表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
事実も小説も奇なり  作者: Guru
偽りの世界で
10/38

第10話 “尾行”

 予定にはないはずだった、謎のイベントがようやく終わったが……今日のメインディッシュはここからなんだ。

 本来の目的は、野球部の中にいるタバコを吸う人物を見つけること。そのために今日、わざわざ休みの日に野球場まで来ているわけである。


 高崎、黒瀬ら二年生達は、ようやく家に帰る準備を始めていた。


「やっと帰るみたいだ」


「俺は見てて楽しかったけどな」


 無限ループ地獄を知らないから、そんなこと言えるんだ上原は! こっちは大変だったんだからな。


「私も楽しかったですよ! 作田先生もカッコよかったですし!」


「えっ、本当ですか? いやぁ~……照れるな」


 相澤先生に、いいとこ見せられたんだ。結果的には良かったとするか?


「おい、二手に別れるみたいだぞ? どうする作田」


 全部で六人残っていた生徒達は、帰る方角が同じと思われる、三人と三人の二グループに別れて帰るようだった。

 犯人の黒瀬がいるグループと、高崎がいるグループの二手に別れている。


「俺達も二手に別れよう」


 生徒達は野球場まで自転車で来ており、俺らはそのことを見越して車を使わず、あえて生徒達と同じ自転車で来ていた。

 尾行するならば、もちろん車のが速度は出るが、小回りが効かない。車の通れない細道に入られたら見失ってしまう。


「わざわざチャリで来たのは正解だったな!」


「あぁ、作戦通りだ。よし、俺は黒瀬達を追う。上原は高崎のグループを頼む」


「オーケー」


 上原悪いな。俺は誰が犯人か知ってるからな。手柄は独り占めだ!


「あの……」


「はい?」


「私はどうしたらいいでしょうか。何か手伝うことはありませんか?」


 あぁ、相澤先生。こんな役目、俺達に任せてもらえれば十分です。


──と、堂々と俺が言える訳がない。少しはカッコつけれる度胸が欲しい。


「相澤先生は休んでてもらって大丈夫ですよ! 俺達でなんとかするんで! せっかく男が二人で来てるんですから。なぁ、作田」


「えぇ、その通りです」


「でも……私がお二人を誘ったのに、これでは……」


「いいんですよ。そうですねぇ~……なら、終わったら三人で飲みにでも行きましょう。相澤先生はそのお店を予約しといてください」


 ナイス! 上原! 随分と機転が効くな。


「はい……分かりました! なら、せめて今日はご馳走させてください!」


「楽しみにしてます。行くぞ! 早く追わなきゃ見失っちまう」


「あぁ」


 これじゃどっちが主人公だよ。上原をサポートするサブ役か俺は。

 でも、俺の言いたいことは全部言ってくれる……サンキュー、上原!



・・・



 黒瀬達に気づかれぬよう、一定の距離を保ちながら俺は自転車を漕いでいた。

 三人は何やら楽しそうに話しながら帰っているが、話の内容までは聞こえては来ない。


 少し進むと、三人は住宅街へと入り、そのうちの一人が別れた。恐らく自宅が近いのだろう。

 また更に進むと、もう一人別れ、ついには黒瀬だけとなる。

 もしタバコを吸うとなれば、友達の見ていない一人になったときのはずだ。


 たが、ここからは警戒しなければならない。

 先程までは友達と談笑しながらの帰宅だったため、後ろを追う俺の存在に気づかなかったようだが、一人になった今、そう簡単にはいかないだろう。バレたら全てが水の泡だ。


「──ん? 止まった?」


 俺が慎重に尾行を続けていると、黒瀬の自転車が、とある場所で止まった。

 それは一人になってから、割りとすぐの出来事である。


「コンビニか」


 どうやら黒瀬はコンビニの用事があるようだ。

 駐車場に自転車を停め、店内へと入っていく。


 最近のコンビニは未成年にタバコを売ることはないはずだが……

 コンビニでは別の買い物をするだけかもしれない。タバコはすでに鞄の中に入っている可能性もある。

 とりあえず、黒瀬の動きには注意しておいた方がいいだろう。


 俺もすかさず自転車を停め、一旦コンビニの入り口と反対側へと回った。

 すると、そこには従業員用と思われる、喫煙所が設置してあったのだ。


 なるほど……ここか! もしかしたら黒瀬は、いつもこっそりここを利用しているのかもしれない。

 よし、あいつが戻ってくるまで、ここで張ろ。


 俺はコンビニの外壁に隠れ、喫煙所に黒瀬が現れるのを待った。

 隠れるといっても、黒瀬がこちらに目をやれば、簡単に見つかってしまうだろうが、まさか誰かが覗いてるとは思うまい……

 黒瀬がタバコを手にした瞬間──即、確保だ!



 しばらく待機していると、コンビニから出た黒瀬が喫煙所へとやって来た。

 そのまま入り口に停めてある自転車に乗らず、こちらの裏側に来たということは……可能性としてはかなり高まったと言える。


 黒瀬の手には、先程同様に何も見当たらない。もう“ブツ”は鞄の中なのだろうか。

 設置された灰皿の前まで来た黒瀬は、鞄の中に手を伸ばし、何かを取り出した。

 しかし、黒瀬は俺に背を向けた状態で立っており、こちらからでは中身を確認することができない。


 くっ……何を出したんだ……


 コンビニで買ったと思われる何かを手にする黒瀬は、間髪入れず、もう一度鞄の中へと手を入れる。俺は目を凝らした。

 すると、一瞬ではあるが、鞄の中から片手サイズの“長方形の箱状の物”が出てくるのが見えた。


──長方形の箱!! タバコの箱だ!!

 今だ! 今しかない!!


 絶好の場面と思い、俺は隠れていた壁の裏から飛び出す。


「黒瀬!! やめるんだ!! 手を止めろ!! 現行犯逮捕だーー!!」


「うわーーっ!! えっ、作田先生!?」


 俺が飛び出すや否や、黒瀬は凄まじい瞬発力を見せ、再び箱を鞄の中へと戻した。


「先生が何でこんなところに……」


 黒瀬は俺の登場に驚いている。

 まぁ驚いている理由は……それだけじゃないだろうな。


「悪いが後ろをつけさせてもらっていた」


「尾行ですか!? 趣味悪いですよ! それに、現行犯逮捕ってさっき言ってましたよね? どういう意味ですか?」


「それは……今、鞄の中にしまったものを出せば分かることだ。さぁ、黒瀬。今すぐ出すんだ!」


 後ろめたいのか、黒瀬は俺から目を反らした。


「……嫌です。出したくありません」


 ここに来て、まだ誤魔化すつもりか?


「往生際が悪いぞ。観念するんだ、黒瀬。さぁ、出しなさい」


「わ、分かりましたよ……」


 黒瀬は渋々、鞄の中にしまったものを出し、俺に“例の箱”を手渡した。


「えっ……何これ……」


 しかし、出てきたものは──タバコの箱ではなかった(・・・・)


「俺の趣味の“カードゲーム”ですよ」


「カード……? タバコじゃ……ないのか?」


「タバコ? 何言ってるんですか。俺、未成年ですよ? 吸わないですよ」


 バカな……黒瀬が犯人のはずじゃ……一体どうなってるんだ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ