プロローグ
「理由を聞かせてください!この町は冒険者が不足していると聞いていたのに、何故登録できないんですか!書類に不備はなかったはずです!」
冒険者が集まるギルド会館の受付で、俺は声を荒げて机を叩いた。
掲示板に張り出されたクエストを見上げていた周りの視線がこちらに集まってくる。
いや、まあ、ギルド会館に入った時点で既に何人かに視線は向けられてはいたのだが、
「そうは言われましても、我々も規則に則って審査しておりますので……」
受付の女性が困り果てた顔でこちらを見る。
分かっています。
お姉さんは何も悪くない。
俺だって本当はこんなクレーマーみたいなことを言いたくないんです。
……でも、これで何度目だろうか。
前の町でも、その前の町でも、なんならもうずっと俺は冒険者登録ができず、たらい回しにされている。
やり場のない怒りと虚しさが募り、今回も「ご期待に添えられず……」と結果を聞いて、感情を抑えられなかったのだ。
冒険者になるにはギルド会館がある町で登録を行う必要がある。
仕事の内容は様々だが、主に魔獣の討伐や未知の地域の探索など危険が伴うものが多い。
その代わり、報酬が高かったり、立ち入り禁止の区域に入れたりと冒険者ならではの魅力があり、腕に自信のある者なら一度は憧れる職業なのだ。
また地域にとっても魔獣から町を守ってくれたり、お店にお金を落とすことで町が潤うという利点もある。
王都などの大きな町にはクエストも多く冒険者が集まる反面、都心から離れた中小規模の町では常に冒険者募集がかけられているのだ。
だからこうして、募集がある町に行っては申請をしてはいるのだが、突っぱねられているというわけだ。
さすがに心が折れそうになる。
「前に魔獣だって倒しているし、この町に住居も借りています!条件は果たしているはずですよ!」
「たしかに、提出頂いた書類に不備はありませんし、偽造もありませんでした。戦闘の実力も冒険者として問題ないと判断致しましたが……」
受付の女性は恐る恐る申請書を取り出すと、登録対象者の欄を指差した。
いくつかの条件の中、指差したそこにはこう書かれていた。
※15歳以上の人間であること
「……その、あなた、ゴーレムですよね?」
気まずさから、横を見ると窓ガラスに映った自分と目があった。
鋼鉄の身体をした大柄の人形がそこにいた。
はい。ゴーレムですね。
これが、俺が冒険者になれない理由なのだ。
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