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虚構の世界の狭間で  作者: アスクレピオスの杖
1/1

大変なことになる。

古い学校のチャイムのような耳障りな音が鳴り響いている。

スマホを止めて通知を見る。今日の天気は朝から晴れだそうだ。冬の晴れた朝は寒い。

「路面凍結は怖いから今日は徒歩で行こうかな……。」

と独り言をつぶやきながらベッドから身を起こす。

窓を開けると陽光が差し込んでくる。目をこすりながら朝の支度を始める。

普段どおりの水曜日を迎えた僕は家を出る、予定通りの徒歩で。

自転車で10分ほどの大学への道のりだが徒歩で進むと30分はかかる。

10分ほど歩いたときだった、と思う。ここから先の記憶は半分くらい曖昧だ。

僕は滑って転んだ、そして頭のところに石があった。ただそれだけだったんだ。



そして目が覚めると病院らしき場所に居た。

隣には女性と男性が一人ずつ、なにか話し込んでいるようだけど何を話しているのかまではわからない。

そして彼らは僕が目を覚ましているのに気付いたらしかった。

「こんにちは。どこまで覚えてるかな?」

男性が話しかけてきた。

「あの、すみません。転んだみたいで。」

「そこまでの記憶はあるんだね。よかった。それでは、あとはおまかせしてもよろしいですか?」

「はい。お手数をかけてしまいました。ありがとうございます。」

女性が言った。

「いえいえ。」

そうすると男性は部屋を出ていった。



「こんにちは」

「こんにちは。あの、ここってどこの病院ですか?」

「病院…?ここは病院じゃないよ?」

「え?」

「ここは[規制済み]。[規制済み]、の地下。」

「え?」

「あ、そっか。あなたインプットプログラムまだ受けてないんだった。受けてない人と話すの久しぶりすぎて忘れてたわ。」

「え?」

「今説明するのも面倒か……。悪いけどしばらく眠ってもらえるかな?」

「え?」

「じゃ、ばいばい。」

「え?ちょっt」

あれ…床が…なんで…起き上がる……ワケわかんねぇ…景色が暗転した。

「さてと、この薬だと2日くらいは問題ないかな。まずは岩国、そこからはたぶん航空機かなぁ。あーめんどくさ…ま、仕事だし言われたことはしっかりとやりますか。おーい、入ってきていいよ。すぐに岩国までの交通手段、できれば素早く移動できるやつとそこから先の手配もお願いしていい?」

「わかりました。できる限り早く手配します。」

「よろしくね〜。」


約1時間後…

「素早く用意して、とは言ったよ。たしかに言ったよ。でもこれはないんじゃないかなぁ…。」

「現状最も素早く岩国まで向かう手段としてはこれが一番であるとの判断です。」

「でもトラックの荷台に詰め込まれるのは嫌なんだけど…しかも[規制済み]と一緒に?」

「私も乗りますよ。」

「変わらんわっ!」

「えぇ…。では私が見てますから運転お願いしますよ。」

「無理!免許持ってないもん!」

「[規制済み]で偽造可能ですよね?ある程度の運転技術は[規制済み]の方から伝達とインプットを受けてるはずですけど…。」

「あ………。そうだったわそう言えば。」

「じゃあお願いしますね。ここから岩国まで約1時間、この星の時間で22時には着けると思います。そこから航空機に乗り換えてアメリカまで数時間……また長旅になりそうですね。」

「仕事だし仕方ないね!」

「そうやって初めから割り切ってください。」

「それじゃ行くよー」

「おー(棒)」

猛スピードでトラックが発進していった。



数分後……。

迷彩服姿の2人組が近づいてくる。

「一体何者なんですかね?」

「さぁな。ただ、関わりたくはないな。海自と空自、更には米軍。どれにもコネがないと出来ない技だ。」

「我々の首を飛ばすのなんて簡単な権力ですね。初めに訝しんだ表情してなくてよかった……。」

「草間さんか?あれは大変だったな。まだ復帰できてないんだろ。」

「そうなんですよ。お陰様でこっちの仕事が増えて仕方ないんです!」

「さて、無駄話もこれくらいにして。片付けるぞ。」

「イエッサー。………ほんとに何者なんでしょうね。」


一方その時のトラックは…

「運転荒いですよ[規制済み]。この国の警察は高速道路でもしっかり仕事してますから捕まって時間のロスタイムを作りたくないのならもう少し落ち着いて運転してください。」

「うるさい!私は一刻も早く岩国に着いて落ち着きたいんだよ!」

「また[規制済み]に怒られますよ?」

「うっ……。まぁ……それはそれで…仕方ない……。」

「あと40分ほど、頑張ってください。」


「岩国から先の手配はどうなってるの?」

「[規制済み]30号と交渉した結果、そこからは輸送機です。ネバダまでひとっ飛びですよ。」

「お!ってことは久々に帰れるんだな?[規制済み]に!」

「そういうことになりますね。とは言え[規制済み]と一緒なので多少はめんどくさいことになるでしょうけど。」

「とっとと向こうの[規制済み]にでも引き渡したいな。正直結構面倒だ。インプットプログラム受けてないやつと話すとか何十年ぶり?みたいな感じだからな私。」

「ネバダの方にインプットプログラム対応型の[規制済み]ありませんでしたっけ?」

「あ、そう言えばあったな。ネバダに着いたらそれの使用許可も取らないといけないか……。」

「私の方では権限的にどうにもならないのでそこはお願いします。」

「[規制済み]に丸投げとか正気かお前?」

「インプットプログラムさえ受けさせれば[規制済み]に帰れるのにあなたがそれを忘れることはないと信用してますよ。」

「それはそうだな。お……見えてきたぞ!」

「岩国ですね。この車だと怪しまれますから…徒歩で行きましょうか。手前までつけて人影のないところでバラしましょう。」

「りょーかい。」



20分後……

「[規制済み]歩けないの忘れてましたね。」

「そうだな。だからといって上司に背負わせて自分は何も持たないってのはどうなんだ?」

「あ………。あと数分で着きますし頑張ってください。」

「いや、そこは代わりますって言えよ。」

「頑張ってくださいね。」

「おいこら待て。」

「嫌です。」

「お前私の部下だよな?」

「あ、着きましたね」

「いや、人の話聞けよお前。」

「あ、すみません。空けてもらえませんか。[規制済み]の方から来ました、と伝えていただけるとありがたいです。」

「いや、人の話聞けよ。」

「あ、許可が降りた?ありがとうございます。行きますよ。」

「いや、なんでお前が仕切ってるんだよ。お前よりランク上だぞ私。」

「もう給油も済ませてあって万全。良いですね。滑走路の使用状況はいかがですか?なんと!すでに一つ空けてあるとは。それはありがたい。すぐにでも発進できそうですね。」

「それはラッキー。でも人の話を聞かない部下を持ったのはアンラッキー。」

「うるさいですよ。[規制済み]。」

「やかましいわ!ここで本名で呼ぶな!」

「お、あれだあれ。急ぎましょう。予定より10分ほど遅れてます。[規制済み]に叱られますよ?」

「それは是非とも遠慮したいところだ。操縦は任せていいよな?」

「実は輸送機の操縦経験はなくてですね……。」

「は?私だってないぞ。」

「先輩の[規制済み]にすでにインプット用の[規制済み]送ってますんでそれでお願いします。」

「つまり……私に操縦させる気だったなお前?端からそのつもりだったんだろこの野郎……。」

「何のことですかね?」

「お前……着いたらそれなりの仕返しは覚悟しておけよ。」

「おぉ怖い怖い。」

「急ぐぞ。早く乗れ。」

「[規制済み]の管理はお任せください。」

「よろしく。」

喧しく騒ぐ二人を横目に作業員たちは着実に発進準備を進めていく。

「発進準備完了です。」

「ありがとうございます。」

「ありがとう。」

「搭乗員はお二人だけですか?」

「そうなるね。」

「この輸送機は現在より48時間の間記録の上では存在しないこととなります。あなた方がたとえ事故を起こしたとしても我々は関与いたしません。よい旅を。」

「ありがとう。」

「ありがとう。」


輸送機が静かに岩国の街を飛び立った。




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