思い通りにいくなんて
「…まだ1日経ってないよね?」
海斗が驚いたように問いかけてきた。
「…昨日寝てる間に変わったとしたら…時間によっては24時間経ってるかも知れないけど…。なぁ?」
『いくらなんでもこんなに早く変わることはなかった気がするよね…?』
そう、今までなったことのないタイミングで入れ代わってしまった。俺の記憶が正しければ過去最速だ。突然の出来事に俺ともみじが呆然としていると、桜が遠慮がちに声をかけてきた。
「紅葉くん、とりあえず服を着替えたほうがいいかも。周りの視線集めてるよ。」
「あぁ…そうだな…」
「ゆきなはそのままでもいいと思う!撮影会しよ?」
「マイペースか!着替えさせてくれ頼むから…今日は持ってきてるよな?」
『うん、大丈夫だよ!』
とりあえず着替えてからもう一度この状況ついて考えてみる。さすがのもみじも、楽しんでばかりはいられなくなったようだ。
「昨日何時に寝たか覚えてる?」
こういうときに頼りになるのは、実は頭のいい海斗だ。
「布団に入ったのは多分11時半過ぎかなぁ…けど厳密に寝た時間って言われたら分かんねぇぞ?」
「桜、今何時?」
「んと、11時半!」
「なんとも言えない時間だな…」
別に解決しなくてもいい問題なのかも知れないが、こんなに早かったことはないためやはり気になる。
「ピッタリ24時間だね!まぁ、たまにはこういうこともあるんじゃない?」
雪奈はいつもポジティブなのか、明るくなるようなことを言う。もちろん俺だってこういうこともあるんじゃないかとは思うが、どうにもひっかかる。
「もみじさ、さっき入れ代わる直前って何考えてた?」
『順番に変われたらいいなぁって。紅葉もジェットコースターは好きでしょ?だから変わってあげたいなーって』
やっぱり偶然とは思えない。俺も昨日の夜、同じことを考えてたのだから。俺はそのことを海斗に伝えた。
「じゃあ試してみたら?ここにはほら、服のグッズも売ってるからさ、試着室くらいあるよ!」
「ついでにお土産選ぼうね!もみじとペアルック!」
「もう雪奈は好きにしてくれ。じゃあ試そうか。いいよなもみじ?」
『うん。』
ユニセックスのTシャツを一枚選んで(サイズは俺合わせだ)試着室に入る。そして、寝る前にやったように変わってあげたいと心で何度も祈る。
「どう?」
カーテン越しに桜の声がする。
「変わったよ!!」
なんと、あっさりと変われてしまった。
『もみじ、ちょっと戻ってみてくれ』
「ん、オーケー!」
1分後。
「マジかよ…なんで急に自由に変われるようになったんだ!?」
『そんなの分からないよ…でも、こっちのほうがよくない?』
「そりゃそうだが。」
結局的にこれはラッキーなんだろう。これでお互いの意思を尊重できるし、いきなり変わっても問題が無くなる。けど、あまりに急すぎて、事態についていけない。
「ねね!これならさ!もみじと紅葉が入れ代わりながら二回ずつ乗り物乗ればみんなで楽しめるよ!!」
だが、俺の不安も雪奈の一言で消し飛んでしまった。確かにこうなったら楽しんだほうがいいかもしれない。
「そうだね、原因を考えるのは後でいいよ!」
「まずは楽しまなきゃね!」
海斗と桜の言葉にも押され、俺ともみじは今日を楽しむことにした。しかし後に、この現象が始まりにすぎなかったことを知る。




