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ねこの手、貸します。 冬  作者: 白月 仄
にゃん二章 クリスマスシーズン!
10/12

にのさん

 ──週末の土曜日。

 今日の午前中はアルバイトだ。

 依頼の内容は“『真夏のクリスマス』の手伝い”。なんでも、現在いまじゃ人はおろか地上に生きる動植物が住めない南半球では、かつて人が住んでいた頃にはクリスマスは夏真っ盛りだったそうで、それを再現したイベントが『真夏のクリスマス』なんだと。

 この『真夏のクリスマス』が行われている場所はなんと──今日の午後に彼女とのデート場所である清美グランドパーク内の室内遊泳施設『マイムランド』。

 さて、俺ら『にゃんてSHOP』の面々の仕事は人員整理等の臨時の係員だ。

 冬本番な十二月にも関わらず、ここ室内遊泳施設『マイムランド』は満員御礼で人でごった返し状態。

 しかも、イベント『真夏のクリスマス』に因んで室内の温度は真夏日の三十度に設定されており、僅かな動作でも汗がふき出る。

 臨時の係員を仰せ付かった俺たちの恰好はアロハシャツに短パンとサンダルという、なんとも“真夏感満載”。

「『にゃんてSHOP』の皆さんたちはこちらのエリアを担当してもらいます。宜しくお願いしますね。」

「はい、分かりました。お任せください。」

 『マイムランド』のスタッフの説明に代表して詩音さん──副店長が応答。


 『俺たち』はスタッフに言われた担当エリアに赴き、係員としての職務に就く。

「──それにしても、プールに来たってのに、殆どの連中、遊ぶ気ナシね。」

「仕方ないよ。今日は前々から『マイムランド』がローカル局の番組のCMで宣伝してた“クリスマス大ビンゴ大会”の開催日だし……。」

 希ちゃんと叶ちゃんが、プールに浸かったり遊ぶ気配もなくイベントスペースの風景を映し出しているモニターに目が釘付けの客たちを睥睨。

 だが、然もありなんだと俺は思った。なにしろ、入場料大人一人二千円で海外旅行をはじめとした豪華景品が当たるチャンスがあるのだ。最も、ビンゴしてもその後の“ガラガラ”で引き当てないといけないワケだが。

 そして、“クリスマス大ビンゴ大会”が始まる!

 老若男女のいずれの客たちも入場時に受け取った自分のビンゴカードとイベントスペースで行われている抽選番号の発表を交互に見ては固唾を呑んで見守る。

 レジャー施設だというのに、賑やかな声は響かず静寂が場を支配する。

 イベントスペースでは五つ目の抽選番号が発表されるも、“「ビンゴ」”の声は何処からも上がらず。まあ、チラッと見た限りでは抽選番号の総数は九十九なので、速攻でビンゴするなんて余程の運がないと無理。しかも、ビンゴしても“ガラガラ”を回すというプラス運を大量に消費する二段構え。もし、速攻でビンゴしてガラガラで特賞を取るような人物がいたのなら、その人物はそこでプラスの運を使い切って、後に待ち受けるはマイナスの運──不幸のオンパレードになることだろう。

 そんな下らない事を俺が考えてる間に“ビンゴ”した客がチラホラと出て、イベントスペースでは番号の抽選を一時中断して、“ビンゴした客のガラガラ回し”が行われていた。


 それからアクシデントやハプニングにもなく『真夏のクリスマス! 大ビンゴ大会』は進み、『俺ら』が担当してるエリアでも、

「ビンゴ!」

「──お客様、ご確認させて頂きます。

 ……はい、確かに“ビンゴ”ですね。

 では、イベントスペースまでご案内致します。」

 “ビンゴ”した人が出て、その客のビンゴカードが不正なくビンゴした事を業務開始前に渡された端末で確認し、ガラガラがあるイベントスペースへと客を案内する。

 ちなみに、ガラガラの基本総数は五十。詰まりは、ビンゴした客が五十人出た時点で『大ビンゴ大会』は実質終了。もしくは、目玉である特賞から三等までの五本──特賞から二等賞までは一本で三等賞は二本──が全て出た時点で終了だ。

 既にガラガラは二等賞を除き当選者が出ている。それに、ビンゴした客の数も俺が案内している客を含めて計五十人を超えていた。

「──おっと、一気にビンゴ者数が二十人以上も出てしまった!

 だが、こんな事もあろうかと四等賞&五等賞の追加玉が用意してあるぞ!

 更に、残った二等賞が出たら、ビンゴしたのにガラガラを回せなかったお客様には特別に四等賞を進展しよう!」

 イベントの司会者が予め予想されていた想定内の事に声高々に補足説明をする。

 ま、五等賞の景品が“この施設の無料優待券数枚”で四等賞が“この施設の一年間パスポート”だ。なので五等賞と四等賞が増えても施設側からしたら出費は少ない。なにしろ、遊泳施設の年間の利用回数など遊園地等と比べたら高が知れているしな。


 そんなこんなで『真夏のクリスマス! 大ビンゴ大会』は無事に幕を閉じた。

 そして、午後になり、

「──先方から追加の報酬だ。“『マイムランド(ここ)』で今日一日の残り遊び放題”だ!」

「ま、それくらい当然よね」

「ボク、水着なんて持ってきてないよ」

「それなら、レンタルしましょうよ、叶さん!」

「アタシはパスで……──」

「──何言ってるのよ、きびちゃん。折角なんだから、遊びましょう♪」

「そうだぜ、嬢ちゃん。今日はもう依頼は無いんだし、息抜きは大切だぞ!」

 詩音さんの言葉に色めく皆。各々、詩音さんから渡された一日フリーパスを腕に巻き、水着のレンタルルームへ。

 俺は先日からの彼女とデートの約束をしていたので水着は持ってきている。なので、

「それじゃ、詩音さん、俺はこれで。」

 ここで、詩音さんたちとは別行動。

 しかし、そんな俺に詩音さんが待ったを掛けてきた。

「……おいおい、青年。“明日の夜も彼女とデート”なんだし、今日は皆で遊んでもいいんじゃないか?」

「──そうよ。“お楽しみ”は明日の夜まで取って置いて、今日は皆で楽しもうよ♪」

「んな!? もう、来てたのか!」

 なんと! いつの間にやら彼女が来ていた。しかも、既に水着姿だ。

「どうかな? この水着、似合ってる?」

「……あ、ああ、在り来たりだが、似合っててスゴく可愛い……。」

「あは♪ ありがとう、彼氏君♪」

 彼女は俺に褒められた嬉しさにその場でくるりと回って体全体で喜びを表していた。


 ──んで、結局。

 この日は、彼女と皆と一緒に水遊びを楽しんだ。

 午前中の満員御礼が嘘だったかのように、午後の『マイムランド』は程よく人が少なく、自由気侭に水遊びが出来た事を記しておく。




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