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二日目、甘え


 此方(こち)がてんご様と手を繋いだままで歩みを進めていると、やがて六つ目の人魂が現れました。

 山吹様がここまで歩くと言われていた、その場所に着いてしまったようですね。


 何故でしょう。

 此方(こち)は目的地に着いたことを残念に感じてしまっています。

 いえ、理由は明白なのです。

 此方(こち)はもう少しだけ、てんご様と手を繋いで歩いていたいと思っているのです。

 いいえ、もう少しだけでなく、このままずっと…


 いけません。

 此方(こち)は自身に宿ろうとする邪念を振り払います。

 これでは、此処まで連れてきて下さった山吹様に申し訳がありません。


 このまま歩みを続けたい思いを堪え、此方(こち)は立ち止まって人魂の動きを見届けます。

 六つの人魂は回転しながら地へと落ちていき、落ちた人魂が地面に魔方陣を描きました。


 するとまた辺りの景色が変わりました。

 今度は屋内のようです。

 てんご様の家や、山吹食堂と違って、ここは随分と厳かな雰囲気を感じます。


「おや、仲が良いんだね。実に結構」


 背後から誰かに声をかけられました。

 とても優しい声色で、それなのに絶対的な力を感じる不思議な響き。

 まるで、ふわりとした重石(おもいし)が言葉とともに此方(こち)の周りに積み重なっていくように感じます。

 身動きを取ることさえ拒まれているような…


「慌てなくて良いよ。見苦しいからね」


 なんということでしょう。

 これは本当に身体がぴくりとも動かせないようです。

 指の一本も動かせません。

 山吹様も動けていないようで、てんご様もおそらくは同じ状態なのでしょう。


(みどり)さんっ!」


 突然、怒声とともに山吹様が動き出しました。


「どうして『停止(ていし)』させたんですか!? すぐにこの子達の魔法も解除してください!」


 なるほど、どうやら魔法というもので動きを止められたということなのでしょう。

 しかし、身体が動かないという程度であれば、此方(こち)にとっては脅威ではなく、てんご様と手を繋いでいるという安心感の方が勝っております。

 それに、此方(こち)等の背後に居る者からは敵意も感じません。


「あんたのせいだよ、ヤマブキ。鏡占いの人数を、私は聞いてない。あんたの連絡不足が招いた結果だよ。これはね」


 あの時の山吹様は、確かにその旨の連絡をしておられませんでした。

 自身の知る情報と現実に齟齬があれば、その詳細を確めるまでは細心の注意を払った行動を致すべきなので御座いましょう。

 為らば、此方(こち)にも少なからずの落ち度はあったということで御座います。

 次の機会があれば、確りとした対応が出来るように努めると致しましょう。


 「だいたい、心臓が止まったくらいならこの世界じゃすぐには死なないんだ。少しぐらい良いじゃないか。これも経験だと思いたまえ」


 これも経験…

 その言葉で納得がいきました。

 これもおそらく、ちゅうとりあるというものの一端なのでしょう。

 どうやら、丁寧な匙加減の如き繊細な手加減もされているようです。

 これならば、このちゅうとりあるは耐え忍んでいるだけで万全で御座いましょう。


 その時、不意にてんご様が手を離されました、

 そしてばたりと床に伏せられ…


「テンゴクっ!」


 山吹様がてんご様に駆け寄られました。


 これは…


 なにが…


 ああっ


 てんご様が倒れてしまった、ということでしょうか


 そう認識した途端に、此方(こち)は自身の自我が抑えきれぬほどに煮えたぎるのを感じました。


「てんご様に何をするか!」


 そうして、此方(こち)は激昂するとともに振り向いて、背後に立っていた不埒者に張り手をしてしまったので御座います。



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