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二日目、茶会


「お茶が美味しゅう御座います」

 冷たい飲み物が喉を流れるだけで心地良いということ、これは本当に大発見で御座います。

 冷たい水中に数刻潜る修行はありましたが、あの水を飲もうと思ったことはありませんでした。

 そも、自由に思考することもなかった神威シンイとしての此方こちには、そのような発想ができたはずもありません。


 茶を頂きながら、てんご様からあれこれやと質問も頂くのですが、此方こちにはてんご様の望む応答ができなかったようです。

 歯痒きことがこの上なく、なんと御詫びをすれば良いかと考えていたのですが、てんご様はそれを責めるつもりもないようです。

 それどころか「ねぇ、君はこれからどうしたいの?」と優しく聞いて下さいました。

 少しだけ考えて、此方こちは正直に「名前が欲しいです。後は、自分が何者なのか知りたいです」と答えました。

 特に、名前を授かれば何かが変わる予感がありました。

「名前、二人で考えろって書いてたね。でも、子どもだけで決めて良いのかな?」

 人の世の決まり事は詳しく存じませぬが、それでも先ほどの言葉から一転している物言いには此方こちも不満を覚えます。


「てんご様と二人で考えようと仰られた、先ほどの言葉は偽りだったのですか?」

 言い終わってから、これほど御厚意を頂いているのに此方こちだけが我が儘を言ってしまったことに気付きました。

 てんご様は、此方こちの分からぬところで何らかの気遣いをされているに違いありません。


「あれは手紙を読んだだけで…」


 ああ、そうでした。

 そこに書かれていた言葉を読んだに過ぎなかったのです。

 それでも…

 なるほど、期待を打ち砕かれるとは辛いものなのですね。


 だけど、てんご様は少し悩まれた後に「名前を考えるくらいなら一緒にするけどさ。最後は自分で決めてよね」と言って下さいました。

 また、此方こちを気遣って頂いたのでしょうか。

 申し訳ない思いもありましたが、やはり嬉しいと思ってしまうのは此方こちの未熟な精神の現れで御座いましょう。

 しかし、てんご様に手伝って頂けるということが非常に頼もしく、やはり非常に嬉しいのでした。


「もちろん、それで十分です。ありがとうございます」


 此方こちには御礼を伝える程度が精一杯で御座います。

 しかし、てんご様はそんな御礼の言葉だけで微笑んで下さいました。

 何とも慈愛に満ちています。

 此方こちも、人として振る舞うならば慈愛の心をこそ見習っていくべきで御座いましょう。


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