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ねこの手、貸します。 冬  作者: 白月 仄
えぴろーぐ(に)→ぷろろーぐ
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ろくのいち



 ──静寂しじまに充ちた森の中

   舞い降りた妖精たちが

   静謐せいひつを音楽に

   沈黙の舞踏会


   そらより来たり 白き妖精

   ふと そらを 仰ぎ見れば

   まるで そらへと

   誘うかのよう


   踊るよ 踊れ 妖精たち(ホワイトスノウ)

   回るよ 回れ 妖精たち(ホワイトスノウ)

   静音のリズムに身を委ね

   踊れよ 回れよ

   妖精たち(ホワイトスノウ)





 しんしんと静かに空から降ってくる雪。

 ココ──『眠る森》』で芽吹くことも枯れることもない木々に降り積もり、白い布団を掛ける雪。

 私は今年できた親友のカレンと一緒に、雪降る『眠る森』の中で二人寄り添い、静かな夜に降る雪を眺める。

「おーい、歌音うたねー、少年ー、何処だー? 音恋ねこがそろそろクリパ始めるってよー!」

 あ! お兄ちゃんだ。

 私のお兄ちゃんの名前は詩音しおん。実はこの詩音しおんという名前はお兄ちゃんが歌手活動するときの芸名。

 本名は音羽おとは りつ。そして、私のフルネームは音羽 歌音うたね

 私とお兄ちゃんは約十年ほどに前に、『にゃんてSHOP』──店長の音恋さんと出会った。

 その時の私まだまだ幼く、当時の記憶のほとんどは朧気だけど、これだけはハッキリと記憶している。


 ──コロンカラン~♪

「あら、いらっしやいませ♪ 『にゃんてSHOP』へ、ようこそ♪」


 お兄ちゃんと私を出迎えた『お店』の十年前当時のただ一人の店員の音恋さんの笑顔と優しい声を──。

 さて、懐かしいことを思い出したついでに、私が憶えている限りの当時の状況をお話しすると、以下の通りです。


 約十年前の当時、仲が悪いわけではなかったけれども両親とはソリが合わなくて高校卒業と同時に家を出たお兄ちゃん。そんなお兄ちゃんに私は付いて行った。当時の私自身、仕事で家をいつも留守にしている両親よりも何時も傍に居てくれたお兄ちゃんと離れるのがイヤで、無理言って付いて行ったのだ。

 こうして、家を出たお兄ちゃんと私。

 そして、新たな生活を始めるにあたって、お兄ちゃんは職を探す前に先ずは住む処をと不動産屋を探そうと、ケータイを起動するも──仕事の早いことで両親はお兄ちゃんと私のケータイの契約を解約していたようで──使い物にならないことに頭を抱えることに……。

 ──どうやら、両親にとっては、お兄ちゃんも私も“いらない子”だったみたい……。

 そんな時、たまたま目に入ったのが『街の何でも屋 『にゃんてSHOP』』の看板。

 お兄ちゃんと私は渡りに舟とばかりに、その『お店』へと入ったのです。

 そうして、お兄ちゃんと私は音恋さんに出会ったのです。


 それから約十年。お兄ちゃんは『にゃんてSHOP』の副店長として、音恋さんと一緒に依頼に勤しみ今日こんにちに到ります。

 途中──三年前ほどにお兄ちゃんがお兄ちゃんの友人のススメもあって歌手活動を開始。当時は、お兄ちゃんは唱とギターは巧いけど、ポッと出の新人歌手が売れるなんてことはそうそうあることじゃないから、「止めた方がいいんじゃない?」と私が言うと、お兄ちゃんは「そんなのは分かってるよ。記念だ、記念」と、どうやら本気でなかった様子。

 それが、フタを開けてみると、なんと、爆発的ではないけれども、曲が大ヒット!

 それに調子を良くしたのはお兄ちゃん──ではなく、お兄ちゃんの友人でお兄ちゃんに歌手活動をするようススメた音無おとなし しずかさん(男の人です)。音無さんは“音色ねしき かなで”名義で活動する世界的に有名な作曲家で、前々からお兄ちゃんの弾き語りの腕を在野に埋没させておくのは勿体ないと思っていたらしく、デビュー一曲目にして大ヒットしたお兄ちゃんの唱とギターに「おれの耳に狂いはなかった!」と自慢顔をしていました。

 そんな事もありながら、お兄ちゃんの歌手活動か加わってもそれまでと然程の変わりもなく、“これまで通り”だった『にゃんてSHOP』。

 しかし、丁度、去年の今頃、変化が訪れてたのです。

 私が十歳の時に拾ってきた二足歩行する巨大猫の『みぃ』。その、みぃが野良の仔猫を十二匹も連れて日課の散歩から帰ってきたのです。

 ネコ好きな音恋さんは狂喜乱舞し、お兄ちゃんは「どうすんだ、これ?」と困惑。私も、いきなり十二匹も猫が増えて、ちゃんとお世話できるか心配に。

 そこで、お兄ちゃんと──何時だったかは憶えてないのですが──お兄ちゃんが清美グランドパーク内の水族園から譲り受けたペンギンのギーペは相談して、“仔猫たちの里親を探そう”ということに。

 しかし、そこでお兄ちゃんとギーペの意見に猛反対したのが、ネコ好きの音恋さん。

 なにを思ったか、音恋さんは「ねこカフェを開くわ!」と、お兄ちゃんとギーペに宣言すると年が明けての今年の一月に『お店』の改装を始めて翌二月中旬ころに改装が完了、そして『ねこカフェ』をオープンしたのです!

 そして、『ねこカフェ』がオープンしてから一ヶ月が経った三月某日。一人の少女が『にゃんてSHOP』にやって来ました。それが、カレン。

 カレンは来年度(三月時点)から、清美市にある星御海ほしおみ学園の高等部に通うとのことで、のぞみさんたちの付き添いで東京に行った音恋さんが『ウチ』を下宿先にと勧めたのだとか。

 更に、カレンがこの街に来た日と同日。一人の新大学生がこの街に来たのですが、住居の用意が出来ていなかったとかで、“住む処探しの手伝い”を音恋さん依頼。しかし、既にその新大学生が提示した条件に合致する物件に空きはなく、そこで音恋さんが一案を提示。それは、『ウチ』に住み込みアルバイトをすること。

 そうして、カレンと新大学生──青年さんは『私たち』の一員になり、更に音恋さんが新たに雇った店員のきびさんも加わり、前々から時たま『お店』の手伝いをしてくれていた希さんとかなえさんが正式なアルバイト店員になって、短期間に店員が五人も増えた新体制の『にゃんてSHOP』の新たなスタートが切られたのです。

 それからの『にゃんてSHOP』は昨年までは書き入れ時だけ忙しなく賑やかだったのが、通年で忙しなく賑やかな『お店』になりました。

 おそらく、一つに『ねこカフェ』の効果で、まずは『お店』を訪れるお客さんが増え、そこから『ねこカフェ』の口コミのオマケ情報で『本業』の話も広がって徐々に『お店』への依頼も増加。

 更に、夏には一風変わった新たな『ねこカフェ』の店員のマスターさんが加わり、晩秋には同じく『ねこカフェ』に日立ひたち なるさんが一年契約の店員として加わり、『にゃんてSHOP』の賑やかさに拍車が掛かりました。

 そうして気付けば、今年も後数日に迫った今日この頃。

 あっという間に過ぎていったこの一年。ただ、あっという間に過ぎたにしては出来た思い出は色濃く多く、実に充ち満ちていた一年。

 その濃かった一年の〆を前の最後のイベント──クリスマス。

 勿論、『お店』はクリスマス関連の依頼で大忙しでした。

 そんな年内最後の書き入れ時を乗り切った『私たち』。

 そんな『私たち』にご褒美なのか、世界は細やかなプレゼントをくれました。


 ──最高のホワイトクリスマス──


 『眠る森』に降る雪は静かに私の手のひらの上へと着地すると、ほんの僅かの間だけ綺麗な雪の結晶の姿を魅せてから、私の体温で融けて水になっていきます。

歌音うたねちゃん、詩音しおんさんも呼んでることだし、そろそろ戻ろっか」

「うん。そうだね。

 お兄ーちゃん、私たちはココだよー」

 私は私たちを捜すお兄ちゃんに返事をしてから、座っていた大きな石から腰を上げると、お兄ちゃんのいる方へと駆け出します。



 ──因みに、十二月二十五日は過ぎていて、遅ればせながらのクリスマスパーティー。なにしろ、クリスマス当日にも依頼やお兄ちゃんが主演のディナーショーとかがあって、クリパどころじゃなかったので。





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