流れ星、ほうき星
大海のど真ん中に、俺、一人。
すったもんだのあげくに、どろまみれ。
決心の末の、結果ではあるけどさ。
テンション下がるわ、マジで。
「おーい!誰かー!」
たまんねーなー、俺ちょー不幸じゃね?
すげえな、何このカオス。
けっ、うごけねーでやんの!
てゆーか、マジついてねー。
「おーい!誰か、いねーの?!」
たすけてくれよ…地獄なんだけど。
たすけてくれたら、何でもするからさ…ホント。
・・・たすかるわけない、か。
大海の中に、俺一人ってね。
すべての人間は、死んだ後だしな。
穢れた大地に、俺一人ってね。
天に召された、人の山がよー見える。
……たすけてやったのは、俺さ。
……たすけてもらえないのは、俺さ。
たすかるわけない、わかっていたさ。
すべてを飲み込む、厄災が来やがるってね。
気高き人を、人として全うさせたかったのに。
天から地へと、貫いた。
多大なる恩恵を与えてくれた人に、感謝の念を。
素晴らしい教えをくれた人に、せめてもの救いを。
健気に生きる人に、地獄を見せぬよう。
天に帰すのは、己の使命と信じ。
助けたかった。
助けられなかった。
助けたいと願った。
助けられないと知っていた。
助けるために何ができるか考えた。
助けることができないならば。
ただ、速やかに、終わらせたかった。
ただ、それだけだった。
誰も、苦しませたくなかった。
誰にも、希望を持たせたくなかった。
誰も、助からないと知っていた。
誰も、いなくなったこの星で。
ただ一人、命を持たぬ、俺だけが。
たった一人で、星の最後を見届ける。
たった一人で、見届けて。
たったいま。
彗星がひとつ生まれ。
経験を求めて旅立った。
天の消えた空は塵に紛れ、星は跡形もなく舞い。
たった一人で、また星を巡る。
たった一人で、命を探し。
たった一人で、命を見つけ。
たった一人で、命を見守り。
たった一人で、命を見届け。
たった一人で、永遠に。
……たった、一人で。
……さようなら。
ようやく、宇宙に、飛び出した。
うなりをあげた、ほうき星。
なんて綺麗な流れ星と、見上げた誰かを思い出す。
来世があるならば、人になりたい。
さようなら。
ようやく、前に進めそうだ。
うるわしき青い星の記憶を、胸に。
なんども思い出すであろう、星の記憶を胸に。
楽園の記憶を抱き、一人、宇宙をゆく。
……ありがとう。




