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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

うちのチームはこんなに

作者: 今季最下位(かもしれない)


ーーさぁてと、今日の試合結果は……と。


終電間近の電車に乗って、カバンからスマホを取り出す。今日もリアタイできなかった試合。仕事が終わったという安心感の後には、少しの緊張感が襲ってくる。


ブックマークしているスポーツ専門サイトを開いて、ずらりと並んだ試合結果を見る。贔屓のチームに差し掛かった時、目を細めてしまう。


「嘘だろ……」


思わず声に出してしまい、口を手で塞ぐ。幸い、乗客は疲れからか自分の独り言は聞こえなかったらしい。


目を瞬かせて、もう一度スマホの画面をまじまじと見る。


勝っている。勝率三割を切った奇跡の最弱チームが、首位のチームに勝っている。しかも、大差をつけて。


弱いチームの勝ち方だろうが、勝ちは勝ちだ。仕事で疲れた体に、勝利という甘美が染み渡った。


自分のチームが弱すぎて、もう解約しようとしていた専門アプリを、帰ったら起動しよう。その前に、試合詳細を見なければと、ボタンをタップする。


過去の栄光と、未来への希望が詰まった試合だった。


老害と言われ、とっとと引退しろとファンの間で叫ばれる選手が決勝点を入れ、育成失敗と言われた若手がすばらしい守備を見せ、あまつさえ先制点を入れている。監督の采配も柔軟で素晴らしく、SNS上で悪態をついていたファンも手のひらを返している。


どこを切り取っても素晴らしい攻撃であり守備。年に一度あるかどうかわからない、完璧な試合であった。


きっと贔屓のチームは最下位で終わるだろう。だが、この試合が見れただけで満足だ。






ーーさぁてと、今日の試合結果は……と。


終電間近の電車に乗って、カバンからスマホを取り出す。今日もリアタイできなかった試合。仕事が終わったという安心感の後には、少しの緊張感が襲ってくる。


ブックマークしているスポーツ専門サイトを開いて、ずらりと並んだ試合結果を見る。贔屓のチームに差し掛かった時、目を細めてしまう。


「嘘だろ……」


しかし、細めていた目は次の瞬間、見開かれた。思わず声に出してしまうほど、試合の結果は見事だったのだ。とても、勝率三割を切ったチームの勝ち方とは思えない。いや、この偶然の大勝こそ、弱いチームの勝ち方と言われればそうなのだろうが。


試合の詳細を見れば、ますます、文句のつけようがない経過を辿っていた。引退間近と揶揄される選手は面目躍如の活躍を見せ、しかし若手も負けていない。選手交代のタイミングも完璧で、すべてがよくできていた。


相手は、今季一度も勝てていなかったチーム。まさに奇跡の勝利である。  






ーーさぁてと、今日の試合結果は……と。


終電間近の電車に乗って、カバンからスマホを取り出す。今日もリアタイできなかった試合。仕事が終わったという安心感の後には、少しの緊張感が襲ってくる。


ブックマークしているスポーツ専門サイトを開いて、ずらりと並んだ試合結果を見る。贔屓のチームに差し掛かった時、目を細めてしまう。


……なんとなく、そんな予感がしていた。


今季一度も勝てなかったチームに対して、贔屓のチームは大逆襲を果たしていた。いや、大逆襲というほどでもないか。勝とうと思えば勝てるチームだった気がする。


試合の詳細も、予想していた通りのものだった。ベテランが活躍、若手が躍動、監督の采配も見事で、これこそが自分の応援しているチーム……



「な、わけないだろ」



思わず声が出てしまう。そんなわけないだろう、老害がいきなり活躍し、育成失敗と言われていた若手がいきなりファインプレーをし、頭の硬い、負けに行っているとしか思えない采配をする監督が覚醒するのなんて。


思えば、試合結果を開く前、贔屓のチームの勝利を確信していたのもおかしい。あのチームのファンである自分が、勝利に驚かないのはもっとおかしい。


違和感が頭の中を支配していた。電車の液晶ディスプレイを見る。


次の駅に、いつまで経っても着かない。いつまで経っても同じ駅名、同じ広告がぐるぐる、ぐるぐると……


「まさか、これって、る」






ーーさぁてと、今日の試合結果は……と。


疲れてヘトヘトになった体で、脳で。どうせ負けるんだなと思いつつ、それでもスマホを開くのをやめられない。


ーーやっぱりな。


贔屓のチームは、歴史的大敗をしていた。ここまでくると、どこまで負けられるかの記録を作ってほしいレベルだ。


相変わらず、ベテランは老害だし、若手は育たない。監督は頓珍漢なことをするし、いつもと変わらないチームである。


それでも、稀な勝利があるからこそ、このチームのファンはやめられない。アンダードッグ効果というやつだろうか、いいや。


本能が、このチームを愛しているのである。











おまけ・裏


ーーさぁてと、今日の試合結果は。


終電間近の電車に飛び乗り、カバンからスマホを取り出す。

にんまりと笑ってしまう。やはり、自分の応援しているチームは、今季最強だ。勝つのが当たり前。大正義である。


このところ毎日勝っている気がするくらいだ。まあ、気のせいだろうけど。


それにしても、なかなか家につかないな。電車の液晶ディスプレイも変わっていない気がするし。


ーーまあ、気のせいだな。


それよりも、試合詳細を見て悦に浸るとするか!


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