1 アカシックレコードとゲームの世界
応募のために微修正しました。よろしくお願いします。
『おしらせ
誠に勝手ながら当[ゲームショップ・カタギリ]は、本日をもちまして閉店させていただくことになりました。
長らくのあいだご利用ありがとうございました。 店主より』
寂れた片田舎の商店街。複合ショッピングセンターに呑まれつつあるシャッター通りの片隅に、また新たな張り紙が掲示された。
「……これでよし、と」
なにがこれでよしなのか。ため息と共に胸中で呟く。セロテープのあとがいくつも付いたガラスドアに映った自分の顔は、朝っぱらだというのに疲れ切った顔をしていた。今朝まで最後の整理を手伝っていたからだ。
ゲームショップカタギリは、ゲーム屋と駄菓子屋とゲームセンターを足して割ったような小さな店舗だった。
平日でも学校帰りの学生が集まるし、休日にはお客さんが家庭用ゲームソフトを持ち寄ってみんなで集まれる場所も提供していた。
しかし少子高齢化に通信販売の充実、ダウンロード版の拡充にソシャゲの蔓延。唯一の生き残りの道であった中古販売も、毎年のようにリメイクが発表されている。
レトロゲー好きのじいさんが趣味で続けていた店は、じいさんが入院した時点で終わりを迎えた。
「最後まで付き合ってくれてありがとう。こっちも仕事で実家に来る機会がなくてね。君がいなければ親父も今頃どうなっていたことか。これ、少ないけど最後の給料だ。次の仕事、早く見つかるといいな」
「はあ、どうも。こちらこそ、お世話になりました」
「ではこれで失礼するよ」
一緒に在庫整理をしていた店長の息子さんから分厚い封筒を受け取るが、本当にこれで終わりなのだという実感はない。
「明日からどうすっかなー」
最後の仕事が終わり、朝早くから営業していることだけが取り柄の喫茶店でアイスコーヒーを飲みながら無為に時間を潰す。
24時間営業ではないコンビニで貰った求人誌をめくってみるが、どれも自分には向いてなさそうだ。
自分で言うのも何だが、俺は人付き合いが苦手なコミュ障引きこもりレトロゲーマーであり、顔を合わせて人と喋るのが苦手だった。
そんな自分でもゲームの画面越しだったら他人と喋ることができた。例えそれがゲーセンのアーケード筐体の反対側だったとしても、隣りに座っていたとしても、ゲームというフィルターがあればそれなりに喋れてはいた。
カタギリのじいさんとはそんな縁でゲーセンで出会い、バイトとして雇ってもらっていたのだが、それも今日で終わりだ。
「お店、やめちゃうんですね、カタギリさん」
「うん? あー、ああ。えーっと、じいさんが倒れてね……」
声をかけられたので顔を上げると、いつの間にか正面の席には見慣れた常連客の少女が座っていた。
綺麗に切り揃えられた艶やかな黒のロングヘアと凛とした瞳、赤を基調としたゴシック風ワンピース。どこかのお嬢様を思わせる美少女だが、俺の不誠実な接客対応といい加減な記憶のせいで彼女の名前が思い出せない。それが顔に出ていたようで彼女は不安げに首を傾げる。
「それなりに長い間あのお店に通っていたんですけど。覚えていなさそうですね、カタギリさん?」
「あ、いや、顔と声は一致するんだ。特徴も、えーっと……」
指で額を叩きながら記憶を探る。彼女が常連なのは間違いない。なにをプレイしても壊滅的に下手だったから、それは覚えている。だけどそうとは口に出さない。その辺の社交辞令はあの店で学んだ。
彼女はいつも店に来ていたが、遠巻きに他人のプレイを眺めては一人で頷いていることが多かった
。いわゆる観戦勢だ。
たまたま他に客がいなかった日に新作のサンプルを遊ばせたことがあるのだが、RPGのチュートリアルの最初の戦闘なのに全滅していたのが記憶に残っている。
その日から人がいなければゲームに触っていたが、なにを遊んでも結果が伴わず、しかし俺のアドバイスには絶対に耳を傾けない頑固な少女だった。
「ふふ、意地悪を言いました。私は名乗ったことがありませんから」
「あ、そっすか。……なにか飲む?」
ゲームのことしか話さない、話したことがない俺は、こういう空気がどうにも苦手だ。というか喫茶店で女の子と二人でいるというのが初めてのシチュエーションだった。
「では、同じものを頂いても?」
「ああ、わかった。ってちょっ、まっ!」
メニューを一通り眺めたあと彼女が指差したのは、テーブルの上にあるアイスコーヒー。彼女は俺がウェイトレスを呼ぶよりも早く飲みかけのそれを手に取ると、いたずらっぽく微笑みストローを啜る。それはつまり間接なんとかに入るわけで、俺は謎の緊張で身体が固まる。
「カタギリさん、実はあなたに大事なお話があるんです」
「え、あ、はい。な、なんのことでしょう……?」
声が裏返り全身が熱くなる。彼女は氷だけになったグラスを脇にどけ、今度は俺の手を取り真剣な眼差しで見つめてくる。さっきまでグラスを持っていた彼女の手は、緊張のせいで余計に冷たく感じられた。
なにかフラグを立てたか? 名前も知らないのに? じゃあ宗教? マルチ? まさかイルカの絵か? こういう状況に不慣れな俺は、頭のなかで悪い方へと思考を巡らせていく。
「カタギリさん、私を助けてくれませんか?」
彼女の真剣な顔がだんだんと近づいてくる。綺麗な瞳に呑まれそうになるが、こういう時に勢いで話に乗ると大抵は詐欺だから注意せよ、と脳内SNSフレンズの忠告が頭に過る。
「あ、ああ、助けたいのは山々、なんだけど。できればここで話してほしい、かな。あ、あと名前を聞いても?」
緊張で固くなっていた俺はやっとの思いで視線を外し、なんとかその言葉を絞り出す。
「これは失礼を、カタギリさん。まだ名乗っていませんでしたね。しかし名前ですか」
俺の手を離し、彼女はわざとらしく顎に指を添える。なにをしても絵になるのは美少女の特権だが、彼女の口から紡がれた言葉は、俺の悪い想像を全力で悪い方向に破壊してくれた。
「紅子紅子、なんていうのはどうでしょう。私はアカシックレコードの端末の一つです。アカシックレコードというのは、一先ず神さまだとでも思っていてください」
「……は? 神?」
「そして私は人間に合わせて創られた、精霊のようなものです。重要なのは名前ではありません。それでお話というのはカタギリさん、私と一緒に世界を救って頂きたいのです」
「は、はい。……はい?」
やはり宗教系か? 俺はさっさと店を出ようと立ち上がろうとしたが、再び俺の手を取り彼女は微笑んだ。あまりにも胡散臭い言葉を添えて。
「百聞は一見に如かず。まずは一緒に来てください。大丈夫、なにも不安なことはありませんし、きっと気に入りますよ。なにせ、私はすべての記憶を持っているのですから」
きれいな、どこか宇宙を思わせる深淵の瞳。すべての記憶を持つという彼女の言葉に、俺は一つだけ心のなかでツッコミを入れた。
俺の名前はカタギリではない。カタギリは店の名前、店長のじいさんの名字であり、俺は客の子供からカタギリの兄ちゃんと呼ばれていただけだ。
◆
わたしの名はエレノア。フォグリナ王国の騎士だ。フォグリナは復活した古の魔王により光を奪われ、暗い闇の世界に閉ざされてしまった。わたしは魔王を封印した勇者の血を引く者として、魔王討伐の旅に出ることになった。
国王との謁見。労いの言葉とともにローブを纏った人物を紹介された。彼女はこの国を裏から支える賢者の一人だという。今回の旅は長く苦しいものになるだろう。そこで王からの命により賢者の一人が旅に同行し、助言をくれるそうだ。
助言とはいえ賢者の言葉は王の命令も同然。わたしはなにをおいても彼女の指示に従い、
この短い旅を終えることになるだろう。
彼女はまずこの国の近隣に現れ始めた魔物の討伐から命じる。わたしはその助言に従い魔物たちを何体か倒し経験を積む。少し力がついたところで体力も減ってくるだろう。わたしは一度戻るべきだと思うのだが、先を急ぐべきだという賢者の意見に従って次の町へ向かい、
そこで死ぬ。
未来がわかるわけではない。幾度と無く経験してきたのだ。次の町に入ってすぐに、魔王に寝返った盗賊との戦いになる。わたしは必死に戦うが、殺される。
もちろん賢者に反論したこともある。だが彼女は今度は大丈夫だとか、ランダム要素があるはずだとか、運次第で勝てるようになっているとか、負けイベントになっているだとか、とにかくわたしの理解の及ばない言い訳をして、わたしを死に追いやる。
彼女は無能だ。あるいはわたしが無力なのかもしれない。だがどちらにせよ、わたしはもう何度もあの町で死に、気がつくと王の前にいるのだ。そしてまた有無をいわさず賢者と共に魔王討伐へと向かわされ、町へ入り、殺される。
また死んでしまってもやり直せるのかもしれない。だけど肺を突かれた苦しさ、喉から吹き出た鮮血の熱さ、冷たくないっていく身体の重さも、忘れることはない。
ああ、もしこの暗く閉ざされた世界にもまだ神様がいるのなら。魔王を倒してくれとは言わない。せめて、ああ、せめてあの賢者を変えてくれ。
わたしはもう、死にたくない。
◆
『GAME OVER』
目の前にある壁一面の大型モニターの黒い画面いっぱい赤で表示された敗北を告げる8文字。
完全なゲーム初心者の脳筋突撃により金髪碧眼の女性主人公が無残に倒され、今に至っている。
「というわけなのです」
バカでかいモニターからゲームとは違う別の音声が聞こえたかと思うと画面が大きく揺らぎ、中から紅子が現れる。彼女は大いに不満気だった。
「えーと、どういうわけなのです?」
目の前にあるのは壁一面全てを利用した巨大モニターと、第4世代のコンシューマーゲーム機。本来ならカセットが差し込まれているはずのゲーム機のスロットには、見たことのない文字で書かれた厳しい装飾の古そうな本が突き刺さっていた。
「今この画面に映っていたのは、このゲームの世界の映像だったはずです」
ゲーム機本体の脇に大量に積まれたゲームカセットの山。紅子はその一番上から『ダーケストストーリー』の古ぼけたカセットを手に取り、ぱたぱたとうちわのように煽ってこちらに見せる。
「ああ、確かに俺の記憶にあるダーケストと同じような世界観だった。グラフィックは全く別物で、完全にリアルな世界だったけどな」
「このゲームの世界はここではない遠い場所に確かに存在しています。あるいはしていた。このゲームカセットはその世界のある一定の時期の記録の物語。そしてこっちに刺さっている本は、その世界全ての記録。カタギリさんに頼みたい事とはこの歴史の修正、世界の救済なんです。ゲームショップでのカタギリさんは本当に凄かった。記録が出そうだからと、接客を放り投げてまで画面に張り付いていたのを今でも覚えています」
そんな事もあったな。田舎のゲームショップでメイン層は夕方に来店する学生なのに、昔気質の爺さんは朝から店を開けていた。そんな平日の昼間の来客がない時間にはいつもRTAをしていた。
だがあのときの客は予約だけだったから、注文書を渡して書かせた。記録は出なかったが、何も問題はない。
思い出話は横において、まずは紅子の話だ。
ダーケストの世界が本当にある。にわかには信じがたい。
「ゲームをクリアして、世界を救済ねえ」
「このダーケストストーリーの世界の記録が少し壊れてしまったのです。それ自体は古い本に紙魚が湧くようなことで、特別な異常ではありません。異常ではありませんが、問題ではあります。このまま放っておけば、ダーケストストーリーの世界を記録したこのゲームを境に、こちらの世界の歴史も大きく変わってしまうのです」
俺とは反対側のソファへ頭から沈み込む紅子。実際に会ったことはないが、会社疲れのOLっぽいなという感想を抱いた。
「ふーん。具体的にはどんな影響が?」
俺が質問を投げると、ソファに突っ伏したまま喋っていた紅子は器用に寝返りをうち、ふっと笑う。
「続編が出ません」
「……はあ?」
「冗談で言っているわけではありませんよ。ダーケストストーリー世界の歴史に穴が開けば、その空白期間から先は不確定になります。カタギリさんの知るダーケストストーリー世界は失われ、例えば魔王の支配する世界になったりとか。そうなってしまうとダーケストストーリー世界が反映されたゲームの方もクリア不可能のバグゲーとなり、続編は消滅し、その後のこちらの世界がどうなるのかは私にも想像がつきません」
彼女の言葉をそのまま信じるのであれば、あのゲーム機に刺さっている本こそがゲーム『ダーケストストーリー』の大元となる世界なのだろう。
そしてその世界が壊れたまま、つまり大元のゲーム世界をクリアしなければ、ゲームとして切り出されたこちらの世界のゲーム『ダーケストストーリー』も同様にクリアできないゲームになってしまう。
所謂タイムパラドックスとかいうやつか。あまり詳しくはないが、過去が変わると未来も変わるというやつだろう。
「通常であればすべての記録を持つアカシックレコードの端末である我々がその世界に赴き、今回で言えばこのゲームと同じように問題を修正する。ダーケストストーリーの世界ならゲームの通り魔王を倒せばいいわけですね。たったそれだけの事なのですが、問題解決にあたり創造されたこの私は、つまり、その……」
そこまで言って彼女はクッションに顔を埋める。先ほどのプレイ画面と今までの来店時の記憶から、彼女の言葉の先を察した。
「……言いにくいんだろうけど、つまりゲームが下手?」
「ち、違います! この世界の難易度が高すぎるんです。だってずるくないですか? 先を急いでるのに、次の町に入るのが罠なんて誰も気づきませんよ!? あの狡猾な罠により私はもう何回も何回もやり直す羽目になって! ……有り体に言うと心が折れました」
いや流石に同じ罠に何度もかかるのはどうだろう。アクションゲームならともかくロールプレイングゲームで、しかも最序盤だ。ふつうは別の方法を試そうとする。紅子は俺に掴みかかる勢いで飛び上がったが、言い訳を並べるうちに落ち込み始め、またソファへと沈んでいく。
「というか、すべての世界の記録を持っているならクリアは簡単なのでは」
「その記録が壊れているから直しに行くんです。私だって覚えていれば簡単に直せますが、その直し方を忘れている状態なんです。だからゲームとして記録の残っているこの世界にやってきたというのに、まさかこんなに世界の修復が難しいなんて……」
俺の記憶が正しければ、アカシックレコードとは世界が生まれた瞬間からのすべての記録の概念だったはずだ。
そのうえでダーケストストーリーの記憶を失っているということは、今目の前にいる紅子はダーケストストーリーの世界の端末ということになるのか?
記録がないのに記録を直さなければならない。そのために記録が残っているこの世界に来た。と考えれば話は通るか。
「なぜ先に進めないんでしょう。もうわたしの手に負えません」
「そのゲームクリアを仮に手伝うとして、それをクリアするだけで世界が修正されるものなのか? というか、そもそもなんでゲームなんだ?」
半ば呆れながらも少し乗り気になった俺の言葉に、彼女は機嫌を直して嬉しそうに立ち上がった。
「いい質問ですね。なぜゲームなのか。それはこちらの世界とダーケストストーリーの世界の接点がゲームだからです。後に続編や小説、マンガやアニメなど幅広く展開していくダーケストストーリーの世界ですが、その原点はやはりこのゲームソフト。全てはここから始まったのですから、全てはここから直さなければならないのです。その他の問題点としては、ゲームでなくては外から操作ができません」
「あー、なるほどな? 確かにマンガや小説は操作できないか」
というより操作できないのは一番大きな問題だろう。仮に覚えている内容を書こうとしても、そもそも欠けた本の文字は読めないのだから、入力できるとも思えない。
「それからゲームをクリアすれば世界が直る理由についてですが、壊れている部分がゲームと一致しているからだとしか言えません」
「ずいぶんと都合のいい話だな」
「それもまた、こちらの世界との接点がこのゲームにあるからですよ。そもそも私が救いたい世界はダーケストストーリーの世界の方ではありません。こちら側の世界なのです」
「うん?」
ダーケストストーリーの世界ではなく、俺のいるこちら側?
なにやら突然話のスケールが広がったな。
「世界を救うって、ゲームの世界の話じゃないのか?」
「全ては繋がっているんですよ、カタギリさん。先程言った通りこのダーケストストーリーの世界が崩壊すれば、このゲームの発売した日を境にこちらの世界の歴史が崩壊します。それを防ぐためには、このゲームをクリアするしかないのです」
先程の考察は間違っていたようだが、今のはなしで少し納得がいった。紅子がゲーム下手なのは、彼女がゲーム世界を救うための存在ではないからだ。
こちらの世界の崩壊を防ぐために呼び出された紅子だが、結論としてゲームの世界を治す必要があった。だけど紅子はゲームの世界専門ではない。だから何度もクリアに失敗し、他にゲームが得意な存在が必要になり、俺に白羽の矢が立った、と。
「君の言う世界を救う話はわかってきたつもりだが、要はゲームをクリアすればいいんだな?」
「正確にはクリアするのはゲームではなく、そのゲームの元となった世界のほうですけどね。しかしカタギリさんの知っているこのゲームの物語は、その世界では実際に起きた歴史です。なのでカタギリさんの知っているこのゲームのすべての事柄は、この世界では現実のこととして起きています。知っているとおりに事を進めれば、自然と歴史は元の形に修正されます」
「すべて、ねえ。そうしたら俺はこの世界に入った君に、こいつで指示を出せばいいのか?」
俺はゲーム機から伸びるコントローラーを手に取って見せるが、それはすぐに否定される。
「いえ、それは違います。カタギリさんには先程の私と同じように、ダーケストストーリーの世界へ直接入ってもらいます。あちらの世界では我々は賢者という立場の存在でして、魔王を倒す存在、つまり勇者のことですね。その勇者へゲームをプレイするように直接指示を出し、問題を解決してもらいます」
「プレイヤーは勇者を操作するが、勇者はプレイヤーじゃないってことか」
「そうです。歴史を修正するために、あくまでその世界の住人が解決する必要があるのです。カタギリさんならきっと簡単ですよ。ゲームで出来たことは全て出来ますから」
「話はわかった。だけどもし俺が断ったら?」
確認のために俺がそう問うと、紅子は困ったようにふっと笑う。
「断りませんよ。断らないからこの世界があるんです」
そういえば彼女にはすべての記録があるんだったか。元より断るつもりはなかったが、こうもはっきりそれはないと言われると、聞いたこちらが悪い気がしてきた。
「はは、もちろん断らないよ。断る理由もない。俺は今無職だし、時間もある。それに何より異世界ってのに一度行ってみたかったんだ」
俺の好きな作品の世界に行ける。よくよく考えればそれは何にも変えられない体験ではないだろうか。どう考えたって断る理由はない。
「はい、きっと良い返事が聞けると信じていました。では早速ですが今からダーケストストーリーの世界へ飛んでもらいます。勇者がお待ちですよ。カタギリさんの知識と経験を存分に活かして、わたしの代わりにサクッと世界を救ってください」
彼女の言葉と共に、いつの間にかスタート画面に戻っていた壁面モニターの表面が波打つ。聞き慣れたダーケストストーリーの待機BGMとともに、意識が希薄になり画面に吸い込まれていく。
俺は希望を持ってその瞬間を待機していると、最後に紅子はとんでもない情報を投げてきた。
「あ、言い忘れてましたが。魔王が倒せなければ世界とともにカタギリさんも消えてしまいます。残された時間はこちらの時間であと2日ほどでしょうか。でもまあ、カタギリさんなら余裕ですよね? がんばってください!」
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