影の中の少女
ゆっくり読んでくださいね!
薄暗い部屋の片隅、古い窓から差し込む月光が、
埃まみれの床に淡い影を落としていた。
部屋の中には静寂しかなく、その静けさを切り裂くように、かすかな足音が響いた。
少女が現れた。白いワンピースを着て、裸足で歩くその姿は、月明かりに照らされて幽霊のように見えた。
彼女は部屋の中央に立ち止まり、小さな声で囁いた。
「お母さん、どこにいるの?」
答えはない。
ただ、闇が彼女の声を飲み込むだけだった。
少女は部屋の隅にある古い鏡に目を向けた。
鏡は曇っていて、何も映し出していないように見えたが、彼女はそれに向かって歩き出した。
「ねぇ、教えて。お母さんはどこ?」
すると鏡の中に、ぼんやりと人影が浮かび上がった。
それは彼女の母親の姿だった。
母親は微笑みながら手を差し出している。
少女は手を伸ばし、触れようとした。
しかし、鏡の表面に触れた瞬間、母親の姿は消えた。
代わりに鏡の中には、恐ろしいほど無表情の少女が映っていた。彼女自身だった。
「私はここにいるのに…どうして一人なの?」少女はそう呟きながら、鏡の中の自分をじっと見つめた。
その時、部屋の空気が急に重くなった。
冷たい風が彼女の髪を乱し、背後の扉が音もなく閉まった。
そして少女は気づいた――自分がこの部屋から一生出られないことに。
鏡は再び曇り、少女の姿を消した。
ただ静寂だけが部屋を支配していた。
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