森の中で
「……さっきは、助けてくれてありがとうございます。ロイド、さん?私はカルミアって言います。冒険者をしています」
驚いたけど、危ないところを助けてもらったのだ。私はお礼を伝えて頭を下げた。
「ロイドでいいよ。同じ冒険者なんだから助け合うのは当然でしょ?と言っても俺はまだ冒険者志望だけどね、ハハハ」
目の前のゴーレムはあどけなく笑う。
いや、表情は分からないけど、目の光が点滅している。これがゴーレムでいうところの笑顔なのだろうか。話をしていると人間と変わらない。
「……その、失礼かもしれないけど……ロイドは、ゴーレムなの?喋るゴーレムなんて聞いたことがない……」
「ああ、ただのゴーレムだよ。俺も俺以外に喋る奴に会ったことないんだけどね」
ですよね、私も何回かゴーレムに遭遇したことはあるけど決められた場所を守る番人という感じだった。ゴーレムは魔獣とは違い神が所有物である宝を守るために作ったモンスターとされている。まだ謎が多くある生命体として専門で研究している学者がいるくらいだ。こうやって喋るゴーレムがいても不思議じゃないのかもしれない。
あと、まだ気になることもある。
「……さっき冒険者志望って言ってたけど?」
「そうなんだよ!ギルド会館に行ったんだけど、まだ登録ができてなくてさ、何でも人間以外は対象外らしくて、王都にあるギルド会館本部に直接お願いに行こうと思ってたんだよ」
まあ、ゴーレムと言ってもモンスター扱いだから当然そうなるでしょうね。
「冒険者がいっぱいいるのに、よくギルド会館に顔出せたね。その……町の人は驚かなかった?」
「大丈夫!ギルド会館には申請手続きで何回も通ったから顔を覚えてくれたよ。町の冒険者に襲われたりもしたけど、今じゃ会うと向こうから挨拶してくれるようになったし」
なるほど、確かに、話してるとロイドに悪意がないのが分かる。冒険者の中には荒っぱい性格の人も多いから心配だったんだけど杞憂だったかもしれない。
「どうして、そんなに冒険者になりたいの?」
「受けたいクエストがあるんだ。あとは君達の敵じゃないって理解してもらうためかな。この姿だと誤解されやすいからさ」
確かにギルド会館が冒険者に発行するプレートは身分証明書のようなものだ。プレートを見せれば要らぬ誤解も受けないだろう。
「カルミアこそ、他の仲間は?ヘルハウンドだってパーティーでいれば追い返せたと思うけど」
「私はソロで冒険してるんだ。その……あまり、人と一緒にいるのは好きじゃないから……クエストを受けるだけなら、どこかの冒険者パーティーに参加させてもらうのは?傭兵扱いなら冒険者にならなくてもいいと思うけど」
ロイドの目が黄色く光る。
「そ、そんな手があったのか……!」
なるほど、驚くと黄色く光るのか。面白いなあ。
「じゃあ、一度町に戻ってみよう。ギルド会館なら傭兵募集してるパーティーも探せるだろうし。私も一緒に探すから」
ロイドの目が点滅する。
「ありがとう、カルミア!すごく助かるよ」
「どういたしまして。それに、またヘルハウンドに出会わないともかぎらないしね」
「ハハハ。大丈夫、その時はまた俺が追い払うよ!」
ロイドは腕を振り回す動作をする。ヘルハウンドどころかミノタウロスでも大丈夫そうだ。
私はロイドと森の出口へと向かうことにした。
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