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ねこの手、貸します。 冬  作者: 白月 仄
にゃん一章 時の旅人(?)
2/12

いちのいち

 ──登場人物紹介──


ひびき カレン

『にゃんてSHOP』の下宿人でアルバイト店員。本業は星御海学園高等部一年生。


 三章、語り部


・スミス メアリ/きび

『にゃんてSHOP』の店員。沢山の資格や免許を取得していることから「器用貧乏だな」ということでアダ名が“きび”に。


 一章、語り部


・青年/大学生

『にゃんてSHOP』の住み込みアルバイト。


 二章、語り部


日立ひたち なる

『にゃんてSHOP』と併設している『にゃんてSHOP・ねこカフェ』で見習いマスターとして雇われた。


詩音しおん音羽おとは りつ/副店長

『にゃんてSHOP』の副店長。たまに歌手活動もしており、曲の売り上げは上々。詩音しおんは芸名。


音羽おとは 歌音うたね

詩音しおんの妹で現在は中学生。『にゃんてSHOP・ねこカフェ』のフロア担当。


 ぷろろーぐ、語り部


音恋ねこ/店長

『にゃんてSHOP』の店長。部類のネコ好き。


・ギーペ

人の言葉を理解出来る謎のペンギン。代声機だいせいきという装着型機械を用いて人語を話す。


・みぃ

『にゃんてSHOP』の看板ねこ。“グレートにゃんこ”という突然変異の猫で体軀は雄牛ほどに大きく二足歩行が常。


・『ねこカフェ』のねこ達

『にゃんてSHOP・ねこカフェ』で飼われている十二匹のにゃんこ。


・マスター

『にゃんてSHOP』の近所にあったコーヒーショップのマスターの形見の珈琲器具から具象化した九十九神。


夢野ゆめの のぞみ

元気溌剌で面白そうな事が大好きな『にゃんてSHOP』アルバイト店員。星御海学園高等部二年生。下記の夢野 叶とは双子。


夢野ゆめの かなえ

内気で人見知り。趣味ではじめたフルートだったが、好きがこうじて弱冠十代にしてフリーのプロフルーティストに。『にゃんてSHOP』アルバイト店員。星御海学園高等部二年生。上記の夢野 希とは双子。





 “自称『タイムトラベラー』がやって来た”と、飛び込んできたペンギンを追って、アタシは“自称『タイムトラベラー』”が居る現場へ。

 場所は『にゃんてSHOP』──『お店』の軒先。

 そこには人集りが出来ていて、

「──私は時尾ときお 翔子しょうこといいます。

 お集まりの皆さん、私の話を聴いてください!

 現在いまから数年の後、世界は食糧危機に陥り、“『()()()()()()()』”が勃発するのです!────」

 その人集りの中心にいる人物が声高らかに“()()()()()()”を宣っています。

「『おい、小娘。いまの話を聞いただろ。あの女、言い方悪ぃが頭イカレてんぞ!』」

 確かに、ペンギンの言う通り。言い方は悪いですが正気を疑いかねます。

 そもそも論として“世界が食糧危機に陥る”とは到底思えない。何故なら、動物性食材の豚・鳥・牛の三肉はいまやブランド品を除きほぼ全てが培養肉だし、主だった魚介類の半数以上は完全養殖されているし、それ以外の魚介類も生態系保全を遵守した漁獲量に制限されている。穀物や野菜や果物は気候制御装置のお陰で安定して育成収穫が出来ており、ついでに来たるべき宇宙移民を見越しての工場内での大量人工栽培も軌道に乗っていると、先日のニュースでやっていました。

 それになにより、“『()()()()()()()()()()()()()』”のに、“『()()()』”があるワケないのです。

 故に、

「──すみせん、『店』先でそのようなお話を為れますと、近所迷惑ですので、余所に行っていただけませんか?」

 アタシは人垣を掻き分け前に出ると、先の荒唐無稽話をする人物に文句を述べます。

 ところで、荒唐無稽な話をしている人物、どの様な外見かというと、髪は黒の純和風で顔はそこそこ美形ながらも痩せ細り、身に着けいる服装はボロボロの宇宙服の様なもの。まるで、宇宙から命からがら還ってきた宇宙飛行士のようである。

「私の言っていることは嘘ではありません! 本当の事なんです! だから、────」

 ……これはまた、厄介なタイプ……。

「……あー、はいはい、分かりました。分かりましたから、その話は他の場所でしてください。」

 興奮する時尾と名乗った女性をアタシは宥めつつ、彼女の誘導を試みる。

「──本当なんです! この国は今は平和かもしれませんが、海外では現在も数十億もの人間が飢えに苦しんでいるんです!

 それに、アフリカ大陸は九十%以上が砂漠に呑み込まれ、難民がユーロや中東アジアに流れ込んで大問題に……──」

 しかし、時尾さんは頑として動こうとせず、先と同様の話を繰り返します。

「──それって、何世紀も前の話じゃね?」

「──そういえば、歴史の授業で習ったよね。」

「──そうそう。気候制御装置で北半球の気候を安定させたシワ寄せが南半球に出たとかで、南半球では人間だけでなく地上に生息していたほぼすべての動植物が生きていけなくなった。って、内容だったよね? それで、難民がユーロや中東アジアに押し寄せて大問題になった。だっけ?」

「──え? 『気候制御装置』? そんな“絵空事”な装置、在るわけ……──」

 ですが、人集りの中から誰かが時尾さんの話に疑問を呈し、その疑問に別の誰かが答え、その内容を耳にした時尾さんは驚愕に目を見開き、否定の詞を吐きます。

「『──在るぞ。普通にな』」

 時尾さんが吐いた否定の詞を否定するペンギン。

 ペンギンのその詞に反応して、視線をペンギンへと向ける時尾さん。

「……ペンギンが……喋……った!?」

「『ハッ! “時を越えてやって来た”という割に“オレ様が喋ったくらいで驚く”とは、化けの皮が剥がれたな、“似非時間遡行者”!

 おい、皆、聞け!

 此奴は大方、最近ワイドショーなんかで問題視されてる“キャラになりきれる”仮想空間没入型ヴァーチャルダイブゲームの被害者だ。

 好奇の目で見てやるな。ほら、散った散った』」

 ──お見事!

 さすがは口達者なペンギン。

 偶々、報道の話題に上がっている事柄を用いて、集まった人たちの関心を本質から背けてしまうとは。

 ペンギンの詞で一人また一人と興味を無くしこの場から立ち去っていく。

 ついには舌先三寸で人集りを解散させしまった。

「『フッ。誉めるな、小娘』」

 あー、うん。

 ──でも、舌先三寸で何とか出来るなら、アタシとかを呼びに来る必要なかったんじゃ……?

「『いやいや、小娘が似非時間遡行者に声を掛けたから、オレ様が口を挟み込む余地が出来たのだ。誇っていいぞ』」

 さいですか。

「──ところで、この人、どうしたらいいのかしら?」

 人集りは解散し、『お店』の軒先にはアタシとペンギン、そして、時尾さんが取り残されたのだが、ペンギンの方便で“自分の言っている事が妄言”と周囲に認識されてしまった時尾さんは茫然自失に佇んだままです。

「『……ま、取り敢えずは一旦『ウチ』で預かって、歌のにぃちゃんと猫女の判断を仰ぐのが妥当だろ』」

「そうね」



 ──自称タイムトラベラーの時尾さんを保護して小一時間後。

「──……なる程ね、これは頭の痛い案件ね……」

「……ああ、明日からクリスマスシーズンでクソ忙しくなるってーのに……」

 『お店』に帰ってきた音恋さんと詩音さん──店長と副店長に時尾さんの事情をペンギンと共に話し、返ってきたひと言がつい今し方の言葉。

 店長と副店長も、アタシとペンギンと同じく頭を抱える。

「──一先ず、此方のお嬢さんに現実の記憶を思い出してもらうのに、図書館にお連れしてはどうでしょう?」

 アタシを含めたみんながウンウンと唸る中、マスターさんが一案を提示。

「なる程! さすがはマスターさんです。」

「確かに、マスターの言う通り、“なりきり”の為に植え付けられた記憶を払拭するには、現実の記憶を呼び起こさせるのが一番だな。」

「『ふっ。オレ様も、マスターと同じ事を考えてたさ』」

 マスターさんの妙案にアタシと副店長は感嘆し、ペンギンは見栄によるデマカセを口にします。

「なら、決まりね。

 きびちゃん、悪いんだけど、彼女を図書館へ連れてってもらえるかしら?」

「はい、わかりました」

 アタシは店長の頼みに頷き、いまだ悄気たままの時尾さんを伴って、清美市中央区市立図書館へ。



 ──中央区市立図書館に着いてから早数時間。

 図書館に着いた時は『お店』にいた時と同じく意気消沈だった時尾さん。

 一先ず、アタシは彼女を閲覧用端末がある席に案内し、“現実の記憶が蘇るよう”大手の新聞のバックナンバー見せてみる事に。

 そうしたら、時尾さんは突如として目を見開き、夢中で新聞のバックナンバーを読み漁りだしました。。

 アタシはいまのところ時尾さんの保護を請け負っている状況なので、彼女の側を離れるワケにはいかず、新聞のバックナンバーを読み耽る時尾さんを見守り続けるのだった。



 ──更に数時間。間もなく、図書館が閉館時間を迎える頃。

「──本当、すみません。私のためにお手数おかけしまして……」

「いえいえ、色々と放って置けませんから。

 では、帰りましょうか」

「あ、はい」

 一区切り着いたようで、時尾さんはアーカイブされている新聞のバックナンバーを閲覧していた端末をオフにして席から立ち上がります。

 アタシも座っていた席から立ち上がると、案内カウンターにいる司書さんたちに会釈して、時尾さんと共に図書館を後にします。

 外は既に夜の帳に覆われ、空には星が煌めいていました。

「……この世界の空は、澄んでいるのですね。星があんなにも綺麗……」

「……時尾さんが知る空は違うのですか?」

 まあ、一応、時尾さんは自称タイムトラベラーだ。彼女の語っていた話によれば、彼女が居た世界では第三次世界大戦が過去に起こっていて、更に数年後には食糧危機で第四次世界大戦が起こるらしいので、見えた空も違うのかもしれない。

「……はい。私が元居た世界では、環境問題に目を向ける余裕も無いほどに世界全体が疲弊し荒廃していました。それ故に空も汚染物質に覆われ、一等星さえも見えないほどに空は汚れきっていたのです……」

「……ご、……それは、また……──」

 一瞬、“ご冗談を”と言い掛けましたが、時尾さんの横顔に自然と言葉は引っ込みました。

 それから、なんとなしな言葉を交わしながら、時尾さんと一緒に『お店』に帰りました。



 ──そして、店長──音恋さんの提案で、時尾さんの事は一時的に『にゃんてSHOP』で預かることに相成りました。



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