大ピンチ!
『なんでこんなタイミングで入れ代わるの!?せっかく可愛いブラが!』
「俺が聞きてぇよ!見ろこの状況!」
『レディースしか売ってない服屋の試着室でブラとパンティーを着ている高校生男子だね』
「変態じゃねぇかっ!!」
『やーい、変態!』
「おいこらてめぇ」
二人でコソコソ言い合いをしていると、なかなか出てこないもみじを心配したのか、さっきまで隣の試着室にいたはずの雪奈が声をかけてきた。
「もみじまだー?」
そういって遠慮なくカーテンを開ける雪奈が、俺には鬼に見えた。
「…頼む、何も言わずに忘れてくれ。すぐ着替えるから」
「え、ちょ、変態?」
「俺に罪はねぇよ!」
『バカ紅葉!大声出して店員さん来たらどうするの!!』
「そう思うならこんなとこ来るな!」
『だってブラが』
「あーもう!分かったから!とりあえず着替え……。」
すると目の前にいるクラスメイトは、スマホを構えていた。
「んー、もうちょっと上目遣いしてよ♪」
「…何をしてるのかな雪奈サン。」
「撮影!」
『紅葉!私の服着ていいよ!』
「なんでお前もノリノリなんだよ!?もう閉めるぞ!」
俺は言葉と同時にカーテンを閉めた。さっさと着替えてしまおう。
「…おいもみじ。俺の服どこだ」
なんという衝撃。そこに俺の服は一枚も見当たらない。
『あっ、紅葉の服入れた袋忘れてきちゃった』
「ふざけんなぁぁぁ!!」
『てへっ♪』
この世に生を受けて18年。俺はこれほどのピンチに出会ったことがない。しかも-。
「お客様!どうかなさいましたか!?」
―さっきの俺の叫びが聞こえてしまったのだろう。店員が心配してやってきてしまった。さすがに有無を言わせずにカーテンを開けてくることはないが、絶対絶命と言うのはまさにこのことだと思う。
・パターン1、「すみません、なんでもないんです」と言う→声が男だからダメ。
・パターン2、何も答えずにいる→何かを疑われてカーテンを開けられるだろう。
・パターン3、正直に話す→しばらく警察のお世話になるのは間違いない。
「…助かる気がしねぇ」
『雪奈に賭けるしかないね』
そのとーりなんだが、雪奈はどこか天然のため不安だ。っていうか-。
「おいもみじ…あいつどこ行った?」
『そういえばカーテン閉めてから静かだね』
-雪奈がいない。まさか賭けすらできなくなるとは思わなかった。
「お客様!大丈夫ですか?」
俺は何も考えることができず、つい無言になってしまう。
「すみませんお客様、カーテン開けますね…?」
やはり不安になったのだろう。店員さんらやはり様子を見るためにカーテンを開けようとする。その心配する心はとてもありがたいのだけれど、俺にはその店員さんが悪魔に見えた。
仕方ない…俺は変態扱いされることを受け入れることを覚悟するのであった。




