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二日目、繋いだ手


 りふとで下の層に到着すると、その近くにはまた扉が一枚ありました。

 その中に入るとまたもや景色が変わり、闇が辺りを覆っています。

 異世界とはなんとも目まぐるしく変化するので御座いましょうか。

 闇の中にいくつもの灯籠の燈りが揺らめいていて、幻想的という言葉が頭に浮かんできました。

「異世界なのに純和風なんですね」

 純和風というものは幻想的で落ち着きのあるもののようで御座います。

「ここの管理者は日本人なんだよ」

 人には種別があるのでしょうか?

 知らないことが次々と増えていきます。

「二人とも、ここには何度か来るだろうし、道を覚えておくんだよ」

 山吹様が近くに並んだ行灯の、その真ん中に置かれたものを掴んで傾けました。

 すると、闇の中にまた別の燈りが灯ります。

 そこには、立派な建物が浮かぶように照らされていました。

「まず、あの建物は罠だから行っちゃ駄目だよ」

 なんとも用心深いことです。

 てんご様も驚いているようで御座います。

 このような用心深い方にこそ『いんたあほん』がお勧めのように思いますが、異世界には『いんたあほん』が普及していないのやもしれませんね。

「あいつは性格が悪いからね。見えてるものは全てが罠だと思っといた方が良いくらいだよ」

 なんと!

 もしも『いんたあほん』があっても、それが罠だという可能性を見落としておりました。

 なるほど、容易に見知らぬ『いんたあほん』を押すのも不用心だと言えますね。

 とにかく押せば良いのではと考えていた此方(こち)が浅はかだったようで御座います。


 闇の中に向けて山吹様が歩き出すと、その歩調に合わせて灯籠に燈が灯り、そこに道が浮かび上がっていきます。

 山吹様を追いかける此方(こち)達。

 ふと、てんご様が此方(こち)の手を握っていることに気付きました。

 此方(こち)もてんご様の手を握っています。

 手を繋ぐとはこれのことで御座いましょう。

 迷ったり置いておかれる心配がなくなる故、これも気遣いの一環なのやもしれませぬ。

 それにしても、手を繋ぐということにはそれ以上の何やら妙な安心感が御座います。

「十二番目と十三番目の灯籠の間を左に曲がって入るんだ。その先が本当の入り口だよ」

 複雑な順路を知るものしか入れぬ場所であれば『いんたあほん』は確かに不要で御座いますね。

 十二番目と十三番目の灯籠の間を左に曲がると、今度は青く輝く魂が現れました。

「気にせず歩くよ。今度は六つ目の人魂が出るまでね」

 人魂(ひとだま)ということは人の魂なので御座いましょうか。

 人にも魂があるとは知りませんでした。

「えっと、これって人の魂なんですか…」

 てんご様も疑問を感じられているようです。

「ん。あぁ、ただの言葉の綾ってやつさ。これは本物じゃないよ」

 人魂という迷信めいた言葉を使ってしまっただけのようで御座います。

 (しか)し、山吹様がひやりと笑って言いました。

「この世界には、本物もいるけどね」

 異世界の人には魂があるようですね。


 てんご様が驚いているようで御座います。

 人の世の常識をよく知る程に驚きが強くなるので御座いましょう。


 はて。


 かと思えば繋いだ手を見て動揺しているようにも見えまする。

 問答無用で手を繋いでしまったことを今さらに気にしていらっしゃるのでしょうか。

 此方(こち)にとって、てんご様の気遣いが嫌であろうはずが御座いません。

 それとも、てんご様も無意識に手を繋いで下さったのかもしれませんね。

「手を繋いでいると安心するものですね」

 此方(こち)は嫌ではないと伝えます。

「そ、そうだね!」

 然れど、てんご様の動揺は無くなりませんでした。

 此方(こち)は己の力不足を実感致します。


 それにしても、てんご様の手が少しとは言えぬ程に熱くなり、頬が紅潮しているのはどういう訳なので御座いましょうか。



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