギンの諍いに突入するところを副店長が割って入って止めに。そして、脱線前の話といえば、
「さて、音恋。改めて言うが、よくるさんのとこと『ウチ』は提携してるんだし、それにテイクアウト販売の方じゃ、此れ迄だって普通に『Melodia』のケーキの予約と受け渡しをしてたじゃないか。今更になって依頼料を取るとか──」
「…………わ、分かってるわよ。冗談よ、冗談。そんなワケないじゃない。まったく、みんな真に受け過ぎなんだから……」
副店長の指摘に店長は先のは冗談だったと明かします。その店長の言葉によくるさんはホッとしたようで、
「もう、音恋ちゃんったら、たまにウソか本気か判らない事を言うからビックリしたじゃない……」
「いやー、ゴメンゴメン。つい、ね」
胸を撫で下ろし、そんなよくるさんに向けて店長はゴメンねポーズをしながら謝ります。
「店長、カフェの準備オッケーです」
そこへ中身のケーキを移し終えて空になったクーラーボックスを持ったメェ~君が開店準備完了の報告と共に戻ってきました。
「ん。了解」
メェ~君の報告に店長はひとつ頷くと、
「さあ、今日も元気一杯、頑張っていきましょう!」
「おう!」
「はい!」
「ああ!」
「ええ」
「『おう!』」
『お店』を開店します。
ちなみに、
「それじゃ、クリスマスケーキの予約取り、よろしくね~♪」
よくるさんはメェ~君から空のクーラーボックスを受け取ると、店長に念を押してから『Melodia』へと帰っていきました。




