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二日目、魚のもんすたあ


「さて、あんまり待たせちゃ悪いし、そろそろ行くよ」

 山吹様が手を挙げます。

 見渡す限りに同じ景色が広がっていて、どこへ行くのか分かりません。

「どこにですか?」

 てんご様が質問されます。

 此方(こち)と同じで行き先が分からないようで安心します。

「ふふ。ここはね、いわゆるちゅーとりあるってやつなのさ。この世界に初めて来た人間に、ここがどんな場所なのかを分かってもらうためのね。言ってみれば、百聞は一見に如かず、一見は体験に如かず、ってやつさ」

 ちゅうとりあるとは何でしょうか。

 この世界がどんな場所なのか体験するに辺り、今までの世界がどのような場所なのか分かっていないことは問題ないのでしょうか。

 少しだけ不安になってしまいます。


「まぁ、最後のはきざしの旦那の受け売りだけどね」

「それって、父さんは説明が面倒なだけで言ってたんじゃないですか?」

「あはは。まぁ、旦那はそういうつもりで言ったのかもね」

 和気藹々(わきあいあい)という様子で話されている二人の横で、一人で不安になる此方(こち)

 せめて御二人の足を引っ張らぬようにと決意をするので御座います。


「見付けたよ!」

 突然に山吹様が掲げていた手を振り下ろしました。

 すると近くの砂丘が突如として盛り上がり、砂の中から一匹の巨大な風船が現れました。

 まるで風船のような生物だと言うべきで御座いましょうか。

 ぎょろっとした大きな目がこちらを覗いています。

 真ん丸であれど鱗のようなものが表皮にあり、よく見ると魚のようなその風船は、よくよく見ると怒っているようでもあります。

「それじゃあ、ちゅうとりあるその一だ。この世界には、もんすたあがいる!」

 山吹様が何やら説明をして下さっているようですが、此方こちにはその意味が分かりませんでした。

 あの風船のような魚がもんすたあで、ちゅうとりあるとはそれらを知っていくことなのでしょうか。

 考えていても矢張り確信は持てませぬ。

「この世界は『まな』ってやつで出来ていて『まな』の流れの淀みから魔物が生まれるんだとさ」

 またです。

 また、理解の及ばぬ言葉が現れました。

 世界は未知で溢れています。

「って、逃げた方が良くないですか!?」

 何やらお怒りのもんすたあ様が迫ってきています。

 確かに、てんご様の危惧するとおりでしょう。

 逃げなければ身体が損傷を受けかねない勢いで御座います。

 然れど、経験者である山吹様が落ち着いているのであれば存外に平気なのやもしれませぬ。

「大丈夫さ。よく見ときなよ」

 予想のとおりに山吹様が対応して下さるようで御座います。

「ちゅうとりあるその二、この世界では私たちの体は『まな』で強化される」

 言い終わったと同時に山吹様の姿が煙のように消え去り、風船のもんすたあが弾かれたように吹き飛ばされていきました。

 高速移動による体当たりでしょうか。

 人の域を超越した動きで御座いました。

「強化されるとは言っても『れべる』があってね。『まな』を上手く身体に巡らせるには相当の経験を積まなきゃならないよ。そして、身体に巡らせた『まな』を使いこなすのは更に難しいんだ」

 なるほど。

 相応の経験を積むことで、先ほどのような超人的な動きが可能になるので御座いますか。

 『れべる』というのは習熟度のような意味合いでしょうか。

 経験だけで良いのなら此方(こち)にも可能性が御座いますね。


「さて、その三は中に入ってからだね」

 山吹様が仰有いますが、はて。

 どこに入るので御座いましょうか。

「おや、テンゴクは気付いたみたいだね。この世界って地上は住みにくくってさ、人が居るのは地下なんだ。それで、入り口の一つがここなのさ」

 てんご様に遅れをとってしまったようです。

 これでは矢張り、此方(こち)は御二人の足手まといにしかなっていないように思えます。

 何か此方(こち)にも貢献できる事柄を見つけたいのですが…


「『りふと』」

 山吹様が呪文を唱えると、魚のもんすたあが居た場所が光で覆われました。

 あれが入り口なのでしょうか。

 ひょいっと山吹様が光の床に飛び乗ったので、此方(こち)達も後に続きます。

 なるほど、床が光っているせいもあるのでしょうが、てんご様の目が輝いて見えます。

 これが冒険のわくわくが堪んないという様子なので御座いましょう。

 なるほど、わくわくしているてんご様を見るのは此方(こち)も楽しく御座います。


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