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事の成り行きは大学でできた友達の彼女の発言だった。


「光輝先輩!心霊スポットに行きましょ~!」

その発言をにこにこと聞いている、友達…敦と隣に元気よく提案する彼女、美羽ちゃん。


「だからやめときなって…美羽…ね?」

俺の隣で望ちゃんが美羽ちゃんを窘める。


がやがやと賑わってるファミレスで不釣り合いな会話だ…

「…いや、だから断るために今日来たんだって」

望ちゃんという仲間を引き連れて。


正直、自分でいうのもあれだがノリは悪くないほうだし友人もそこそこいる。

こういう時どうしたらいいのかも、処世術的には分かっているつもりだ。


だが幼馴染が心霊関係で苦労しているのも、それを目撃している身となれば別で。


美羽ちゃんは関係なしと苺パフェをもぐもぐさせながら行きましょーよーと

言っている、ちらっと望ちゃんを見ると頭を抱えていた。


「行こうぜ、そんな大したことねぇって!」

「…そもそもメンバーは??」

「私とあっくんと小野ちゃん!」


美羽ちゃんはパフェから目を離さず中盤のシリアスを潰していた。


小野…?知らない子だな?

「えっ小野さんなの?!」

そこで意外にも声を上げたのは望ちゃんだった。


「そう!その4人!」

うわあ…と可哀そうな目で俺を見る望ちゃん。

なんなんだ…?


「そもそも企画したのは私じゃないよ~、のぞちゃんに怒られるし。

…ただ女子ってすごくめんどくさいんだよ…」

わりと明るくいつも笑ってる印象の美羽ちゃんが遠い目をしている。

それを察して望ちゃんがあぁ…とさらに頭を抱えている。


「えっと…小野、さん?に断るっていうことは…」

「…難しいかもですね」

そういう望ちゃんの目は嫌悪感に満ちている

…これはかなり嫌ってるな…。


「…まあ、敦先輩と美羽がいるからよっぽどのなことはないでしょう…」

だからって行っていいってことじゃないんだからね!と美羽ちゃんに念押しをし

口端についているクリームを拭ってあげている。


姉妹みてぇだな…と呟くと嬉しそうに笑う美羽ちゃんと照れくさそうな望ちゃんがいた。

それを敦はみーちゃんは可愛いねえなんて言っている…


正直バカップルが。という気持ちが湧かなくはない。

はあ…とため息を吐き俺はベルを押した。


「ここの支払いお前がしろよ」

「任せろって!」

そう人懐っこい顔で笑う敦もなんだかんだ憎み切れない弟属性なのだ…







その集まりがあった次の週の土曜日、23時頃のコンビニの駐車場に

俺と敦、美羽ちゃんそして噂の小野さんが集まっていた。


噂の小野さんは派手なメイクに短めのタンクトップ、薄い長そでを羽織り…

くるくるに巻いた髪で…簡単に言えばギャルだ。


そしてなぜか俺のそばにぴったりとくっついている。


「光輝先輩、何か買っていきますう?お茶とかあ」

甘ったるい話し方は…なぜだかとても…苦手に感じる。


「あ、あー…そうだな、隣の市なんだろ?心スポ」

とりあえず小野さんから離れようとコンビニに行こうとしたが、ぐいっと腕を引っ張られる


「なら一緒に行きましょうよぉ、敦先輩達のも買ってきますよぉ」

と小野さんは敦と美羽ちゃんにひらひらと手を振る。


…なぜ??


有無を言わせない強引さでコンビニで一緒に買い物をする羽目になった。

引きずられていく俺をなんとも言えない顔でバカップルは見ている。いや、止めろよ!


コンビニでも散々くっつかれ、既に疲弊した俺は4人分の飲み物と軽いお菓子などの

袋を手に持ち駐車場に帰ってくる。


敦たちはすでに車の中で待機していた。


…小野さんは本当にコンビニについてきただけで特に何かしてくれたわけでもなく

ただ俺の腕にひっついて甘い声を出すだけだった。

正直なぜついてきたんだ…


運転席には敦、助手席に美羽ちゃん、運転席の後ろに俺が乗り込み、助手席の後ろには

小野さんが乗り込んだ。


小野さんが俺が持っていた袋を取り中から飲み物を配る

…美味しいポジションを持っていくタイプの女子か?


そりゃ望ちゃんも嫌がるだろうな…あの嫌悪した目を思い出す。

…正直わからんでもない。


「じゃあ、いくぞー」

敦の掛け声で発信された車内はまるで遠足へ向かうような雰囲気で

きゃっきゃっと騒いでいる。


行く場所が心スポじゃなかったら俺もはしゃげたんだが。

とりあえず揺れる車内でペットボトルのお茶を口にした。



道中の車内で美羽ちゃんがスマホをいじりながらこれから行く心スポについて

説明してくれる。


「えっと…隣の市にある「曰くつきの家」ってとこにあっくんに向かってもらってるよー!

一見普通の家らしいけど、中が人形だらけなんだって!」

小野がこわぁい、と言いながら俺にしがみついてくる。


「昔はそれなりに管理されてたらしいけど、今は管理人がいるかもわかんないみたい」

なんか“そういう系”の掲示板で一時期話題になったとかで荒れちゃったらしいよお

と言いながら美羽ちゃんは口にチョコレートを放り込む。


「…不法侵入とかやばいんじゃね…?」

「管理人がいるかもわかんないんですしぃ大丈夫ですってぇ!」

と未だにしがみついている小野さんが笑う。

さっき怖いとか言ってただろうが…


まあもう車に乗ってしまったわけだし俺に成す術はないのだ、

もう大人しく着くのを待つしかない。




近くに停めれそうな空き地に車を停めた。

さすがに家の前に車を置いたら不審…というか心スポに来た人だろうと分かるだろうし。

まあ、いちいち通報してもキリがないだろうが…


歩いて三分くらいにその家が見えてくる。

美羽ちゃんがスマホでマップを見ながらここー!と指をさす


「うーん…結構普通の家だな?」

「なんだ、敦その残念そうな顔は…」

「いやあ…もっと禍々しいのかなと」

そんな見るからにって感じなら俺はお前を置いて帰るからな?というと敦はけらけらと

笑って俺の運転できたのに?とか言ってきたのでうるせえと横っ腹を殴る。


「あっくんたち~、早く行こうよぉ」

そんなとこで騒いでると通報されちゃうよーなんて急かされる。

俺としてはここでもう帰りたいがそうもいかないらしい。


俺は深くため息をついてその家の玄関前に向かった。


…玄関には丸められたガムテープが落ちていた。

玄関ドアのすりガラスが割られており、ここを補強したものだったのだろう。


俺がガムテープに気をとれて下を向いているとガチャッと音がして上を向く。

小野さんが鍵開いてましたぁ…!なんてのんきに笑っている。


たぶん誰かがすりガラスを壊し横から腕を入れて鍵を開けれるようにしたのだろう。

…サイト通り荒れているようだった。


美羽ちゃんと敦が懐中電灯を一つずつ持ち

楽しそうにしている三人を後ろから見ながらついていく。


玄関に入ると靴を脱ぐスペースがあり、さらに扉がある。


玄関も割れた破片やらが落ちていて靴を脱げば怪我をすること間違いなしなので

みんな気にせずそのまま上がっていく。


気付くと小野さんがまた俺の腕に絡んでいた。

怖いですねぇ…って言いながらその顔は一つも恐怖感を感じない。


一階はリビングキッチンになっておりダイニングテーブル、椅子、テレビに電話…

荒れて破片やごみが転がってる以外はわりと普通だった。


「人形いねーじゃん」

「じゃあもうそういうことで帰ろうぜ…」


確かに人形は見当たらないのだが薄気味悪い雰囲気は流れている。

うす暗いからか?


「心スポの醍醐味は散策だろ~」

「あっくんホラゲーも好きだもんね!」

ホラゲーは散策必須だよねえなんて会話をしているこのバカップルを誰か止めてくれ。


…小野さんは相変わらず腕に絡んでいるし、なんなんだ、ほんとに。


ズカズカと敦が奥へと入っていく。

リビングキッチンの奥には引き戸があり、

敦は迷うことなくその引き戸を開いた。


「……おまえ、躊躇ってものがねぇのかよ……」

「探索ってこういうもんだろ?」


中を除くと引き戸のすぐ左に扉、右には引き戸。

前には2階へと続く扉があった。


今度はなんの躊躇もなく隣にいた小野さんが

左の扉を開ける。


「……普通のトイレですねぇ」

なんだぁつまんない。とでも言いたげな口調だった。

さっきのこわぁい、はどこいったんだ?


そして美羽ちゃんも躊躇なく右の引き戸をあける。

心霊スポットの恐怖感とは無縁では……?


メンバー間違えてねぇか……?

俺だけなのか?この危機感と恐怖感は。


「こっちも普通の洗面所だねぇ、荒れてるけど。」

あっ!と美羽ちゃんは声を出して奥の扉を指さす。


すりガラスの折れ戸。


「……普通に考えて風呂場じゃねぇの?」

「まぁまぁ一応見とこうよ」

ね、光輝先輩!と美羽ちゃんが明るく言う。


それは……俺に開けろってことか……??


すりガラスの折れ戸の取っ手を掴んだ瞬間に

ゾワッと鳥肌が立った。


「……や、なんか、ここやめとこー…」

言い切る前に小野さんがてぃ!と俺の手を押した。


勢いで折れ戸が開く。

中が丸見えになった風呂場はとても異質だった。


薄汚れた浴槽に、刃物と腹の縫い目から零れた薄茶色いお米。

沈められたぬいぐるみ。



浴槽にあったものは、一時期とても流行った

《ひとりかくれんぼ》の形跡だった。







今回は分けて書こうと思います、

更新をお楽しみにしてくださると嬉しいです

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