一日目、人格付与
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「よし、言葉は分かるな?」
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「俺は兆だ。お前を誘拐させてもらう」
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「誘拐とは『特別な絆が結ばれ、お前を大切に扱い、何者からも守る』という意味だ」
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「ああ、今は意味は分からずとも良い。しかし、今の言葉を覚えておくんだな」
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「そうそう、実際にお前を誘拐するのは俺の息子なのだが… 」
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「しかし、人格も持たぬままでは不便だな。そう、面倒だし、何より独り言のようで虚しい」
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「よし、適当な知識と人格を与えてやろう。後は好きに育てば良い」
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「ふん。しかし、これほど大人しく拐われるなら…」
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「典語で練習する必要もなかったか。まあいい」
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「あれはあれで良い遊びになっただろう」
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「さて、『天地術を使いこなせる最低限の見識と、会話可能な程度の言語能力を与える』」
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「ふむ、流石に時間がかかりそうだな。朝まで寝るか…」
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「ちっ。知識だけでは人格たりえんということか…」
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「流石に人格の書き込みなどしたことがないな。 まあいい、やってみるか」
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「『典語と仲良くやっていける人格を与える』」
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「ふむ、漠然とし過ぎていたか。仕方がない、色々と試すとしよう」
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「ああ、丁度良い奴が居たな。いや、居ないから丁度良いのか。それなりに仲良くやっていたはずだったが… さて、名前はなんだったか…」
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「まあいい、あれの人格にお前の設定を追加しておこう…」
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「『擬人化アカシックレコードとお前自身の経験を足し合わせた人格を与える』」
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「ふむ、視線が動いたな。後は夜明けまでに間に合えば良いが…」
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